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第一章
第12話 【初めての狩り・4】
しおりを挟む「今日は少し遅かったですね。何かあったのですか?」
「いえ、単純に俺の運が無くてスライムを中々見つけられませんでした」
「偶にあるんですよね。普段は沢山居るのに、倒したいと思ってた時に限って目当ての魔物が居ない事、よく他の冒険者さんも愚痴ってるのを聞きますね」
リンさんはそう言うと、スライムとその他の倒した魔物の討伐部位を受け取って報酬を渡してくれた。
それから俺は、今日もボアを討伐出来たので作業場を借りて、昨日と同じようにボアを解体した。
「昨日もちらっと覗いてみてたけど、クリスの解体術かなりレベルが高いな……誰かに教わったのか?」
「教材はギルドの本で勉強をして、実際に解体したのは昨日が初めてですよ」
解体作業をしていると、ロンさんが俺の作業を見ながら話しかけて来た。
「前から思ってたが、クリスは物覚えが早いよな~。マスター達との訓練、暇だったから見に行ったけど剣術の動きが凄く成長してて驚いたし」
「能力のおかげと、後は教えてくれたレインさんとアリシアさんのおかげですね。一人じゃ、あそこまで成長出来ませんでしたよ」
実際その通りで、剣を始めて握って練習をした初日と比べて、レインさん達に教えて貰ってやった剣術の方が明らかに成長を感じた。
特にアリシアさんは、剣士として冒険者の中でも上位に位置する強さを持っており、そんな人に教えて貰った俺は本当に運が良い。
「はぁ~、俺も剣とか魔法とか使えたら冒険者出来たんだがな~」
「ロンさんって冒険者に成りたかったんですか?」
「そりゃ、勿論! 平凡な家庭で育った子供からしたら、冒険者は夢ある職業だろ? だけど、儀式で貰えたのは戦闘系のスキルと鑑定能力だけでな……諦めきれず挑戦はしたけど、毎日家族から心配されて諦めて今はギルドの鑑定使いしてるんだ」
冒険者は楽しいだけの職業ではない。
実力が無ければ上には上がれないし、そもそも力が無ければ続ける事さえ出来ない。
無駄に挑戦を続け死ぬ者の多く、自由な職業に見えてかなり残酷な職業でもある。
「まあ、命を落とすよりかはその選択は良かったんじゃないんですか?」
「それはそうだな、なんだかんだ鑑定使いとしての仕事も気に入ってるからな、こうして暇な時間はギルドの中なら自由に動けるから俺に合ってる仕事だったよ」
ロンさんはそう笑って言うと、丁度ロンさんを探していた職員が来て仕事が入ったみたいで部屋から出て行った。
それから俺はロンさんと話をしていた手を進めて、解体作業を終わらせた。
「ふぅ~、やっとこれの実験に移れるな……前から気になってたんだよな、スライム液の可能性」
スライムを倒すとコアと液がその場に残る。
大体はコアを回収して、液は燃やすか放置するか、金欲しさに集めて売る者が居る。
普通のスライム液は無臭で、特に害となる性質は無い。
他のスライムだと変な臭いがしたり、触れると麻痺や毒になったり危険な液もある。
「少量だと手で擦れば泡がちょっと出るな……匂い付けで取っておいた花の液を混ぜてみるか?」
正直、最初からうまくいくなんて思ってはいない。
出来たら良いな~、自分で手に入るなら楽だし、そんな甘い考えで俺はスライム液の実験を行った。
花の液以外にも、薬草採取しながら手に入れた材料を組み合わせ、良い匂いがする液体せっけんを作る事が出来た。
勿論、鑑定をしてちゃんとしたせっけんか確認をしたら、殺菌効果もちゃんとあり目的の物が作れた。
「この世界にもせっけんはあるにはあるけど、高くて簡単には買えない物だからな……アリシアさんの家にはあるけど、本当に毎回使うのに気が引けて少量で何とかやって来たから、これで自分で好きなだけ使える」
勿論、目的に合わせて作っており〝髪、体、手〟の三種類作った。
作る過程で新しく【調合】、【調薬】の二つを習得していた。
「この二つのレベルが上がれば、もっと良いせっけんが作れるかも知れないな……素材は手に入りやすいし、明日からの作業に付け加えても良さそうだな」
そうして俺は解体作業と実験に使った作業場を綺麗にしてから出て行き、明日からも楽しみだなと考えながら帰宅した。
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