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第一章
第30話 【王城・2】
しおりを挟む「アリシアさん、王族の方達ってどんな人達なんですか?」
「そうね。民の事をよく考えくれてる人達だと私は思うわね」
「そうなんですか?」
「税金だって、民の事を考えて必要以上には取ったりしないわ。その逆に、国の敵とみなした相手には容赦はないわね」
聞いた話によると、俺の住むこの国は多くの戦争で勝利をして大国を築いたらしい。
王家は代々兵士達を奮い立たせ、時には自ら戦場に出て勝利を掴んで来たと教えて貰った。
「王族は強い人達なんですね」
「それもあるけど、民の上に立つ者はそれだけの力を必要とするって教えで子供の時から魔物と戦って鍛えてるのよ。私も子供の頃は、その教えでクリス君の歳の頃にはオーガとかとも戦っていたわね」
「凄い教育方針なんですね……」
そんな教育方針だから、アリシアさんのあの強さがあるのか。
その後、王城へと到着すると先に到着していたノアさんと合流し、王城の中へと入って行った。
「ラントリス家も凄い大きかったですけど、流石は王族が住む場所ですね。凄い大きくて、案内が無ければ迷子になりそうです」
「迷子で思い出したわ。そう言えば、ノアは王城で迷子になった事があるわよね」
「む、昔の事でしょ。クリス君にそんな事、教えないでよ!」
迷子と言う単語で昔の事を思い出したアリシアさんは、ノアさんをそう揶揄うとノアさんはアリシアさんに掴み掛ろうとした。
二人のそんなやり取りを見ながら、俺達は大きな扉の前に到着すると執事が扉を開けて俺達は中に入った。
「よく来てくれたな。私はヴェニウス王国の王、アルバート・フォン・ヴェニウスだ」
大広間、王と王妃が座る椅子がありそこには中年の男性と若々しい女性が座っていた。
そして男性の言葉で、この方がこの国の王だと認識した。
「アルバ、形式的な挨拶はそれで済ませたわよね? はじめまして、私は王妃のミレスティア・フォン・ヴェニウスよ。クリス君、貴方のせっけん凄いわよね。今までのせっけんの何倍も洗浄効果があって、更にいい匂いも付けられるんだから」
「……ミレス。ここは王の間なんだから、少しは抑えてくれよ」
その後、先程の場所から狭いがそれでも十分な広さのある部屋へと移って来た。
「アリシアちゃん、それにエレノアちゃん久しぶりね」
「はい。お久しぶりです。王妃様」
「お久しぶりです。ミレスティア王妃様」
「あらあら、暫く会ってないからアリシアちゃんと距離が遠く感じるわ~」
王妃様はアリシアさん達に「久しぶり」と言葉を掛けると、ノアさんは自然に返事をした。
そんなノアさんとは違って、アリシアさんは少し距離のある返事をした。
「仕方のない事だろう。アリシアは貴族社会が嫌で、今は冒険者として生活をしているんだ」
「え~、でも昔は一緒に遊んでたのに距離があると寂しいと感じちゃうでしょ?」
俺はこの光景を見ながら、先程まで抱いていた王家の印象からかなり違うと感じていた。
しかしながら、それはアリシアさん達が王妃様と関係性があるからで、一般人の俺だけだとそうは感じなかった事だろう。
「ミレス。一応、今回はせっけんの件でクリス君を呼んだんだ。クリス君を放置しすぎるのはどうかと思うぞ? そもそも、ミレスが呼びたいと言ったからこの場を作ったんだぞ」
「そうだったわ!」
アリシアさんの頬をツンツンと突いて反応を見ていた王妃様は、王様のその言葉にハッと気づいた様子でソファーに座り直した。
「クリス君、せっけんを作ってくれて感謝してるわ」
「い、いえ俺も好きで作った物ですし、そんな王妃様から感謝を貰う程の事では……」
「そう思うのは作った本人だけだ。あのせっけんのおかげで、国の嫌な仕事が一つ消えたのだからな」
俺の言葉に被せるようにして、王様はそう言って来た。
「せっけんが売られはじめ、少し経つが下水道の嫌な臭いや汚れは無くなり、更に民の汚れに対する意識も変わった。そのおかげか知らないが、病気になる者も減っていると報告が上がっている。あの素晴らしいせっけんを作ったくれた事、国の王として感謝しておるぞ」
王妃様の次に、王様からもそう言われた俺はこれ以上遠慮するような言葉を言えず、「はい……」と言葉を受け取る事しか出来なかった。
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