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1件目 ご成約
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「幽霊なんているわけない」
今まで考えもしなかったことを考えなければいけないほど頭の中は慌てていた。
けれどいつまでもお客様を持たせるわけにもいかない私は接客を終える為にも席に向かった。
「大変お待たせいたしました。ご注文内容一式のご確認をお願いいたします。そして間違いないようでしたら位牌の原稿作成に移らせていただきますね」
ご夫婦は、この内容で大丈夫ですと確認を終えカバンからゴソゴソとお寺さんから受け取っている戒名の記載されている用紙を取り出した。
「これが母の位牌内容です。作成するにあたり足りない情報はありませんか?」
その用紙をその一言と一緒に出されたことで確信に変わった。
戒名 ◯◯院◯◯◯信女霊位
没年月日 令和◯年◯月◯日
俗名 ◯◯洋子 殿
年齢 享年◯◯歳
完全に女性の内容であり年齢がまさにご夫婦の後ろにいる女性に近い。
(これはもう仕方ない。ひとまず今回の接客を無事に終えよう。)
こういう職業に就いているからか、諦めかはわからないが、あれだけ頭の整理がつかなかったのが嘘のように受け入れることができた。
「確認したい情報は全て記載がありますので大丈夫ですよ。このようなレイアウトになりますのでご確認お願いいたします。」
不思議な出来事の最中なのだが無事に一連の接客が終わりお見送りをしようとした時、
(あっ!!)
私は自分の発言を思い出してしまった。
「お母様もこちらのお仏壇で宜しそうですかね?」
故人様がお母様であったのだから、この言葉は意味が全く違ってしまう!
「本日はお客様はもちろん、故人様にも満足していただけるようなお買い物のお手伝いはできましたでしょうか?」
いつもであれば、お気をつけてお帰りください。で見送って終わりなのだが今日のこの接客は完全に別物だ。
ご夫婦は顔を見合わせ少し笑いながら答えてくれた。
「私たちが仏壇を決めた時に店長さん、お母様もって聞いてくれたじゃないですか?
私たち伝えてないのに何で知ってるんだろ?って席で待ってる時に話していたんです。
もしかして仏壇店の人だから幽霊とか見えてるんじゃないかって」
2人からすると冗談でしかないのだろうが私はぎこちない笑顔をしていたと思う。
「それで主人がカバンの中の用紙が半分見えてることに気づいてコレが見えてたんだ!ってなってさっき笑ってました。」
私は見えていたことにしてその場を乗り切った。
それでも亡くなった母を気にしてくれたことは本当に嬉しかった。
とふざけ話をした後とは思えないほど気持ちを込めて言ってくれた。
「本日は本当にありがとうございました。」
そう言ってご夫婦は退店された。
ドアの前にはお婆様がこちらを向いて微笑んでいる。
私は
(お婆さ、、、いや、洋子様もお気をつけて)
と心で思い会釈をした。
「あなたのような人から娘達はお仏壇を買えて良かったわ。ありがとう。」
「えっ!」
と顔を上げるとそこにお婆様はもういなかった。
やっと特殊な接客が終わったと安心感を感じた矢先に再び驚きが。。。
「声まで聞こえるのかよ!!!」
今まで考えもしなかったことを考えなければいけないほど頭の中は慌てていた。
けれどいつまでもお客様を持たせるわけにもいかない私は接客を終える為にも席に向かった。
「大変お待たせいたしました。ご注文内容一式のご確認をお願いいたします。そして間違いないようでしたら位牌の原稿作成に移らせていただきますね」
ご夫婦は、この内容で大丈夫ですと確認を終えカバンからゴソゴソとお寺さんから受け取っている戒名の記載されている用紙を取り出した。
「これが母の位牌内容です。作成するにあたり足りない情報はありませんか?」
その用紙をその一言と一緒に出されたことで確信に変わった。
戒名 ◯◯院◯◯◯信女霊位
没年月日 令和◯年◯月◯日
俗名 ◯◯洋子 殿
年齢 享年◯◯歳
完全に女性の内容であり年齢がまさにご夫婦の後ろにいる女性に近い。
(これはもう仕方ない。ひとまず今回の接客を無事に終えよう。)
こういう職業に就いているからか、諦めかはわからないが、あれだけ頭の整理がつかなかったのが嘘のように受け入れることができた。
「確認したい情報は全て記載がありますので大丈夫ですよ。このようなレイアウトになりますのでご確認お願いいたします。」
不思議な出来事の最中なのだが無事に一連の接客が終わりお見送りをしようとした時、
(あっ!!)
私は自分の発言を思い出してしまった。
「お母様もこちらのお仏壇で宜しそうですかね?」
故人様がお母様であったのだから、この言葉は意味が全く違ってしまう!
「本日はお客様はもちろん、故人様にも満足していただけるようなお買い物のお手伝いはできましたでしょうか?」
いつもであれば、お気をつけてお帰りください。で見送って終わりなのだが今日のこの接客は完全に別物だ。
ご夫婦は顔を見合わせ少し笑いながら答えてくれた。
「私たちが仏壇を決めた時に店長さん、お母様もって聞いてくれたじゃないですか?
私たち伝えてないのに何で知ってるんだろ?って席で待ってる時に話していたんです。
もしかして仏壇店の人だから幽霊とか見えてるんじゃないかって」
2人からすると冗談でしかないのだろうが私はぎこちない笑顔をしていたと思う。
「それで主人がカバンの中の用紙が半分見えてることに気づいてコレが見えてたんだ!ってなってさっき笑ってました。」
私は見えていたことにしてその場を乗り切った。
それでも亡くなった母を気にしてくれたことは本当に嬉しかった。
とふざけ話をした後とは思えないほど気持ちを込めて言ってくれた。
「本日は本当にありがとうございました。」
そう言ってご夫婦は退店された。
ドアの前にはお婆様がこちらを向いて微笑んでいる。
私は
(お婆さ、、、いや、洋子様もお気をつけて)
と心で思い会釈をした。
「あなたのような人から娘達はお仏壇を買えて良かったわ。ありがとう。」
「えっ!」
と顔を上げるとそこにお婆様はもういなかった。
やっと特殊な接客が終わったと安心感を感じた矢先に再び驚きが。。。
「声まで聞こえるのかよ!!!」
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