攻略wiki付悪役令嬢が頑張って栄光の一歩を踏み出すまでの軌跡

すらなりとな

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だんざい!~約束されたバッドエンド

○00表_悪役令嬢は目の前が真っ暗になった!

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 ああ、やっぱりこうなった。

 周囲の光景を、イザラ公爵令嬢は諦観と共に見つめていた。

 学園の図書室。
 そこに集う、金と地位を持つ男子生徒達。
 その後ろには、金と地位もなかった女子生徒。
 誰もが、イザラに厳しい表情を向けている。

 なぜ、こうなってしまったんだろう。

 頭の中で渦巻く疑問。
 思えば、イザラは、ずっとこの疑問を抱えて生きてきた。
 あの日、自分の「未来」を知った時から。


 # # # #


 それは貴族同士で開かれた、進学祝いのパーティの最中だった。
 次々とやってくる貴族達を定型句でかわしていたイザラは、父親から「そろそろ疲れただろう、テラスで休んでいなさい」という「指示」を受けていた。
 既に公爵令嬢として帝王学を身に着けていたイザラ。
 父の言葉が娘を心配したものではなく、「会わせたい相手がいるから、テラスで待っていなさい」という意味だと、理解できるようになっていた。

「お嬢様、こちらへ」

 案の定、ホールの外では、メイドのブルネットが待ち構えている。
 差し出された手を取って、人気のない廊下を進むイザラ。
 わざわざ自分を「月明かりに照らされたテラスの令嬢」に演出するということは、相手は婚約者候補だろうか。どんな人だろう?

「ブルネットは、どなたがいらっしゃるか知ってる?」
「いえ。私はお嬢様を案内せよ、としか……あら?」

 しかし、ブルネットは返答の途中で立ち止まった。
 視線は、廊下の奥。
 つられて目を向けると、半開きの扉が、光をこぼしている。
 その奥には、無造作に積み上げられた、誕生日プレゼントの山。

「扉には鍵をと、あれほど言われていますのに……」
「いいじゃない。せっかくだし、少し、覗いてみましょう?」

 いかに教育を受けたといえど、抑圧には反発を覚える年齢。
 目ざとく見つけた息抜きの機会に、イザラは嬉々として部屋へと入っていく。
 困ったように見守るブルネットを横に、珍しい(と、持ってきた貴族は主張している)品々を漁るイザラ。
 が、雑然と放置されるだけあって、どれも価値のないものばかりだった。
 帝王学のオマケで芸術を少しかじっただけのイザラですらニセモノと分かる絵画に、ヘタなだけの彫刻。果ては、磨いただけのタダの石まで積まれている。本当に高価なものは、警備と人の目がある会場に留め置かれているのだろう。

 それにしたって、もう少し何かないのかしら?

 そんな思いでガラクタを漁っていると、視界に小さく光るものが引っかかった。
 視線で追ってみると、小さな手鏡が転がっている。
 手に取るイザラ。
 余計な装飾のないシンプルな造形だが、手に馴染むデザインで、鏡面にも歪みや曇りがない。
 どこか、名のある職人の作品だろうか。
 感心しながら、鏡面に自らを映し込む。

 その途端、強い眩暈を感じた。
 強い睡魔に襲われた時のように、反転する意識。
 同時に、膨大な情報が、一瞬で流れていく。

――――――――――――――――――
【クラウス】
 主人公アーティアが、学園で初めに出会う人物にして、国の第一王子。
 学者タイプのラバンや武闘派のタイタスと比べると、文武両道型。
 アーティアと同じ「二刀流」で、気合いの入ったスチルも見れる。
 普通に攻略する分には簡単で、とにかく会っていれば問題ない。
 婚約者であるイザラが邪魔をしてくるが、勝手に自滅してくれる。
 なお、パッケージに載っているスチルはイザラの回想である。
 (断罪時に流れるパーティ会場から抜け出した先のテラスで出会うシーンが該当)
 パッケージスチルが主人公でないのは詐欺だなんだと話題になった。
――――――――――――――――――

 理解できない単語も多い。
 が、イザラを待ち受ける運命だけは、はっきりと分かった。
 クラウスとの婚約者として過ごす甘い時間。
 しかし、学園へ通う頃には、クラウスの興味は他の女生徒――アーティアへと移っていく。
 醜い嫉妬を抱いたイザラは、物語に出てくるイジワルな悪役のように、アーティアをいじめ、そして――
 クラウスやアーティア達に囲まれ、断罪を受けるのだ。


 # # # #


「イザラ、キミに、重要な話があるんだ」

 聞こえるのは、あの日、未来からの声に教えられたのと同じ、クラウスの言葉。

「先日、ある筋から、キミが隣国の危険な錬金術師と付き合いがあると聞いた」

 こうならないように、頑張ってきたつもりだった。

「その錬金術師は、違法薬物を使った実験を行った容疑で、先日、捕縛されたよ」

 アーティアにも優しく接し、誇り高い貴族であろうとした。

「そして、キミの研究室からも、同じ違法薬物が見つかっている」

 だが、王子には届かなかった。

「私はキミを――」

 なぜ、こうなってしまったんだろう?
 疑問と共に、胸の中で、何か熱いものが渦を巻く。
 今まで抑えつけてきた感情は、行き場をなくし、

「いい加減にしてください!」

 爆発――しなかった。

「え?」

 叫んだのは、アーティア。
 戸惑いの声を上げたのは、イザラ。

 続いて、乾いた音。

 叩かれた!?
 頬を!
 誰が?
 自分ではない!?
 クラウスだ!
 なぜか、クラウスが、アーティアから、平手打ちを受けている!

 ワ ケ が 分 か ら な い !

「イザラお姉さまがっ! そんな事っ! するわけが! ないでしょうっ!!」

 駆け寄ってくるアーティア。
 そのまま、優しくイザラの手を握る。
 困惑の視線で説明を求めるイザラ。
 何故か頬を染めるアーティア。

 なんだろう。
 なぜだろう。

 猛烈に危険な何かを見落としている気がする。
 いま確かめなければ、とんでもない事になりそうだ。
 意を決して、口を開く。
 が、疑問が声となる前に、クラウスの怒声が響いた。

「アーティア! 邪魔をしないでくれ!」
「邪魔だなんて! クラウス様が言いがかりをつけているだけでしょう!」
「言いがかりなどとっ! 私は、婚約者の容疑を確かめたいだけだ!」
「お姉さまは無実です!
 違法薬物だって! クラウス様の捏造じゃないんですか!」
「なっ! 私は王族の血筋だっ!
 そのような破廉恥な真似っ! するはずがないだろう!」
「そんなの、お姉さまだって! クラウス様の婚約者なら王族も同然でしょう!」
「婚約などっ! 解消する予定だ!」
「それで、代わりに迎えるのが男ですかっ!?」
「キミこそ、イザラと女同士で結婚でもするつもりかっ!?」

 睨みあう二人。

 い や、 ち ょ っ と 待 て っ !

 まさか、二刀流って、そういう……!?

 声にならない叫びと共に、助けを求めて、視線をさまよわせる。
 後ろにいる男子生徒達と目があった。
 返答は、拒絶。
 そろって端正な顔を憂鬱に沈め、静かに瞑目し、首を振る。

「う、う そ! う ぞ よ ぞ ん な ご と!」
「すまない……本当にすまない」

 イザラの涙声に謝ったのは、クラウスの従兄弟に当たるラバン。
 王族ながら政治に関心を示さず、薬学や化学の研究ばかりしている変わり者だが、クラウスから親友として紹介されて以来、時折、勉強を見てもらっているくらいには仲がいい。今も、まるでショックでふさぎ込む妹を導く兄のように、静かに手を差し伸べてくれる。
 が、クラウスがそれを見咎めた。

「ラバンッ! イザラから離れろっ!」
「ふむ。この状況を絵面だけ見れば、至極もっともな主張だがね。
 君、自分の婚約者を心配していないだろう?」
「当たり前だ! 私が心配しているのはキミだ、ラバン!」

 その言葉で、何かを悟ったイザラ。
 ラバンにそっと問いかける。

「あの、ラバン様、私の代わりの男と言うのは……」
「……それ以上は聞かないでくれたまえ、イザラ嬢」

 絶句するイザラ。
 ラバンはそんなイザラをクラウスから庇うように立ちながら、どこまでも冷静な声で言い放った。

「いい機会だ。君はもう一度よく自分の婚約者を観察したまえ。
 見目麗しく、頭脳も聡明。家柄だって申し分ない。
 婚約者として理想の女性だと思わないかね?」
「それは、ラバンにもあてはまるだろう?」
「時間の無駄のようだから、否定するのはもっとも重要な部分だけにしよう。
 私 は 男 だ !」
「待て、ラバン! 話を聞いてくれ!」
「聞いているとも。
 決して、私も決して面倒だからと適当に聞き流しているわけではない。
 だがその前に、面倒くさがらずに話をしてくれる婚約者の話も聞きたまえ。
 イザラ嬢はその辺りもよくできる女性だ。
 そして、私 は 男 だ !」
「なぜ!? なぜ理解しようとしないっ! ラバンッ!」
「理解はしているよ。
 私に偏見はない。ただ、君は私と違うというだけだ。
 みんな違ってみんないい。名言だ。
 君もその辺を受け入れたまえよ」

 目の前の理解を超えた会話を受け入れられず、頭を抑えるイザラ。
 ふらつく足元を、誰かが支えた。

「大丈夫ですか!? お姉さま!
 お姉さま! おねえさま! オネエサマ! はあはあクンカクンカっ!」

 いや、抱き付かれていた。
 そのまま、胸に顔をうずめようとするアーティア。
 貞操の危機に、慌てて引きはがそうとするイザラ。
 が、予想外の力でビクともしない。
 もがくイザラを救ったのは、もう一人の男子生徒。

「っ! タイタス様! 邪魔しないでください!」
「それは俺のセリフだ」

 やはり、イザラとは面識がある。辺境伯の血筋で、隣国からの侵略を護るという役目をまっとうすべく育てられた、生来の騎士。無口なたちなのか、あまり話したことはないが、視線は決して冷たいものではなく、むしろ、クラウスから薄れていった温かさを感じたこともあった。
 今もその目で、アーティアを羽交い締めにしながら、早く逃げろ、と訴えている。

「タイタス様っ!? 感謝いたします!」
「礼はいい。ここは俺が抑える」

 未だ混乱するイザラに、アーティアと相対しながら静かに告げるタイタス。
 そう、相対である。
 イザラが視線を外したほんの一瞬で、アーティアはタイタスの拘束から抜け出し、月色に輝く剣を手にしていた。
 あの剣は、確か、聖女だけが抜けると文献に記載されていた聖剣!

「お姉さま! 今! アーティアがお助けします!」
「……早く逃げろ」

 優し目を遠い目に変えながらも、しっかりと呼びかけるタイタス。
 イザラも遠くなりかける意識を何とか立て直し、その場から脱出、学園寮の自室へと飛び込んだ。

「お嬢様? どうされたのですかっ?!」

 出迎えたのは、ブルネット。
 幼少のころから一緒に過ごし、いつだって支えてくれた、姉のような人物。
 今も、安心感から崩れ落ちそうになるイザラを、そっと抱き留めてくれる。

「ブルネット、さっき、さっき、クラウス様がね……」
「ええ、ええ。私も調べましたので、存じています。イザラお嬢様」

 ブルネットは全部わかっています、全部受け入れます、と言うように髪を撫で、

「どうかご安心ください!

 私がクラウス様の代わりになってご覧に入れます!」

 なぜか、服を脱ぎ始めた。

 お 前 も か ブ ル ネ ッ ト !!!!

 イ ザ ラ は 目 の 前 が 真 っ 黒 に な っ た !

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