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序章
プロローグ
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「リーゼ、というわけなのじゃ。」
バイル公爵の話を娘のリーゼは黙って聞いていた。隣のレーヴェ王国の王太子、セバスチャンとの縁談が決まったらしい。
「この縁談がまとまれば・・・、」
バイル公爵がさらに話を進めようとした時、リーゼは右の手のひらを父に見せて、
「その先は、言わずとも分かっております。」
と言って父を制した。
父と娘は母の見守る中で、互いの目と目で会話をした。
やがて、バイル公爵が
「ふむ、さすがはワシの娘じゃ。」
と言ってうなずいた。リーゼの運命はわずかな時間で決まり、彼女は大陸の政局の大海原に放り出されることになった。
そもそも、バイル公国とレーヴェ王国は、ともにヤード帝国の中の小国であった。バイル公爵もレーヴェ国王も、元々は帝国に忠誠を誓う数多くの諸侯の一つに過ぎなかった。
しかし、帝国の中で内戦が起き、またたく間に帝国は戦国時代へと突入した。バイル公国もレーヴェ王国も、帝国の権威に頼ることはできなくなり、自力で国を守る必要に迫られた。
内戦が始まって数十年、はじめは星の数ほどあった王国、公国、辺境伯領などは20~30に統合されていった。バイル公国もレーヴェ王国も、その数十年を勝ち残った国に入っていた。
だが、両国とも超のつくような名門ではなかった。ともに古くからある家だが、はじめは小国からスタートして、戦乱の時代に乗じて領土を拡大していった。
「レーヴェ王国め、油断ならん国じゃ。」
バイル公爵は常々そう言っていた。帝都の東側に領土を持つバイル公国は、帝都に向けて領土拡大を狙っていた。だが、バイル公国の東側にはレーヴェ王国が領土を拡げており、背後に危険を抱えていた。
「次の狙いは、バイル公国じゃな。」
一方のレーヴェ国王は常々そう言っていた。レーヴェ王国はバイル公国よりも一つだけ、帝都から遠かった。本来なら帝都に乗り込みたいところだが、間に存在するバイル公国が邪魔であった。そこでレーヴェ国王は、バイル公国の領土を虎視眈々と狙っていた。
両国の間には、オスト川という巨大河川が流れていた。そして今、歴史的に対立関係にあった両国が手を組もうとしている。その証として、リーゼはオスト川を渡り、レーヴェ王国に嫁ぐことになったのである。
バイル公爵の話を娘のリーゼは黙って聞いていた。隣のレーヴェ王国の王太子、セバスチャンとの縁談が決まったらしい。
「この縁談がまとまれば・・・、」
バイル公爵がさらに話を進めようとした時、リーゼは右の手のひらを父に見せて、
「その先は、言わずとも分かっております。」
と言って父を制した。
父と娘は母の見守る中で、互いの目と目で会話をした。
やがて、バイル公爵が
「ふむ、さすがはワシの娘じゃ。」
と言ってうなずいた。リーゼの運命はわずかな時間で決まり、彼女は大陸の政局の大海原に放り出されることになった。
そもそも、バイル公国とレーヴェ王国は、ともにヤード帝国の中の小国であった。バイル公爵もレーヴェ国王も、元々は帝国に忠誠を誓う数多くの諸侯の一つに過ぎなかった。
しかし、帝国の中で内戦が起き、またたく間に帝国は戦国時代へと突入した。バイル公国もレーヴェ王国も、帝国の権威に頼ることはできなくなり、自力で国を守る必要に迫られた。
内戦が始まって数十年、はじめは星の数ほどあった王国、公国、辺境伯領などは20~30に統合されていった。バイル公国もレーヴェ王国も、その数十年を勝ち残った国に入っていた。
だが、両国とも超のつくような名門ではなかった。ともに古くからある家だが、はじめは小国からスタートして、戦乱の時代に乗じて領土を拡大していった。
「レーヴェ王国め、油断ならん国じゃ。」
バイル公爵は常々そう言っていた。帝都の東側に領土を持つバイル公国は、帝都に向けて領土拡大を狙っていた。だが、バイル公国の東側にはレーヴェ王国が領土を拡げており、背後に危険を抱えていた。
「次の狙いは、バイル公国じゃな。」
一方のレーヴェ国王は常々そう言っていた。レーヴェ王国はバイル公国よりも一つだけ、帝都から遠かった。本来なら帝都に乗り込みたいところだが、間に存在するバイル公国が邪魔であった。そこでレーヴェ国王は、バイル公国の領土を虎視眈々と狙っていた。
両国の間には、オスト川という巨大河川が流れていた。そして今、歴史的に対立関係にあった両国が手を組もうとしている。その証として、リーゼはオスト川を渡り、レーヴェ王国に嫁ぐことになったのである。
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