特性【プレイヤー】に覚醒した俺は、前世の記憶を思い出し異世界を楽しむ

霜月雹花

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第一章

第65話 【従魔・1】

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 ハクを従魔にしてから数日がたったが、俺の日常は特に変わらない。
 従魔にした魔物が大きい個体だったりしたら、住む場所だったり食費にお金が掛かってしまう。
 しかし、ハクの場合はまだウルフの子供なので身体はそこまで大きくない。
 大きくなったら流石にアリシアさんの家で飼うのは難しくなるだろうが、流石にそれまでには俺も家を出ているだろう。

「なんだかんだ家を出る理由が無かったけど、まさかこんな形で家を出る理由が出来るなんてな」

 とは言っても、ウルフは個体によって変わるらしいが、半年位はまだ家には居れそうだ。

「まあ、でも冒険者ギルドまで近さはアリシアさんの家でしかない特権なんだよな」

 徒歩5分の距離感にギルドがあって、店の事とかが無ければ直ぐに家に帰れる。
 他にも近くには建物があるが、特に空きそうな感じはないから、もし家を出るとなるとギルドまでは遠くなるのは確実だ。
 と、そんな事を考えながら採取作業を終えた俺は王都に戻り、ギルドで依頼の報告を行った。

「ハク。帰るぞ」

「きゃう!」

 依頼に行ってる間、ハクはギルドで見て貰っている。
 まだ子供の為、依頼には連れて行けない。
 大人しく、賢いから家に留守番も出来そうだったが、ギルド側から俺が依頼で出てる間は見てくれると提案してくれた。
 ハクを連れて来た日、既にレインさんはハクの虜になっており、リンさんや他の受付の人もハクの可愛さに撃沈していた。
 その為、ハクはすんなりと受け入れられて、ここ数日ですっかりと冒険者ギルド内で人気者となっていた。

「今日はボアが久しぶりに倒して、骨を別で取っておいたがハクは骨は好きか?」

「きゃうきゃう!」

「好きなのか、それはよかった。だったら、今後も骨は少しだけ残しておいてハクのおやつにでも取っておくよ」

「きゃう~ん!」

 ハクは嬉しそうに鳴くと、自分のエサ入れの中に入れた骨をしゃぶりはじめ、俺は夕食の準備を始めた。
 それから少しして、アリシアさん達が帰って来たのだが、今日は二人だけでは無く、ラントリス夫妻も一緒に居た。
 俺は何も聞いてなかったので、三人分しか料理を用意していなかった。
 なので慌ててアリシアさん達も協力してもらって、追加で二人分の料理を用意した。

「すまないな。急に来たのに、夕食まで準備してもらって」

「いえ、折角来て頂いたのに何もしないのは、それより今日はどういった用事で来たんでしょうか?」

「……実はな、エレナがノア達からクリス君に従魔が出来たと聞いて、一目見たいと騒いでな」

「騒いでって、別にそこまでじゃなかったでしょ?」

 アイザックさんの言葉にエレナさんはそう言うが、アイザックさんはジッと見つめ同意しようとしなかった。
 そんなアイザックさんを見て、エレナさんはプイッと顔を逸らし、部屋の隅で骨を加えてるハクを見て笑みを浮かべた。

「普段、領地に行く道中に出て来るウルフは可愛いと思った事ないけど、こうして見てみるとウルフの子供は可愛いわね」

「それは他の冒険者の方も言ってましてね。ここ数日、俺が依頼で出掛けてる際は冒険者ギルドで見て貰ってるんですが、他の冒険者さんからもウルフに対しての価値観が少し変わったと言ってました」

「それはそうだろうな、私も最初は興味が無かったがこうしてみると、その可愛さにウルフを自分で育ててみたいと言う感情も少なからず湧いてしまった」

「クリス君、やっぱり従魔にするのは難しかったの?」

 エレナさんのその質問に対して、俺がハクとどういった経緯で出会って従魔にしたのか説明をした。

「クリス君はそういった巡り合わせの運を持ってる方だと思っていたが、まさか魔物にも適応するとはな……従魔使いは従魔となる魔物と出会うのが、一番難しいとされてるのにクリス君は逆からいったようなものだな」

「従魔使いの学校に行ってる子が知ったら、クリス君の事を羨ましいと思うでしょうね」

「多分そうだと思いますね。それにハクは、かなり賢い方で言葉も理解してるのでそこの部分も知ったら、嫉妬されるレベルだと思いますね」

「言葉を理解? それは凄く賢い子だね。実際、どんな所まで理解してるのか後で見せてくれないか?」

 アイザックさんからそう言われた俺は「いいですよ」と言葉を返し、食事を食べ終えたらハクがどれだけ賢いのか披露する事が決まった。
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