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第一章
第47話 【支援活動・3】
しおりを挟む翌日、俺は昨日と同じ場所へとやって来たが他の大工さん達は既に作業をしてるのにデイルさんの姿が無かった。
俺は昨日仲良くなった大工さんに、デイルさんは何処にいるのか聞くと、朝は弱い人らしくもう少ししたら来ると教えられた。
「大工さんって朝が強い人のイメージでしたけど、デイルさんは違うんですね」
「親方も若い頃は朝は強かったらしいけど、俺達は親方が朝から仕事してる姿はこの数年で数回しか見たことが無いな」
「そうっす! それなのに俺達には、朝から仕事するように言ってくるっすからね!」
親方から信頼されており、現場のリーダーを任されてる女性大工のキリさん。
そして、最年少で俺とほぼ年齢が変わらず語尾に「っす」をよく付けるアキさんは親方について教えてくれた。
ちなみにこの二人は姉弟で、元々は別の街で仕事していたらしいが数年前にデイルさんの所で働いてると聞いた。
「キリさん、大変そうですね」
「もう慣れたよ。最初の頃は、他の所と違い過ぎて慌ててたけど今じゃ現場も任される程に信頼されてるからね」
その後、俺はキリさん達と一緒に作業をしてると暫くしてデイルさんがやって来た。
遅れてやって来たデイルさんだが、作業に取り掛かると物凄い速さで木の加工を行っている。
「親方の技術は高くて、多少朝が弱くても私達は文句言えないのよね。あんなに速度であれだけの仕事量が出来るのは、この国でも数人だし」
「確かにあれを見せつけられたら、朝が弱くてもあまり文句は言えませんね」
そうして昼まで作業を続けた俺は、炊き出しの為に一時的に現場を抜けた。
既に炊き出しの場所では、兵士さん達が準備をしており俺も一緒に手伝って炊き出しを行った。
最初の頃は疲弊しきった街の人達も、大分顔色が良くなっており笑顔を取り戻してきていた。
そして昼休憩の終わりに現場に戻ってきた俺は、昨日同様にデイルさんから加工の仕方を教わりながら作業を進めた。
「えっ、俺が一つ建物を建てるんですか!?」
「二日間教えてて思ったが、クリスの技術はもう十分高いからやってみても良いと思う。難しいなら、他の奴等も一緒に手伝うからやってみないか?」
デイルさん達の手伝いを始めて三日目、デイルさんが現場にやって来て俺は驚きの提案をされた。
その提案とは、俺が一つの建物を建築するという内容だった。
「今回の豪雨で、壊れた部分の街を作り直す事になったんだが元々あった建物を作るよりも新しく街並みを変えるとアイザック様が言ってな、空いてる土地をクリスに任せてもいいかアイザック様に聞いたら許可が下りてな」
「許可まで既に取ってあるんですか……」
「こんな提案を俺の独断では決められないからな、どうだやってみないか?」
「……良い経験になると思いますし、やってみたい気持ちはありますけど流石に一人だと悩みそうなので手伝って貰える方が居れば嬉しいです」
そう俺が言うと、キリさんとアキさん、そして何人か大工を俺に付けてくれる事になった。
「まさか、こんな事になるとは……見学のつもりで近くで見ていただけなのに、俺の手で建物を作るなんて」
「ごめんな、多分、親方がアイザック様に頼み込んだからだと思うんだ。昨日の時点で、何か考え事をしてるとは気付いたけど、まさかこんな事を頼んでたとは思わなくて」
「いえ、キリさんが謝る事じゃないですから! それに俺も良い経験になると思って、結局は自分で納得して受けたので大丈夫ですよ」
謝罪したキリさんに対して俺はそう言葉を返し、俺の持ち場となる現場へとやって来た。
既にそこは整備された場所で、大体一軒家分の広さで建物を建てる事になっている。
間取りは全て俺に任されており、耐久性の問題さえ合格すれば良いと言われている。
「確かこの地区は新しく、居住区になると言ってましたから建てるとしたら家が良いですよね」
「そうだね。ただ初めての建築だろうから、平屋の造りでも問題ないとは思う。初心者のクリス君に、二階建て以上の建物を作れなんて無茶な指示は親方もしないだろうし」
「そうですけど、基本的に二階建てですからそこは挑戦の意味も込めてやってみたい感はありますね……取り合えず、設計図から書こうと思います」
俺はそれからキリさんと、他の大工さん達に色々と聞きながらまずは建物の設計図を描く事にした。
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