社交界で地味な存在だった私が、せっかく結婚できたのに

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第四章

第一話

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それからというもの、ジョセフ王太子とフローレンスは頻繁に会うようになった。互いの家(王太子の場合は王太子宮だが)で食事をしたり、近くの野山に出かけるようになったりした。王太子のテニスにも、フローレンスが付き添うようになり、王宮の中ではほぼ公認の「彼女」になっていた。

王太子はフローレンスと共にいることを喜んでいたし、フローレンスも彼といることで気持ちが満たされていた。

ある日、フローレンスは友人のエミリーとランチに出かけた。王太子と共にいるようになってから、エミリーと会う頻度は少なくなったが、それでも心置きなく話ができる大切な友人だ。

「お付き合いしてから、半年くらいかな?」

エミリーは嬉しそうな顔で、フローレンスに尋ねた。

「そうねえ。もうすぐ、半年になるかな。」

フローレンスも日付を思い出しながら答えた。

「そろそろ、結婚とか言われないの?」

エミリーは興味津々だ。

「いや、どうなんだろ?」

フローレンスは、まだ早いかもと思っていた。

「でも、お付き合いしてるってことは、いずれは?」

エミリーはなおも水を向けてみた。

「そうねえ、まあ、いずれはね。」

フローレンスはつとめて冷静に答えた。だが、喜びを抑えきれないという表情であった。

エミリーは、

「そろそろ、王太子様にも聞いてみたら?」

と聞いてきた。

「聞くって何を?」

フローレンスはそう言いかけて、やめた。さすがに分かりきっていることだ。

「そうね、また聞いてみるわ。」

そう言って、その話題を終わらせた。

それからしばらく経って、王太子とフローレンスは王都の郊外のレストランにいた。何百年も前から建っている教会の、離れを改装したレストランだ。近くを流れる小川で捕れた魚が美味しいところだ。

「ここのお魚、美味しいですわ。」

フローレンスはそう言いながら魚をよばれて、白ワインを飲み干した。この日は少し、ワインを飲むペースが速かった。

食事が進むにつれて、フローレンスはエミリーの言っていたことが気になりはじめた。いや、普段なら一瞬気になってもスグにまあいいやと思えたのだが、この日だけは違った。

「王太子さま」

フローレンスはナイフとフォークを持つ手を止め、おそるおそる口を開いた。

「ん、なんだい?」

王太子は、フローレンスの様子が変わったのには特に気がつかず、単純に質問に答えようとした。

「王太子さま、実は以前から気になっていたことが。」

フローレンスは再び口を開いた。いよいよ2人の将来について王太子に尋ねる時がきた。
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