ラーメン劇場

yuzu.s

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肉団子

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このお店の肉団子は旨い。

ゴルフボールぐらいの大きさの肉団子を
ピーマンや、玉ねぎと一緒に炒め、
甘い餡を絡めて完成。

ただ、なぜかたまにしか注文が入らなかった。

ある日、厨房に21歳の新しい
お兄ちゃん社員が入った。

人見知りなのか、お兄ちゃん社員は
あまりスタッフと話している姿を見なかった。

数日後、休憩室でお兄ちゃん社員と
一緒になり、ふと見ると
賄いの肉団子を食べている最中だった。

私たちアルバイトの賄いは
ラーメンだけだったが、社員は、全ての
メニューを賄いで食べられるらしい。

思わず聞いてしまった。


肉団子、一つください。


って。

快く一つくれた。

味は思っていた通り、ジューシーな
肉団子に甘い餡がからみ、ご飯が進む
一品。

なぜ皆、このメニューを頼まないのか
不思議だった。

それを機に、そのお兄ちゃん社員さんと
会話をするようになった。

奥さんがいて、赤ちゃんが産まれること。
急いで働き先を見つけようと思い、
このラーメン店に就職したこと。

いろんな話しを聞いた。
感じの良い人だった。

ある日、学校の帰りに携帯の着信音が鳴った。

店長からだった。

シフトの相談かと思い、出たくなかったが
思わず出てしまった。

すると、


「新しい社員が夜逃げをした」

「出社しないから心配になり
マンションに行ったら、空になっていた。
電話も繋がらない。
当分、人手が足りないから協力して欲しい」


こんなことが現実にもあるのか。

ただただ驚いた。

肉団子はお兄ちゃん社員の味。
人には様々な考えや事情がある。

今も元気に過ごしていますように。
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