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プラスアルファ4.5
タノサト山のタケノコ
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「竹、か……」
「ええ。タケノコの生える山にのみ生える木です。タケノコが成長するとコレになるのですよ」
竹。通常の木とは色々な面で異なる木だ。
今のところ明確な利用法などは見出されていないが、独特の形に美を見出す魔族もいるという。
「タケノコは食べられるのに、竹は食べられないんだね」
「そうだな。理不尽だが、そういうものだ」
ニノの呟きに、ファイネルが深刻そうに答える。
実際に竹を食べる試みもされたらしいのだが、諦めたほうがいいというのが結論となったらしい。
少しだけ心が通じた様子の二人にしかし、ヴェルムドールは首をひねる。
「理不尽……か……?」
確かにタケノコが竹になると食べられないが、理不尽とまで言う程だっただろうか。
答えを求めてイチカを見ると、イチカは静かに首を横に振る。
放っておけ、という意味のようだ。
そうしていると、ヴェルムドールはニノに裾を引っ張られる。
「魔王様もそう思うよね?」
「ん!? 俺か?」
気付けば先頭を歩いていたファイネルも足を止めて振り返っているのを見て、ヴェルムドールは返答に詰まる。
そこまで理不尽とは思わないのだが、どうも同意を求めているらしい雰囲気なのは分かる。
ニノとファイネルにじっと見つめられて、ヴェルムドールは目をそっと逸らす。
「ん……まあ、なんだ。そう、かもな……」
そんな曖昧な返答にもとりあえず満足したのか、ファイネルは再び歩き出す。
確かに竹に利用目的を見出すというのは素晴らしいが、そもそも普通の木ですら利用目的が限定されているので、それこそ観賞用くらいだろうなあ……とヴェルムドールは思う。
だから、タケノコのままでいてほしいという考えだって理解はできる。
理解は出来るが……それは流石に難しいのではないか、とヴェルムドールは考え……ふと、思いつく。
「ニノ。お前の緑の魔眼で成長抑制とかは出来ないのか?」
植物操作が可能な緑の魔眼ならば、あるいはタケノコの成長を抑えることも出来るのではないか、とヴェルムドールは考える。
しかし、ニノはそれを聞いて悲しそうに首を横に振る。
「緑の魔眼だと、成長促進は出来ても抑制は出来ない。あの風の大神殿にあった木は成長が止まってたけど、あれはそもそも植物かどうかもよく分からない気がする。たぶん、まともな手段じゃ抑制するっていうのは無理なんだと思う」
「ん、そうか」
「うん」
自分の腕に絡みついてくるニノを見下ろしながら、ヴェルムドールは考える。
植物操作に関しては、ザダーク王国ではニノ以上の専門家は居ない。
ニノが無理と言うのであれば、それは確かに無理なのだろう。
「なるほどな」
ヴェルムドールがそう呟いた、その時。
ファイネルが、何かにピクリと反応した。
ほぼ同時に、イチカとニノも何かに反応する。
「……ああ、いるな」
考え事に没頭していたヴェルムドールも、やや遅れてソレに気付く。
ヴェルムドールの魔力感知に、何かが引っ掛かっている。
小さいながら、それなりの魔力を秘めた小型の何か。
「タケノコか?」
「恐らくは、そうでしょう」
やがて聞こえてくるガサガサという竹を揺らす音。
それは段々と増えていき、複数方向から囲むように聞こえてくる。
「集まってきたようですね」
ファイネルは拳を構え、イチカとニノは剣を鞘から引き抜く。
この中で、ファイネルだけが素手だ。
それはファイネルが魔法拳士という特殊な職業であり、世界で唯一の完成形であるからだ。
通常の魔法拳士と呼ばれる者達は魔法剣士同様に、魔法拳と呼ばれる籠手やガントレットなどに魔力を込め使用する。
これは変換された魔力が身体を傷つけるのを防ぐためであり、克服できない点であるとされている。
しかし、ファイネルは不可能とされたソレを超えた。
ファイネルの独自魔法である雷刃もその応用であり、ヴェルムドールもこっそり使ってはいるのだが、そのヴェルムドールにもそれを素手での魔法拳に応用させるところまでは辿り着いていない。
そう、ファイネルは戦闘の天才なのである。
だからこそ、背後から飛んできたタケノコもファイネルの不意をつくには至らない。
「無駄だ」
ファイネルの拳に火が宿り、飛んできたタケノコに叩きつけられる。
それと同時に、タケノコに叩き込まれた火の魔力がタケノコを蹂躙し、ただそれだけでタケノコは真っ黒な炭となって崩れ落ちた。
それに触発されたわけではないだろうが、四方を囲んで飛んでいたタケノコ達が、ヴェルムドール達の頭上へと終結していく。
「どうする。魔法で消し飛ばすか?」
「いいえ、必要ありません」
ヴェルムドールに、ファイネルはそう言って笑う。
拳を握り、頭上のタケノコ達を見上げる。
「アレはやはり、ただのタケノコです。ヴェルムドール様が出る必要など、ありません」
「そうか。なら、任せる」
「はい。お任せください」
頷くファイネルへ向けて、五つのタケノコが合体した槍の群れが降り注ぐ。
東方軍の兵士に撤退を決意させたソレは、見た目の奇抜さに反して威力が高い。
これはタケノコ自体に含まれた魔力が高いためで、言うなればタケノコ自体が一種の魔法剣のようなものと化しているのだ。
だが、それはあくまで「魔法剣のようなもの」であって、魔法剣ではない。
ましてや、ファイネルの魔法拳に対抗できるようなものではない。
タケノコの槍たちが着弾したその跡には、砕けたタケノコの群れと……そこから離脱しようと飛翔するタケノコを掴むファイネルの姿のみがある。
「やはり、ただのタケノコだな……。威力はともかく、防御が一切強化されていない。まだ魔樹のほうが手強いぞ」
ファイネルは掴んだタケノコを見下ろすと、ヴェルムドールにそのタケノコを向けてみせる。
「このタケノコ、いかがなさいますか? 魔王様ならば食べても問題ないと思いますが」
魔力異常を引き起こした農作物は、訳あり品として扱われる。
具体的には輸出用でも一般販売用でもないものとなるのだが……これには訳がある。
魔力異常を引き起こした農作物は、魔力の含有度が非常に高い。
こうなった作物を魔力過剰品と呼ぶが、これは魔族でも食べると身体に異常をきたしてしまうような代物でもある。
勿論、それに耐えられる者であればそういった事態にはならない。
そして、このタケノコは通常の魔力過剰品よりも更に高い魔力を秘めていることは間違いない。
つまり、魔王に献上する品としては最適であるとも言える。
しかし、ヴェルムドールはそれを見て少しだけ嫌そうな顔をする。
「あ、ああ。そうだな。確かにそれなら素晴らしい魔力を」
「クッ……タケニナルユメモカナワズ、コンナバショデメイウンツキルカ……!」
ファイネルの手の中で喋り始めたタケノコを見て、ヴェルムドールの言葉が中断される。
喋るとは聞いていたが、目の前で聞くとシュールにも程がある。
本気で魔族ではないのか疑いたくなる。
「なあ、ファイネル。それは……」
「野菜です」
言い切るファイネルにヴェルムドールは反論せず、黙ってステータス確認の魔法を発動する。
名前:タノサト山の美味しいタケノコ
種族:タケノコ(魔力過剰)
ランク:A
職業:野菜
装備:
タケノコの皮
「野菜、だな……」
「野菜です」
頷くファイネルに、ヴェルムドールはもはや反論の言葉をもたない。
色々と納得はいかないが確かにタケノコだし、野菜である。
はたして野菜は職業でいいのか疑問は残るが、確かに野菜だ。
「しかし、どう調理しましょうか。現地の部隊が鍋か何かを持っているとよいのですが」
「焼いても美味しいよ」
「クッ、ワタシヲナブルカ。ゲドウドモメ……!」
ファイネルとニノは全く気にせずタケノコの調理方法について話し合っているが、ヴェルムドールはドン引きである。
そんなヴェルムドールの様子を見ていたイチカは、黙ってファイネルの手から喋り続けるタケノコをとる。
「ん、どうした?」
ファイネルには答えず、イチカはタケノコに向けて剣を構える。
「いい加減黙りなさい、このクズ野菜が」
「グファッ!」
イチカの剣がタケノコの穂先を切り取り、タケノコは断末魔をあげて沈黙する。
ようやく静かになったタケノコを確認すると、イチカはファイネルの手にタケノコを戻す。
「タケノコの鳴き声がヴェルムドール様の気分を害しています。収穫したら手早く処置すべきでしょう」
「ん、ああ。まあ、そうだな」
ファイネルが頷いたのを見て、イチカは溜息をつく。
「まったく……。それで、このクズ野菜はあとどれだけあるのですか?」
「あ、いや。分からん。だから見つけた端から殲滅していこうと思っていたのだが」
「ニノを使えばいいでしょう。緑の魔眼を使えば難しくは無いはずです」
「あ、うん。そう……だな」
「何がそうだな、ですか。もっとシャキッとしないと、タケノコと一緒に煮込みますよ」
ジリジリとファイネルを追いつめていくイチカの肩に、ヴェルムドールが遠慮がちに手を置く。
「あー、イチカ。そのくらいで、な。東方軍には東方軍のやり方があるんだ」
「ヴェルムドール様の優しさには感服するばかりです、が。臨機応変に動くことを放棄する理由にはなっておりません。ただでさえファイネルは大雑把なのですから、その辺りをもっとしっかりしなければなりません」
「うん、分かってる。そこは本人も分かってるから、な? ほら、ファイネルが脅えてるから」
ヴェルムドールの陰に隠れているファイネルをイチカは無表情なまま睨み付けるが、やがて大きく溜息をつく。
「……そうですね。ここで時間を使うのも、もったいないです。この話の続きはまた今度にしましょう」
何故かニノもファイネルと一緒になってヴェルムドールに張り付いているが、そんな二人から引き剥がすようにイチカはヴェルムドールの手を引く。
「さあ、早く終わらせてしまいましょう。タケノコの調理にだって、それなりに時間がかかるのですよ?」
そうして開始されたイチカの指揮により、タノサト山のタケノコ達は早々に殲滅されたのであった。
これが、タノサト山での魔力異常事案の結末である。
************************************************
竹を食べる方法は、実はあるとかいう話も聞きました。
竹を食べる動物はいるんだから、確かに食べられないこともないのでしょうか。
あ、次回は再びロクナ主役です。
「ええ。タケノコの生える山にのみ生える木です。タケノコが成長するとコレになるのですよ」
竹。通常の木とは色々な面で異なる木だ。
今のところ明確な利用法などは見出されていないが、独特の形に美を見出す魔族もいるという。
「タケノコは食べられるのに、竹は食べられないんだね」
「そうだな。理不尽だが、そういうものだ」
ニノの呟きに、ファイネルが深刻そうに答える。
実際に竹を食べる試みもされたらしいのだが、諦めたほうがいいというのが結論となったらしい。
少しだけ心が通じた様子の二人にしかし、ヴェルムドールは首をひねる。
「理不尽……か……?」
確かにタケノコが竹になると食べられないが、理不尽とまで言う程だっただろうか。
答えを求めてイチカを見ると、イチカは静かに首を横に振る。
放っておけ、という意味のようだ。
そうしていると、ヴェルムドールはニノに裾を引っ張られる。
「魔王様もそう思うよね?」
「ん!? 俺か?」
気付けば先頭を歩いていたファイネルも足を止めて振り返っているのを見て、ヴェルムドールは返答に詰まる。
そこまで理不尽とは思わないのだが、どうも同意を求めているらしい雰囲気なのは分かる。
ニノとファイネルにじっと見つめられて、ヴェルムドールは目をそっと逸らす。
「ん……まあ、なんだ。そう、かもな……」
そんな曖昧な返答にもとりあえず満足したのか、ファイネルは再び歩き出す。
確かに竹に利用目的を見出すというのは素晴らしいが、そもそも普通の木ですら利用目的が限定されているので、それこそ観賞用くらいだろうなあ……とヴェルムドールは思う。
だから、タケノコのままでいてほしいという考えだって理解はできる。
理解は出来るが……それは流石に難しいのではないか、とヴェルムドールは考え……ふと、思いつく。
「ニノ。お前の緑の魔眼で成長抑制とかは出来ないのか?」
植物操作が可能な緑の魔眼ならば、あるいはタケノコの成長を抑えることも出来るのではないか、とヴェルムドールは考える。
しかし、ニノはそれを聞いて悲しそうに首を横に振る。
「緑の魔眼だと、成長促進は出来ても抑制は出来ない。あの風の大神殿にあった木は成長が止まってたけど、あれはそもそも植物かどうかもよく分からない気がする。たぶん、まともな手段じゃ抑制するっていうのは無理なんだと思う」
「ん、そうか」
「うん」
自分の腕に絡みついてくるニノを見下ろしながら、ヴェルムドールは考える。
植物操作に関しては、ザダーク王国ではニノ以上の専門家は居ない。
ニノが無理と言うのであれば、それは確かに無理なのだろう。
「なるほどな」
ヴェルムドールがそう呟いた、その時。
ファイネルが、何かにピクリと反応した。
ほぼ同時に、イチカとニノも何かに反応する。
「……ああ、いるな」
考え事に没頭していたヴェルムドールも、やや遅れてソレに気付く。
ヴェルムドールの魔力感知に、何かが引っ掛かっている。
小さいながら、それなりの魔力を秘めた小型の何か。
「タケノコか?」
「恐らくは、そうでしょう」
やがて聞こえてくるガサガサという竹を揺らす音。
それは段々と増えていき、複数方向から囲むように聞こえてくる。
「集まってきたようですね」
ファイネルは拳を構え、イチカとニノは剣を鞘から引き抜く。
この中で、ファイネルだけが素手だ。
それはファイネルが魔法拳士という特殊な職業であり、世界で唯一の完成形であるからだ。
通常の魔法拳士と呼ばれる者達は魔法剣士同様に、魔法拳と呼ばれる籠手やガントレットなどに魔力を込め使用する。
これは変換された魔力が身体を傷つけるのを防ぐためであり、克服できない点であるとされている。
しかし、ファイネルは不可能とされたソレを超えた。
ファイネルの独自魔法である雷刃もその応用であり、ヴェルムドールもこっそり使ってはいるのだが、そのヴェルムドールにもそれを素手での魔法拳に応用させるところまでは辿り着いていない。
そう、ファイネルは戦闘の天才なのである。
だからこそ、背後から飛んできたタケノコもファイネルの不意をつくには至らない。
「無駄だ」
ファイネルの拳に火が宿り、飛んできたタケノコに叩きつけられる。
それと同時に、タケノコに叩き込まれた火の魔力がタケノコを蹂躙し、ただそれだけでタケノコは真っ黒な炭となって崩れ落ちた。
それに触発されたわけではないだろうが、四方を囲んで飛んでいたタケノコ達が、ヴェルムドール達の頭上へと終結していく。
「どうする。魔法で消し飛ばすか?」
「いいえ、必要ありません」
ヴェルムドールに、ファイネルはそう言って笑う。
拳を握り、頭上のタケノコ達を見上げる。
「アレはやはり、ただのタケノコです。ヴェルムドール様が出る必要など、ありません」
「そうか。なら、任せる」
「はい。お任せください」
頷くファイネルへ向けて、五つのタケノコが合体した槍の群れが降り注ぐ。
東方軍の兵士に撤退を決意させたソレは、見た目の奇抜さに反して威力が高い。
これはタケノコ自体に含まれた魔力が高いためで、言うなればタケノコ自体が一種の魔法剣のようなものと化しているのだ。
だが、それはあくまで「魔法剣のようなもの」であって、魔法剣ではない。
ましてや、ファイネルの魔法拳に対抗できるようなものではない。
タケノコの槍たちが着弾したその跡には、砕けたタケノコの群れと……そこから離脱しようと飛翔するタケノコを掴むファイネルの姿のみがある。
「やはり、ただのタケノコだな……。威力はともかく、防御が一切強化されていない。まだ魔樹のほうが手強いぞ」
ファイネルは掴んだタケノコを見下ろすと、ヴェルムドールにそのタケノコを向けてみせる。
「このタケノコ、いかがなさいますか? 魔王様ならば食べても問題ないと思いますが」
魔力異常を引き起こした農作物は、訳あり品として扱われる。
具体的には輸出用でも一般販売用でもないものとなるのだが……これには訳がある。
魔力異常を引き起こした農作物は、魔力の含有度が非常に高い。
こうなった作物を魔力過剰品と呼ぶが、これは魔族でも食べると身体に異常をきたしてしまうような代物でもある。
勿論、それに耐えられる者であればそういった事態にはならない。
そして、このタケノコは通常の魔力過剰品よりも更に高い魔力を秘めていることは間違いない。
つまり、魔王に献上する品としては最適であるとも言える。
しかし、ヴェルムドールはそれを見て少しだけ嫌そうな顔をする。
「あ、ああ。そうだな。確かにそれなら素晴らしい魔力を」
「クッ……タケニナルユメモカナワズ、コンナバショデメイウンツキルカ……!」
ファイネルの手の中で喋り始めたタケノコを見て、ヴェルムドールの言葉が中断される。
喋るとは聞いていたが、目の前で聞くとシュールにも程がある。
本気で魔族ではないのか疑いたくなる。
「なあ、ファイネル。それは……」
「野菜です」
言い切るファイネルにヴェルムドールは反論せず、黙ってステータス確認の魔法を発動する。
名前:タノサト山の美味しいタケノコ
種族:タケノコ(魔力過剰)
ランク:A
職業:野菜
装備:
タケノコの皮
「野菜、だな……」
「野菜です」
頷くファイネルに、ヴェルムドールはもはや反論の言葉をもたない。
色々と納得はいかないが確かにタケノコだし、野菜である。
はたして野菜は職業でいいのか疑問は残るが、確かに野菜だ。
「しかし、どう調理しましょうか。現地の部隊が鍋か何かを持っているとよいのですが」
「焼いても美味しいよ」
「クッ、ワタシヲナブルカ。ゲドウドモメ……!」
ファイネルとニノは全く気にせずタケノコの調理方法について話し合っているが、ヴェルムドールはドン引きである。
そんなヴェルムドールの様子を見ていたイチカは、黙ってファイネルの手から喋り続けるタケノコをとる。
「ん、どうした?」
ファイネルには答えず、イチカはタケノコに向けて剣を構える。
「いい加減黙りなさい、このクズ野菜が」
「グファッ!」
イチカの剣がタケノコの穂先を切り取り、タケノコは断末魔をあげて沈黙する。
ようやく静かになったタケノコを確認すると、イチカはファイネルの手にタケノコを戻す。
「タケノコの鳴き声がヴェルムドール様の気分を害しています。収穫したら手早く処置すべきでしょう」
「ん、ああ。まあ、そうだな」
ファイネルが頷いたのを見て、イチカは溜息をつく。
「まったく……。それで、このクズ野菜はあとどれだけあるのですか?」
「あ、いや。分からん。だから見つけた端から殲滅していこうと思っていたのだが」
「ニノを使えばいいでしょう。緑の魔眼を使えば難しくは無いはずです」
「あ、うん。そう……だな」
「何がそうだな、ですか。もっとシャキッとしないと、タケノコと一緒に煮込みますよ」
ジリジリとファイネルを追いつめていくイチカの肩に、ヴェルムドールが遠慮がちに手を置く。
「あー、イチカ。そのくらいで、な。東方軍には東方軍のやり方があるんだ」
「ヴェルムドール様の優しさには感服するばかりです、が。臨機応変に動くことを放棄する理由にはなっておりません。ただでさえファイネルは大雑把なのですから、その辺りをもっとしっかりしなければなりません」
「うん、分かってる。そこは本人も分かってるから、な? ほら、ファイネルが脅えてるから」
ヴェルムドールの陰に隠れているファイネルをイチカは無表情なまま睨み付けるが、やがて大きく溜息をつく。
「……そうですね。ここで時間を使うのも、もったいないです。この話の続きはまた今度にしましょう」
何故かニノもファイネルと一緒になってヴェルムドールに張り付いているが、そんな二人から引き剥がすようにイチカはヴェルムドールの手を引く。
「さあ、早く終わらせてしまいましょう。タケノコの調理にだって、それなりに時間がかかるのですよ?」
そうして開始されたイチカの指揮により、タノサト山のタケノコ達は早々に殲滅されたのであった。
これが、タノサト山での魔力異常事案の結末である。
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竹を食べる方法は、実はあるとかいう話も聞きました。
竹を食べる動物はいるんだから、確かに食べられないこともないのでしょうか。
あ、次回は再びロクナ主役です。
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