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魔剣技12
しおりを挟む「そう、ですね……。では、サンクリードさんとご一緒します」
「ほう」
意外そうな声をあげるサンクリードに、シュナは苦笑する。
まあ、当然の反応ではあるだろう。
普通の人類であれば、同じ人類のカインを心情的に選びたくなるのが当然というものだからだ。
無論、それであるが故に「公平」を自称するギルド職員としてのプライドがサンクリードを選ばせたとも言える。
「見た感じ、サンクリードさんはこちらの常識を超えた突飛な行動をされますから。私がキッチリ見張ってないといけません」
「そうか」
何故か納得したような顔をして頷いているカインと違い、サンクリードは面白そうな顔をしているのが気になったが……とりあえず異論も出なかったので、シュナはほっとする。
「それより、どうして分散を? 纏まっていた方が安全なのでは」
「安全だから……ですかね?」
シュナの疑問に、カインが答える。
そう、安全なのだ。
サンクリードもカインも、驕りではなく強い。
そして強さというものは一定以上の者か死を極度に恐れる者には自然と伝わってしまうことがある。
今回の黒狼の場合、この村の惨劇を考えても「一定以上」であることは間違いない。
だが同時に、「群れて力を増す」ことや「力の強い個体に従う」といった生き残る為の手段をも貪欲に取り込む「死を恐れる」性質も持っている。
つまり、明らかな強者であるサンクリードとカインが揃った状況では襲ってこないのでは……と考えたのだ。
「……まさか、此処にいると考えていらっしゃるんですか?」
「恐らくは、な」
「そうですね」
そう言ってサンクリードとカインが見るのは、シュナだ。
その視線の意味を考えて……シュナは、ええっと声をあげて自分を指差す。
「ま、まさか私を狙ってるとか!?」
「時折だが、視線を感じることがある。俺とカインよりは、お前を狙いやすいと考えているだろうな。試しに一人になってみるか? 喜んで襲ってくるかもしれんぞ」
「ちょっと、サンクリードさん」
カインが怖がらせすぎだと抗議の声をあげるが、シュナとしてはそれどころではない。
この村をこうした黒狼と思われる相手が……しかも、こんなわけの分からない状況を作り出す相手が、自分を狙っているかもしれないのだ。
冗談ではない、と思う。
自慢ではないが、シュナは然程強くない。
短かった現役時代でも前衛が得意だったとは言い難い。
そんな自分が最優先で狙われていると言われて、落ち着いていられるわけがない。
そわそわしながら、シュナはサンクリードの背後に隠れ……少し考えて右、左、前とクルクル回り始める。
「どうした?」
「え? いや、その。どの位置が一番安全かなって」
背後にいたとして、正面から襲ってくるとは限らない以上後ろからガブリとされるかもしれない。
前にいたとして、サンクリードの邪魔になればガブリとされるかもしれない。
ならば右はどうか。
左はどうか。
そう考えた結果クルクルと回っていたのだが、そんなシュナの額をサンクリードは軽く突く。
「何処に居ても同じだ。守ってやるから、好きな場所にいろ」
「ぜ、絶対ですか!?」
「ああ」
ふうー、と安心したように溜息をついたシュナはサンクリードの左隣に立ち……カインが、その様子に頷いてみせる。
「それじゃあひと段落したところで……どうします?」
「そうだな。俺が二階に行こう」
「理由を聞いても?」
カインが問うと、サンクリードは肩を竦めてみせる。
「簡単だ。天井をぶち抜いて二階に上がるよりも、床をぶち抜いて一階に降りる方が楽だろう?」
「……あんまり納得はしたくないですね」
その様子がアッサリと想像できて、カインは思わずげんなりとした表情を浮かべる。
「一応他人の家なんですから、出来るだけ壊さない方法でお願いしますね?」
「覚えてはおこう」
善処するとすら言わないサンクリードを軽く睨み付けると、シュナは大きく溜息をつく。
「合図はどうします?」
「必要ないだろう。戦闘音で異常を感じないわけでもあるまい」
「まあ、それはそうですけど」
面倒だと顔に書いてあるサンクリードに苦笑し、カインは先行するように歩き出す。
「では、僕はこの階の他の部屋を調べてきますので。二階はお願いしますね」
「ああ」
手近な扉を開けて別の部屋に消えていくカインを目で追うと、サンクリードは隣に立つシュナを見下ろす。
「行くぞ」
「ええ。でも、何処に階段があるか分かるんですか?」
サンクリードは考え込むように天井を見上げ……やがて、ぽつりと呟く。
「……ぶち抜くか」
「やったら怒りますからね?」
至極真面目な表情のサンクリードに軽くツッコミを入れると、シュナは部屋の中をキョロキョロと見回し始め……やがて、カインが開けた扉とは別方向の奥の扉を指差す。
「たぶん、こっちですね」
「そうなのか?」
「はい。二階っていうのは基本的に生活スペースですから。特にこういう不正してそうな人は、人目に触れる場所に設置したがらないんですよ」
更に言えば、あまり人に言えない客を裏口から招いた時の為にも階段が奥にあるというのは役に立つ。
後ろ暗い人間にとって、心理的にそうしてしまうものなのだとシュナは語って聞かせる。
「……そういうものか」
「そういうものなんです」
納得したように頷くサンクリードは奥の扉へ向けて歩き出し……シュナは、慌てるようにその後を追う。
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