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第一章
第42話 【ラントリス領に向けて・2】
しおりを挟むそうして野営地で一泊した翌日、朝食を済ませると直ぐに出発する事になった。
「アイザックさん、ちなみになんですけど王都から目的の場所までどれくらい掛かるんですか?」
「大体、三日か四日だな。街の宿で泊りながら行くなら、一週間は掛かるが今回は一直線で向かってるから本来よりも短時間で移動は出来てる」
「国の地理について詳しくないんですけど、それくらい自分の領土に行くのに時間は掛かるんですか?」
「大体の貴族はそれ位は掛かるんじゃないかな? 王都周辺や、特定の場所は国の領地だから最低でも貴族は自分の領土に行くのに一日は掛かるな」
目的地までどの位か聞くと、アイザックさんはそう教えてくれた。
ちなみにアリシアさんの実家であるクリーンヒルト家は、隣の領土らしくその関係もあって家族関で仲がいいらしい。
「クリス君の事も少し聞いても良いかな?」
「俺の事ですか?」
「冒険者として何処を目指してるのかなって、ふと気になってね。正直、クリス君は多方面に才能があるだろ? だから、無理して危険な冒険者を続けなくても生活は出来るのに何で冒険者をしてるのか、気になってね」
「そうですね。冒険者以外の仕事も楽しいんですけど、ワクワク感を味わうなら冒険者かなって」
冒険者をどうしてしてるのか、アイザックさんから聞かれた俺はそう言葉を返した。
「ワクワク感か、確かに冒険者じゃないとそれは味わえないか」
「はい。でも、どうしてそんな事が気になったんですか?」
「……隠しても仕方ないか。実は、王家からクリス君がどうなりたいのか聞いてほしいと頼まれていてる。冒険者はどこで活動しようと自由だが、クリス君の場合は才能が溢れていて国としても手放したくない存在みたいなんだよ」
「そんな風にみられてるんですか!?」
アイザックさんの言葉に俺は驚きそう聞き返すと、アイザックさんは「私はそう思う理由がわかる」と言った。
「クリス君はせっけんの制作もそうだけど、それ以上に国としては〝鑑定使い〟としての能力を重要視してるみたいだな。聞いた話によると、二度も他の鑑定使いが手放した鑑定物を鑑定したそうじゃないか」
「確かにそうですけど、そんなに重要な事なんですか?」
「重要だとも、高位の鑑定使いがいると言う事は鑑定出来ずに放置された〝才能の球〟を鑑定して使えるという事だからな」
アイザックさんが言うには、現時点でも貴族の家等には鑑定されずに保管されている〝才能の球〟があるらしい。
ラントリス家も勿論持っているらしいが、これまでは話に出なかったから頼まずにいたと教えられた。
「それに〝才能の球〟以外にも鑑定は使いどころが沢山あるから、クリス君の様にレベルの高い鑑定が出来る者は国としても欲しい人材ではあるんだよ」
「そうなんですね。まあ、でも当分は王都で活動するつもりですよ。特に不満な事はないですし、お店もまだ開店して直ぐなのでその店を放置して他国に拠点を移す事はないですよ」
「そう言ってくれると、私も王家に報告するのが気が楽になるよ」
その後、特に何事もなく馬車は進み二日目も予定通りの野営地へと到着した。
今夜の夕食は、昨日教えた兵士さんと一緒に作る事になり、俺は兵士さんに始動をしつつ食事を作った。
たった一回しか教えて無いが、これまで料理経験もある兵士さん達は飲み込みも早く。
自分達で用意した料理が格段にレベルが上がり、嬉しそうに料理を食べていた。
「兵士達の調理レベルが上がったおかげで、今後はクリス君が居なくても上手い飯を食べながら旅が出来るよ」
指導を終えて、アイザックさんと一緒に夕食を食べる事になった俺は、アイザックさんからそんな事を言われた。
「役に立てた様で良かったです。まあ、でもそこまで難しい事は教えてないので元から兵士さん達の料理の腕がいいおかげですよ」
「確かに、あいつらは料理が好きな者達だからな。王都に居る間は、調理場で料理人達と一緒に料理の研究をしたりする程だからな……王都に戻った時、兵士達の事を料理人達が羨ましがるだろうな。クリス君に自分達も教えてもらいたいって」
「料理人さん達は俺よりも経験がある人ですから、俺に教わりたいと思いますかね?」
「思ってると思うぞ。前回来た時の料理の腕も褒めていたし、ノアが試しに作った料理を味見していつかクリス君に教わりたいと言っていたからな。それで、料理人達にも教えてやれるか?」
そう俺は聞いて、アイザックさんに「時間が合う時でしたら、良いですよ」と返した。
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