250 / 681
連載
その先に光はあるか19
しおりを挟む
アウロックが久々に気持ち悪いです。
あらかじめ、ごめんなさい。
********************************************
ニノは恋人なのか。
その質問に、アウロックの顔は歓喜で赤く染まる。
その瞬間にマーロゥの顔が少し青くなるが、その間にも普段動かないアウロックの思考は全力稼動を始める。
心情としては、ここで「その通り」と答えたい。
自分こそがニノの恋人であると全世界に宣言したい。
しかしながら、それは事実ではない。
無論宣言して外堀を埋め既成事実にしてしまうという手もある。
しかし、そんなことをすれば物理的に埋まるのは自分であることも分かっている。
ここでマーロゥにだけそれを言うという手もあるにはあるが、何処に目があるか分からない。
何かの拍子にマーロゥがポロっと漏らしでもしたら、アウロックの命が割と本気で危ない。
ただでさえ最近、ジオル森王国でネファスとかいうクソガキがニノにしつこくアプローチをかけているという情報もある。
とんでもないガキである。
ニノの番……もとい伴侶となって未来に強い子孫を作るのはすでにビスティアという枠を飛び越えて魔獣となった自分以外にはありえない。
それは勿論、ラクターのような理不尽極まりない強さを持った相手と比べれば弱いという自覚はアウロックにもある。
鍛えてやるとか寝言を言いながら喜んで襲ってくるので口が裂けても言わないが、やがて超えてやろうという意思はある。
そうなればもう、ニノとて自分に惚れるだろうという自信もある。
勿論根拠は無い。
こんなことを考えていると知れた時点でニノにウザいとボコられそうでもある。
その未来が簡単に見えてアウロックの顔がすっと青くなると、マーロゥがオロオロとし始める。
「あ、あの……何か変なこと聞いちゃいましたか?」
変なこと。
何も変なことではない。
アウロックのニノに対する気持ちは純粋である。
純粋に強いニノに惚れただけである。
あのグディオンとかいうデカブツみたいにボコられて踏まれる度に何か嬉しそうな変態とはワケが違う。
思い出したらちょっと寒気がしてきたが、それがニノなりの好意の示し方だとしたらどうだろう。
「……なあ。好きな人のことって、踏みたくなるものかな」
「え、ええっ!?」
真面目な顔で聞かれてマーロゥのウサギ耳がピーンと立つ。
全く意味が分からなかった。
分からないが、分からないなりに考えて。
顔を赤くしたり青くしたりしながら、マーロゥはぐっと拳を握る。
「そ、そういうのはよく分からないですけど……私、頑張ります!」
「ん、そうか」
どうやら理解されがたい方向性らしい。
マーロゥが何を頑張るのかは分からないが、頑張るのはいいことだろうとアウロックは勝手に納得する。
となると、いくら思考の読みにくいニノでも「そういう嗜好」という可能性は低いだろう。
ならば、グディオンに可能性は無いな……ざまあみろ、とアウロックはニヤリと笑う。自分の可能性もゼロであることは考慮していない。
その笑みを見てマーロゥが顔を赤く染めているが、アウロックの視界には入っていない。
アウロックの頭の中にあるのは、この場でするべき最高の回答についてである。
「……」
「あ、アウロックさん……」
何処か遠い目……勿論遠くのニノを想う目だが、それが偶然マーロゥの視線と合う。
自分の奥底を見通すような目にマーロゥの胸が慌しく鳴り、しかし目を逸らせずマーロゥはアウロックの瞳を見つめ返す。
まさか、自分が全く視界に入っていないとは思いもしないだろう。
しばらく無言の時間が続き……ようやく台詞を思いついたアウロックは、カッコつけるようにその台詞を口にする。
「想像に任せ……ん?」
気付けば、視界にマーロゥがいない。
気配はあるのだからいるはず……と考えてキョロキョロと辺りを見回したアウロックは、壁に手をついてぷるぷる震えているマーロゥを見つける。
「……どうした? 具合でも悪いのか?」
「だ、大丈夫でひゅっ。ちょ、ちょっとだけ待ってくださいっ!」
「お、おう。それはいいけどよ、キツいようなら」
アウロックがマーロゥの肩に触れると、マーロゥはひゃあーと叫んで壁にぺったりと張り付いてしまう。
「……うーん。えい」
「ぴゃあああっ!」
少し考えたアウロックはマーロゥをべりっと壁から剥がすと、その腕に抱え込む。
「よく分からんが、大分時間もくってるし……運ぶぞ」
「ま、待ってくだひゃいっ」
「待ちたいけどなあ。あんまし時間かけて何処かに連中が行っても面倒だ」
そう言うと、アウロックは走り出そうとし……マーロゥはキャーと叫んでアウロックの腕の中から慌てて降りる。
「らいひょうぶふぇすひゃら! 大丈夫でしゅから!」
「……あんまり大丈夫でもなさそうなんだが」
「大丈夫です!」
顔を真っ赤にして力説するマーロゥに、アウロックはそうかと頷く。
ついでに、今日は早めに休ませようとも考える。
「んじゃ、裏門行くか」
「はい!」
色々思考がズレたら元に戻ったアウロックと、思考がグルグル回ってテンションも上がったマーロゥは、裏門に向けて急ぎ足で向かっていく。
そんな二人の近くを、行商人の馬車がガラガラと音を立てて通り過ぎていく。
お昼時を大分過ぎた街の喧騒は少しだけ静かになり……しかし、街の人々の一日はまだまだこれからである。
************************************************
「思考における可能性の自己呈示」というものは、あくまで私見ですが「ありえない可能性」は意図しなければ無意識に排除している気もします。
何を言いたいかというとまあ、今回のアウロックの気持ち悪さはそういうことです。
あらかじめ、ごめんなさい。
********************************************
ニノは恋人なのか。
その質問に、アウロックの顔は歓喜で赤く染まる。
その瞬間にマーロゥの顔が少し青くなるが、その間にも普段動かないアウロックの思考は全力稼動を始める。
心情としては、ここで「その通り」と答えたい。
自分こそがニノの恋人であると全世界に宣言したい。
しかしながら、それは事実ではない。
無論宣言して外堀を埋め既成事実にしてしまうという手もある。
しかし、そんなことをすれば物理的に埋まるのは自分であることも分かっている。
ここでマーロゥにだけそれを言うという手もあるにはあるが、何処に目があるか分からない。
何かの拍子にマーロゥがポロっと漏らしでもしたら、アウロックの命が割と本気で危ない。
ただでさえ最近、ジオル森王国でネファスとかいうクソガキがニノにしつこくアプローチをかけているという情報もある。
とんでもないガキである。
ニノの番……もとい伴侶となって未来に強い子孫を作るのはすでにビスティアという枠を飛び越えて魔獣となった自分以外にはありえない。
それは勿論、ラクターのような理不尽極まりない強さを持った相手と比べれば弱いという自覚はアウロックにもある。
鍛えてやるとか寝言を言いながら喜んで襲ってくるので口が裂けても言わないが、やがて超えてやろうという意思はある。
そうなればもう、ニノとて自分に惚れるだろうという自信もある。
勿論根拠は無い。
こんなことを考えていると知れた時点でニノにウザいとボコられそうでもある。
その未来が簡単に見えてアウロックの顔がすっと青くなると、マーロゥがオロオロとし始める。
「あ、あの……何か変なこと聞いちゃいましたか?」
変なこと。
何も変なことではない。
アウロックのニノに対する気持ちは純粋である。
純粋に強いニノに惚れただけである。
あのグディオンとかいうデカブツみたいにボコられて踏まれる度に何か嬉しそうな変態とはワケが違う。
思い出したらちょっと寒気がしてきたが、それがニノなりの好意の示し方だとしたらどうだろう。
「……なあ。好きな人のことって、踏みたくなるものかな」
「え、ええっ!?」
真面目な顔で聞かれてマーロゥのウサギ耳がピーンと立つ。
全く意味が分からなかった。
分からないが、分からないなりに考えて。
顔を赤くしたり青くしたりしながら、マーロゥはぐっと拳を握る。
「そ、そういうのはよく分からないですけど……私、頑張ります!」
「ん、そうか」
どうやら理解されがたい方向性らしい。
マーロゥが何を頑張るのかは分からないが、頑張るのはいいことだろうとアウロックは勝手に納得する。
となると、いくら思考の読みにくいニノでも「そういう嗜好」という可能性は低いだろう。
ならば、グディオンに可能性は無いな……ざまあみろ、とアウロックはニヤリと笑う。自分の可能性もゼロであることは考慮していない。
その笑みを見てマーロゥが顔を赤く染めているが、アウロックの視界には入っていない。
アウロックの頭の中にあるのは、この場でするべき最高の回答についてである。
「……」
「あ、アウロックさん……」
何処か遠い目……勿論遠くのニノを想う目だが、それが偶然マーロゥの視線と合う。
自分の奥底を見通すような目にマーロゥの胸が慌しく鳴り、しかし目を逸らせずマーロゥはアウロックの瞳を見つめ返す。
まさか、自分が全く視界に入っていないとは思いもしないだろう。
しばらく無言の時間が続き……ようやく台詞を思いついたアウロックは、カッコつけるようにその台詞を口にする。
「想像に任せ……ん?」
気付けば、視界にマーロゥがいない。
気配はあるのだからいるはず……と考えてキョロキョロと辺りを見回したアウロックは、壁に手をついてぷるぷる震えているマーロゥを見つける。
「……どうした? 具合でも悪いのか?」
「だ、大丈夫でひゅっ。ちょ、ちょっとだけ待ってくださいっ!」
「お、おう。それはいいけどよ、キツいようなら」
アウロックがマーロゥの肩に触れると、マーロゥはひゃあーと叫んで壁にぺったりと張り付いてしまう。
「……うーん。えい」
「ぴゃあああっ!」
少し考えたアウロックはマーロゥをべりっと壁から剥がすと、その腕に抱え込む。
「よく分からんが、大分時間もくってるし……運ぶぞ」
「ま、待ってくだひゃいっ」
「待ちたいけどなあ。あんまし時間かけて何処かに連中が行っても面倒だ」
そう言うと、アウロックは走り出そうとし……マーロゥはキャーと叫んでアウロックの腕の中から慌てて降りる。
「らいひょうぶふぇすひゃら! 大丈夫でしゅから!」
「……あんまり大丈夫でもなさそうなんだが」
「大丈夫です!」
顔を真っ赤にして力説するマーロゥに、アウロックはそうかと頷く。
ついでに、今日は早めに休ませようとも考える。
「んじゃ、裏門行くか」
「はい!」
色々思考がズレたら元に戻ったアウロックと、思考がグルグル回ってテンションも上がったマーロゥは、裏門に向けて急ぎ足で向かっていく。
そんな二人の近くを、行商人の馬車がガラガラと音を立てて通り過ぎていく。
お昼時を大分過ぎた街の喧騒は少しだけ静かになり……しかし、街の人々の一日はまだまだこれからである。
************************************************
「思考における可能性の自己呈示」というものは、あくまで私見ですが「ありえない可能性」は意図しなければ無意識に排除している気もします。
何を言いたいかというとまあ、今回のアウロックの気持ち悪さはそういうことです。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。