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がくえん!~悪役令嬢のわるあがき
●05裏_お助けキャラは学園最初の1年を始めた!
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貴族の令息令嬢の通う学園。
この春、入学したばかりアリスは、まだ慣れぬ席に腰を下ろしていた。
周りの生徒たちも、どこか落ち着かない一方、期待も抱えた様子で、先生の話を聞いている。アリスとしては、このまま、春のように穏やかな学生生活を送りたいところだが、
「ええと、では、図書委員は、アリスさんとアーティアさん、あと、ラティアナさんで決まりね」
ああ、さっそく、穏やかな学園生活が消え去った気がするわ。
先生の言葉に、がっくりと肩を落とすアリス。
新学期に入っての委員を決めるホームルーム。
誰も立候補がいないのをいいことに、見事先生に指名されてしまった。
近い席に座っていたアーティアとラティも一緒だ。
「よかったね? 三人一緒だって!」
「どこがいいのよ」
「まったくですわ!
上級貴族たるこのワタクシが、こんな下級貴族と一緒だなんて……」
喜んでいるアーティアに突っ込めば、いかにも小物丸出しの反応がラティから返ってくる。このラティ、あの舞台裏での一件の後、なぜかアーティアと気が合い、仲良く学園生活を送っている。
ラティが聞けば「なぜ私が下級貴族なんかとっ!」と否定するだろうが、
この後にアーティアが「うん、仲いいよ」と笑い、
ラティが「あなたも否定しなさいっ!」と叫ぶ、
そんな光景がアリスの目に浮かぶ程度には、仲がいい。
もっとも、挟まれるアリスの方はたまったものではない。一人でも大変なのに、二人の面倒を見るなどと、学園生活をドブに捨てるようなものである。
「じゃあ、さっそくだけど、図書委員の三名は放課後に図書室まで来てください。私が司書を兼任していますから、手伝ってほしいことを説明しますので。
えーっと、それでは、委員もぜんぶ決まったので、本日はここまでとします」
新学期早々に抱えることとなった難題に頭を痛めていると、先生の声が響き渡った。これ幸いと、アリスは二人から離れようとする。
「あー、ちょっと、私、お花摘みに行ってくるから、二人で先に行ってて?」
トイレへ行くふりをして、階段の踊り場へ。
一つ上の学年の生徒たちが降りてくる中、とある男子生徒を捕まえた。
言うまでもなく、フラネイルである。
「はい、ストップ」
「ストップじゃねぇよ。アーティアの面倒ならお断りだぞ?」
「言う前に断るのやめてくれない?」
「違うのか?」
「いや? 違わないけど?」
とてつもなくうんざりした顔をするフラネイル。
アリスは逃がさぬとばかりに畳みかける。
「ほら、アンタ婚約者でしょ? これからアーティアは図書委員だから、手伝ったりなんかすると好感度が上がるわよ?」
「いや、俺はもう別の婚約者を探した方がいい気がしてるんだが?」
「ちょっと、諦めてどうすんのよ?」
「なら聞くが、今のアーティアが俺と婚約して、幸せになれると思うか?」
が、フラネイルから返ってきたのは、深刻な声。
一瞬の沈黙の後、アリスは真面目な顔で問い直した。
「本気で諦めるの? 好きなんでしょ?」
「そうだが、アーティアの気持ちを無理にでも振り向かせよう、という程じゃなくなったんだ。理由は分かるだろう?」
どこか辛そうに言うフラネイル。
以前からアーティアはまともにフラネイルを婚約者として見ていなかったが、やはり、あのデートで失敗したのが致命的だったのだろう。なにせ、チケットを渡せば「アリスと行ってくる!」、イザラを見つければ「イザラお姉さま!」と叫ぶアーティアである。エスコートする側も完全に無視されては、熱も冷めるというものだ。
分かってしまったアリスは、別の方向から話を切り出す。
「なら、ラティって娘が一緒に図書委員やってるから、会ってみたら?」
「……絶賛失恋中の俺に、なかなか鬼畜だな」
「失恋中だからじゃない! こういう時は落ち込んでるより動く方がいいのよ!」
やや強引に図書室に連れていくアリス。
もしここでフラネイルに手を振りほどかれれば、素直に謝るつもりだったが、アーティアへの未練か、失恋のショックか、フラネイルは手を引かれるまま付いてくる。
なんか押し付けるはずが、面倒を見る相手が増えた気がするわね。
そう思いながらも、アリスは図書室へと歩き始めた。
# # # #
「あら、ちゃんと図書委員してるのね? 偉い偉い」
「わーい、褒めて褒めて?」
アリスが適当な声をかけと、受付から嬉しそうに駆け寄ってくるアーティア。
哀れ、隣のフラネイルはガン無視である。
「まあ、ようやく来ましたの?
上級貴族たる私を置いてゆっくり殿方と来るなんて、本当に貴女は――」
その後ろから、ぐちぐちと文句を言いながら歩いてくるラティ。
哀れ、隣のフラネイルへと当たり前のように飛び火している。
フラネイルはというと、アリスにうんざりした小声で問いかけてきた。
「なあ、ラティって、この娘? 俺、帰っていい?」
「まあ、ちょっと待ちなさい。
態度はこんなのでも、見た目と根っこはそんなに悪くないから」
「いや、無理があるだろ」
やっぱりダメだったか。
半ばそう思いかけたときに、背後から声がかかった。
「アリス君じゃないか。この間のメンバーも一緒か。
相変わらず大変そうだね」
ラバンである。クラウスも一緒だ。
「ラバン様? どうしてこちらに?」
「ああ、研究中の薬学関連の本を探しにね。
クラウスはイザラ嬢とデートだ」
つまりは、図書室でお姫様と時間を過ごす王族の付き添いなのだろう。
友人という名の王族の取り巻き貴族のつらいところだ。
が、そんな王族の取り巻きと仲良く話していたのがよくなかったらしい。
ラティが目を吊り上げて間に入ってきた。
「ラバン様!? このような下級貴族となどとっ!」
「心配せずとも、すぐに退散するとも。
ではクラウス、きちんと王族としての義務を果たしたまえよ?」
が、ラバンはあっさりかわして去っていく。
隣にいたフラネイルも便乗した。
「あ、待ってくれ、ラバン!
当家に依頼されていた例の薬だが……」
そういえば、フラネイルは商家出身の貴族だった。恋愛を忘れるため、しばらく商売に精を出すこととしたのだろう。アリスは把握していなかったが、上級貴族のラバンと呼び捨てで呼び合うくらいには、コネクションを作っているようだ。
アリスはため息と供にそれを見送る。
はあ、アーティア、あんた、割と大事な縁を逃したかもしれないわよ?
そう思いながらアーティアを見ると、なんと王子に堂々と話しかけていた。
「ええっと? クラウス様? でしたっけ?
その、お姉さまとデートというのは……?」
「うん? ああ、ラバンの言うとおり、王族の務めというヤツだよ。私もラバンやキミらのように自由に遊んでみたいものだ」
クラウスの方もごく自然に返している。
もちろん、こうなるとラティは黙っていない。
「まあクラウス様っ! いけません!
イザラお姉さまを差し置いて、またそのようなことを!」
「そうですよ!
王子様はお姫様とキラキラした場所で付き合わないといけないんです!
下級貴族の私は、もうちょっとこう、埃っぽい場所で……えへへ」
「いや、私はそういうつもりではないのだが……」
……私もフラネイルみたいに別の趣味でも始めてみようかしら?
何やら騒がしくなり始めた三人に、現実逃避を始めるアリス。
「ラティ、その辺にしておきなさい」
しかしそこへ、救世主が舞い降りた!
言うまでもなくイザラである。
「お姉さま!? ど、どうしてここに?」
「錬金術の課題をこなそうと思いまして。
ごきげんよう、クラウス様。私の後輩がご迷惑をおかけしました」
「む、イザラか。そういえば、彼女はキミの取り巻きだったな?」
「取り巻きだなんて。大切な後輩ですわ?」
困ったように微笑むイザラ。
ああ、こういうのが本当のお嬢様なのね。
ラティもお嬢様だけど、なんかパチモン臭があるのよね。
やっぱりあの金髪縦ロールがダメなのかしら?
現実逃避を続けるアリス。
「お姉さまっ! 本は私が探してきますから、クラウス様とご一緒されては!?」
「まあ、それは――」
「ほら、下級貴族! お姉さまが本をご所望よ! 錬金術の!
さっさと取ってきなさい!」
「はい! ただいま! すぐに!」
暴風のごとく去っていくアーティア!
あ、先生が吹っ飛ばされた。
棚もなぎ倒されてるわね。
あら? フラネイルが下敷きになったわ。
ラバン様は……きれいに避けたみたいね。
さすが上級貴族。危険察知能力が違うわ。
「ラティ、そういう言い方はよくありませんわよ?」
「! 申し訳ありません! つい……」
ああ、イザラ様はラティの相手で惨劇には気づかないのね?
どうぞそのままでいてください。
「お待たせしました!」
「い、いえ。待っていませんわ。ありがとう、アーティア」
ああ、アーティアは惨劇が起ころうと気にしないのね?
今すぐ矯正が必要だわ!
「クラウス様。課題はこちらの本で十分ですので、向こうで始めましょう」
「二人も一緒――いや、今はまだその時ではないか。
すまない、イザラを借りるぞ」
イザラ様も義務をこなそうとしてるみたいだし、私も頑張らないと。
ようやく現実逃避から脱したアリス。
イザラがクラウスを連れ去っていくのを見送ると、二人に目を向け、
「ああ、私たちのお姉さまが……!」
「しょうがないじゃない! お姉さまはクラウス様の婚約者なのよ!
ああ、百合に挟まる男を抹殺できないなんて!
お姉さま! 申し訳ありません! 私は、ラティは無力です!」
「うう、ごめんラティ! 私、クラウス様に余計なこと言ったかも」
「グス。いいのよ。貴女が言うとおり、きっとキラキラした場所でお付き合いするのがお姉さまには似合っているの。手が届かないところの方が、星はきれいに瞬くのですわ」
「うん、でも、きっと、私達でもチャンスはあるよ!
婚約者は無理でも、ほら、埃っぽいところで秘密の関係だってなれるって!
お姉さまだって、いつか私たちのことを分かってくれるよ!」
すぐに見なかったことにして、図書室の奥へ向かうアリス。
「先生、大丈夫ですか?」
「ああ、アリスさん! あなただけが図書室の良心よ!
とりあえず、散らばった本の片づけをお願いね。
先生、ちょっとあの二人と『お話』してきますから」
教員の義務をこなすべく、戦場へと踏み出していく先生。
アリスはそれを見守りながら、崩れた本と、ついでに下敷きになったフラネイルの救出へと向かった。
この春、入学したばかりアリスは、まだ慣れぬ席に腰を下ろしていた。
周りの生徒たちも、どこか落ち着かない一方、期待も抱えた様子で、先生の話を聞いている。アリスとしては、このまま、春のように穏やかな学生生活を送りたいところだが、
「ええと、では、図書委員は、アリスさんとアーティアさん、あと、ラティアナさんで決まりね」
ああ、さっそく、穏やかな学園生活が消え去った気がするわ。
先生の言葉に、がっくりと肩を落とすアリス。
新学期に入っての委員を決めるホームルーム。
誰も立候補がいないのをいいことに、見事先生に指名されてしまった。
近い席に座っていたアーティアとラティも一緒だ。
「よかったね? 三人一緒だって!」
「どこがいいのよ」
「まったくですわ!
上級貴族たるこのワタクシが、こんな下級貴族と一緒だなんて……」
喜んでいるアーティアに突っ込めば、いかにも小物丸出しの反応がラティから返ってくる。このラティ、あの舞台裏での一件の後、なぜかアーティアと気が合い、仲良く学園生活を送っている。
ラティが聞けば「なぜ私が下級貴族なんかとっ!」と否定するだろうが、
この後にアーティアが「うん、仲いいよ」と笑い、
ラティが「あなたも否定しなさいっ!」と叫ぶ、
そんな光景がアリスの目に浮かぶ程度には、仲がいい。
もっとも、挟まれるアリスの方はたまったものではない。一人でも大変なのに、二人の面倒を見るなどと、学園生活をドブに捨てるようなものである。
「じゃあ、さっそくだけど、図書委員の三名は放課後に図書室まで来てください。私が司書を兼任していますから、手伝ってほしいことを説明しますので。
えーっと、それでは、委員もぜんぶ決まったので、本日はここまでとします」
新学期早々に抱えることとなった難題に頭を痛めていると、先生の声が響き渡った。これ幸いと、アリスは二人から離れようとする。
「あー、ちょっと、私、お花摘みに行ってくるから、二人で先に行ってて?」
トイレへ行くふりをして、階段の踊り場へ。
一つ上の学年の生徒たちが降りてくる中、とある男子生徒を捕まえた。
言うまでもなく、フラネイルである。
「はい、ストップ」
「ストップじゃねぇよ。アーティアの面倒ならお断りだぞ?」
「言う前に断るのやめてくれない?」
「違うのか?」
「いや? 違わないけど?」
とてつもなくうんざりした顔をするフラネイル。
アリスは逃がさぬとばかりに畳みかける。
「ほら、アンタ婚約者でしょ? これからアーティアは図書委員だから、手伝ったりなんかすると好感度が上がるわよ?」
「いや、俺はもう別の婚約者を探した方がいい気がしてるんだが?」
「ちょっと、諦めてどうすんのよ?」
「なら聞くが、今のアーティアが俺と婚約して、幸せになれると思うか?」
が、フラネイルから返ってきたのは、深刻な声。
一瞬の沈黙の後、アリスは真面目な顔で問い直した。
「本気で諦めるの? 好きなんでしょ?」
「そうだが、アーティアの気持ちを無理にでも振り向かせよう、という程じゃなくなったんだ。理由は分かるだろう?」
どこか辛そうに言うフラネイル。
以前からアーティアはまともにフラネイルを婚約者として見ていなかったが、やはり、あのデートで失敗したのが致命的だったのだろう。なにせ、チケットを渡せば「アリスと行ってくる!」、イザラを見つければ「イザラお姉さま!」と叫ぶアーティアである。エスコートする側も完全に無視されては、熱も冷めるというものだ。
分かってしまったアリスは、別の方向から話を切り出す。
「なら、ラティって娘が一緒に図書委員やってるから、会ってみたら?」
「……絶賛失恋中の俺に、なかなか鬼畜だな」
「失恋中だからじゃない! こういう時は落ち込んでるより動く方がいいのよ!」
やや強引に図書室に連れていくアリス。
もしここでフラネイルに手を振りほどかれれば、素直に謝るつもりだったが、アーティアへの未練か、失恋のショックか、フラネイルは手を引かれるまま付いてくる。
なんか押し付けるはずが、面倒を見る相手が増えた気がするわね。
そう思いながらも、アリスは図書室へと歩き始めた。
# # # #
「あら、ちゃんと図書委員してるのね? 偉い偉い」
「わーい、褒めて褒めて?」
アリスが適当な声をかけと、受付から嬉しそうに駆け寄ってくるアーティア。
哀れ、隣のフラネイルはガン無視である。
「まあ、ようやく来ましたの?
上級貴族たる私を置いてゆっくり殿方と来るなんて、本当に貴女は――」
その後ろから、ぐちぐちと文句を言いながら歩いてくるラティ。
哀れ、隣のフラネイルへと当たり前のように飛び火している。
フラネイルはというと、アリスにうんざりした小声で問いかけてきた。
「なあ、ラティって、この娘? 俺、帰っていい?」
「まあ、ちょっと待ちなさい。
態度はこんなのでも、見た目と根っこはそんなに悪くないから」
「いや、無理があるだろ」
やっぱりダメだったか。
半ばそう思いかけたときに、背後から声がかかった。
「アリス君じゃないか。この間のメンバーも一緒か。
相変わらず大変そうだね」
ラバンである。クラウスも一緒だ。
「ラバン様? どうしてこちらに?」
「ああ、研究中の薬学関連の本を探しにね。
クラウスはイザラ嬢とデートだ」
つまりは、図書室でお姫様と時間を過ごす王族の付き添いなのだろう。
友人という名の王族の取り巻き貴族のつらいところだ。
が、そんな王族の取り巻きと仲良く話していたのがよくなかったらしい。
ラティが目を吊り上げて間に入ってきた。
「ラバン様!? このような下級貴族となどとっ!」
「心配せずとも、すぐに退散するとも。
ではクラウス、きちんと王族としての義務を果たしたまえよ?」
が、ラバンはあっさりかわして去っていく。
隣にいたフラネイルも便乗した。
「あ、待ってくれ、ラバン!
当家に依頼されていた例の薬だが……」
そういえば、フラネイルは商家出身の貴族だった。恋愛を忘れるため、しばらく商売に精を出すこととしたのだろう。アリスは把握していなかったが、上級貴族のラバンと呼び捨てで呼び合うくらいには、コネクションを作っているようだ。
アリスはため息と供にそれを見送る。
はあ、アーティア、あんた、割と大事な縁を逃したかもしれないわよ?
そう思いながらアーティアを見ると、なんと王子に堂々と話しかけていた。
「ええっと? クラウス様? でしたっけ?
その、お姉さまとデートというのは……?」
「うん? ああ、ラバンの言うとおり、王族の務めというヤツだよ。私もラバンやキミらのように自由に遊んでみたいものだ」
クラウスの方もごく自然に返している。
もちろん、こうなるとラティは黙っていない。
「まあクラウス様っ! いけません!
イザラお姉さまを差し置いて、またそのようなことを!」
「そうですよ!
王子様はお姫様とキラキラした場所で付き合わないといけないんです!
下級貴族の私は、もうちょっとこう、埃っぽい場所で……えへへ」
「いや、私はそういうつもりではないのだが……」
……私もフラネイルみたいに別の趣味でも始めてみようかしら?
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「ラティ、その辺にしておきなさい」
しかしそこへ、救世主が舞い降りた!
言うまでもなくイザラである。
「お姉さま!? ど、どうしてここに?」
「錬金術の課題をこなそうと思いまして。
ごきげんよう、クラウス様。私の後輩がご迷惑をおかけしました」
「む、イザラか。そういえば、彼女はキミの取り巻きだったな?」
「取り巻きだなんて。大切な後輩ですわ?」
困ったように微笑むイザラ。
ああ、こういうのが本当のお嬢様なのね。
ラティもお嬢様だけど、なんかパチモン臭があるのよね。
やっぱりあの金髪縦ロールがダメなのかしら?
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「まあ、それは――」
「ほら、下級貴族! お姉さまが本をご所望よ! 錬金術の!
さっさと取ってきなさい!」
「はい! ただいま! すぐに!」
暴風のごとく去っていくアーティア!
あ、先生が吹っ飛ばされた。
棚もなぎ倒されてるわね。
あら? フラネイルが下敷きになったわ。
ラバン様は……きれいに避けたみたいね。
さすが上級貴族。危険察知能力が違うわ。
「ラティ、そういう言い方はよくありませんわよ?」
「! 申し訳ありません! つい……」
ああ、イザラ様はラティの相手で惨劇には気づかないのね?
どうぞそのままでいてください。
「お待たせしました!」
「い、いえ。待っていませんわ。ありがとう、アーティア」
ああ、アーティアは惨劇が起ころうと気にしないのね?
今すぐ矯正が必要だわ!
「クラウス様。課題はこちらの本で十分ですので、向こうで始めましょう」
「二人も一緒――いや、今はまだその時ではないか。
すまない、イザラを借りるぞ」
イザラ様も義務をこなそうとしてるみたいだし、私も頑張らないと。
ようやく現実逃避から脱したアリス。
イザラがクラウスを連れ去っていくのを見送ると、二人に目を向け、
「ああ、私たちのお姉さまが……!」
「しょうがないじゃない! お姉さまはクラウス様の婚約者なのよ!
ああ、百合に挟まる男を抹殺できないなんて!
お姉さま! 申し訳ありません! 私は、ラティは無力です!」
「うう、ごめんラティ! 私、クラウス様に余計なこと言ったかも」
「グス。いいのよ。貴女が言うとおり、きっとキラキラした場所でお付き合いするのがお姉さまには似合っているの。手が届かないところの方が、星はきれいに瞬くのですわ」
「うん、でも、きっと、私達でもチャンスはあるよ!
婚約者は無理でも、ほら、埃っぽいところで秘密の関係だってなれるって!
お姉さまだって、いつか私たちのことを分かってくれるよ!」
すぐに見なかったことにして、図書室の奥へ向かうアリス。
「先生、大丈夫ですか?」
「ああ、アリスさん! あなただけが図書室の良心よ!
とりあえず、散らばった本の片づけをお願いね。
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