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あぁ、かっこいい
しおりを挟む金属の音を辿っていくと、騎士団が訓練をしていた。軽快な動きで剣を軽々と振り回している屈強な男達に、私は釘づけになった。
…あぁ、かっこいいわ!
私も騎士のように剣を扱えるようになりたい!
いつくるかわからない断罪の日のため、自分の身は自分で守れるようになりたい。平民になったら、私1人になるのだから護身術は学んでおくべきだわ。
「危ない!!」
え?
男の人の焦った声が聞こえ視線をあげると、私に向かって剣が飛んできていた。避けなければ…そう思っても金縛りにあったように体が動かない。
「きゃー!お嬢様!!」
私に向かってくる剣がスローモーションのように見える。
アンナの叫び声が聞こえ…あぁ、私はまた死ぬのかとまるで他人事のように思った。また寿命をまっとうすることができないのね。
しかし、私の前に大きな背中が現れ、キンッという金属音が鳴り、飛んできていた剣は地面に落ちていた。目の前の人が助けてくれたのだと理解した。
「間に合ってよかった。お茶会のお客様ですよね、迷子になられたのですか?」
振り返った男を見て、私は大きく目を見開く。
漆黒の髪と瞳の彼はとても整った顔をしていて、美しさの中に儚さがある。思わず見惚れているとアンナの声で我に返り、90度に頭を下げた。
「勝手に見学して邪魔をしてしまって申し訳ありません!助けていただきありがとうございます!」
「お怪我がなくてよかったです」
そう言って微笑んだ彼の色気に、自分の顔に熱が集まるのがわかった。
同世代の子達に魅力を感じることがなかったけど、前世が18歳だった私は大人の男性に弱いらしい…
彼の名はポール・イングリス、騎士団団長らしい。
どう見てもまだ20歳くらいなのに団長なのは凄すぎない?どちらかいえば体の線は細い方なのに、彼のどこにそんな力が隠れているのだろうか…
イングリス様と話していて楽しくなり、あの息の詰まるお茶会に戻りたくない私は無茶なお願いをしてみた。
「迷惑でなければもう少し見学させていただけないでしょうか?」
「見学ですか…お茶会には戻られなくていいのですか?」
「あのような場があまり得意ではなくて、できれば戻りたくないんです…」
私が縋るような目で見ていると、イングリス様は困った表情をしながらも許してくれた。
やった、王宮騎士の訓練を見れるなんで幸運だわ!
イングリス様に安全な場所に連れて行ってもらい、訓練を見学する。
その間、イングリス様は私の側にいてくれて色々な話をした。イングリス様はとても優しい方で、私が質問をすると丁寧に教えてくれた。
「私が剣を学びたければ、どこに行けばいいですか?」
「へっ!?」
しかし、この質問にイングリス様は驚いた様子で固まってしまった。そして、後ろにいたアンナも同じように目を見開いて固まっている。
「…女騎士はこの国にいないんですか?」
「いるのですがかなり少なく、私も1人しか見たことはありません。…シャルロット様は公爵家の令嬢なので剣を学ばなくても、護衛騎士を付ければいいかと思います」
「自分の身は自分で守りたいんです、いざという時に何もできないのは嫌ですから!」
「…シャルロット様が剣を学びたいなら師匠を雇うことになるかと思います」
公爵様に相談してみては?と続けて言ったイングリス様。知らなかったんだけど、公爵家にも騎士団はいるみたいで、そこから師匠を探すのも手だと教えてもらった。
帰ったら早々にお父様に相談してみないと!
騎士団の訓練を見てひとつでも学ぼうと真剣に見学している私を、イングリス様が優しい目で微笑えんでいたことに私は気がついていなかった。
イングリス様に初心者の私が行った方がいい筋トレを教えてもらい、メニューまで組んでもらった。今日から毎日トレーニングしようと意気込んだ。
どのくらい見学していたのか、ランベール殿下が焦った様子で駆け寄ってきた。その後ろに何人かいて探されていたのが分かった。
「シャルロット、急にいなくなれば心配します」
「あ、ごめんなさい」
私がいなくてもお茶会に問題ないと思っていたのは、間違いだったみたいだ。まさか探されるとは考えてもいなかった…
素直に謝罪すると、ランベール殿は安心したように息を吐いた。
「殿下、シャルロット様このとを私は報告しませんでした。私にも責任があります」
「いや、シャルロットが居心地が悪く逃げ出したのは私の責任だ。イングリスのせいではない」
イングリス様が前に出て、私を庇った。私の我儘でイングリス様に迷惑をかけてしまったこと、胸が痛んだ。
お茶会は既に終わっており、馬車まで殿下に送ってもらうことになった。
騎士団を立ち去る前、イングリス様の服の袖を引き、謝罪をした。イングリス様は全く怒っておらず、気にしないでくださいと言われた。
…気にするよ
「公爵様にお許しがもらえるといいですね、また見学したくなったら私にご連絡ください」
最後まで優しい紳士なイングリス様に、きゅんとした。王宮は来たくないないけど、イングリス様に会えないのは寂しいよ…
イングリス様とわかれて、あからさまに落ち込んでいるとランベール殿下に“シャルロットは年上が好きなのですか?”と聞かれた。
そうだよ!年上が好きで何が悪い!
と言いたいのを抑えて
「イングリス様のような方は素敵だと思います」
と答えた私を褒めて欲しい。
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