勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です

天野ハザマ

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魔王談義3

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「……確かに命の神のシナリオは変わったのでしょうね。でも、それと私の魔力量に関係があるの?」
「大有りだ。シナリオの変更により、お前の役割は変化した。お前が襲ってきたところを見る限りだと、お前の役割は俺を殺す……ことであったように思える」

 ヴェルムドールが「悪の首魁」であるという部分は、恐らく変わっていなかっただろう。
 それは当時のイクスラースの発言を思い返せば想像はつく。

「……そうね」

 その時の事を思い出したのか、イクスラースの表情は悔しげに歪む。
 それがクロードの死にも繋がったのだから、イクスラースの後悔も当然だろう。
 だが、問題はそこではない。

「俺を殺す。それはまあ……自惚れるわけではないが、相当に困難なはずだ」

 ヴェルムドール自身が強いというのもそうだ。
 だが、ヴェルムドールは自身を護る「砦」を築き上げた。
 メイドナイトのイチカ、ニノ。
 中央将ゴーディと、四方将の面々。
 そして、その配下である魔王軍。
 単体で群雄割拠していた魔族を国家と軍という形に纏め上げ、敵対する者が自動的に「魔族の国家、ザダーク王国」という強力無比な組織の敵となるような仕組みを作った。

「ええ。だからこそ私は次元城で国を混乱させ、クロードを捨て駒にしてこの城に攻め込んだのよ」
「そうだ。それは功を奏して、次元城という囮で四方将の目を引き付け魔王城に攻め込んできた」

 その効果は確かに絶大だった。
 四方将は次元城の動向の確認と即時出動できるような準備に追われ、各軍は神出鬼没の敵の拠点の出現に備え混乱した。
 黒騎士クロードという四方将で無ければ対抗不能にも思える相手の出現も、その役に立っただろう。

「ただ、命の神にとってみれば私すら捨て駒だった。ただそれだけの話よね」
「そうだな」
「アッサリ言うわね」

 苦笑するイクスラースにしかし、ヴェルムドールは真面目な表情を崩さない。

「確かにお前は捨て駒として扱われた。聖鎧兵なる奴すら捨て駒で、奴は影とやらを使い俺に直接攻撃を仕掛けてきた」
「……」
 
 結果としてはヴェルムドールはそれも乗り越えた。
 随分と手の込んだ攻撃だった……と。
 そういう風に総括することも出来るし、実際にヴェルムドールはそう総括していた。
 だが、イクスラースという新たな仲間を得て共に戦っていくうちに、新たな違和感が見え始めてきたのだ。

「イクスラース、お前は強い。だが、俺に勝てる程ではない」
「……そうね、それは認めるわ」
「だが、それはおかしいんだ」

 そう、おかしいのだ。
 魔王イクスラースは、魔王ヴェルムドールに多少なりとも対抗できなければならなかったはずだ。
 だが、そうなっていない。
 闇属性魔法の名手であるイクスラースは、疑いようも無く強い。
 魔族全体で見ても、間違いなく上位。
 だが、逆に言えばそれだけなのだ。

「イクスラース、お前は俺を倒しうる存在でなければならなかったはずだ。単純に魔法使いとしては一昼夜大魔法を撃ち続けても問題の無い魔王ヴェルムドールに真正面から対抗しても「勝ち」の目がある存在でなければならなかったはずなんだ」

 イクスラースは、魔法剣士寄りの魔法使いだ。
 ならば、魔王ヴェルムドール並みとはいかずとも近いくらいの魔力量はあって然るべきだ。
 そうでなければ、対抗などできるはずが無い。

「ちょ、ちょっと待って。どうしてそういう結論になるのよ? 私は捨て駒だったんでしょう?」

 捨て駒にそんな能力を持たせる意味はない。
 そう反論するイクスラースに、ヴェルムドールは首を横に振って否定する。

「確かにお前は捨て駒として扱われた。だが、最初はそうではなかったはずだ。いいかイクスラース、お前は「魔王」なんだ。如何に規格外の大魔法とはいえ、一発で倒れるような魔王が勇者に対抗できるか?」
「……倒される運命にあったなら、問題ないはずよ」
「そうだな。だがそれは恐らく、俺を倒す為の予行演習……勇者を成長させる踏み台としてであったはずだ。それには少なくとも、あの魔法を何発か撃てるほどの魔力量が無ければならない」

 ヴェルムドールの言葉に、イクスラースは反論できずに言葉に詰まる。
 それは、確かにその通りだ。
 イクスラースは「上位の魔族」としては充分過ぎる実力を持っている。
 だが、「魔王」として考えるならどうだろう。
 少しばかり、足りないのではないだろうか?

「部下にしてもそうだ。あのクロードも含めた四騎士は、確かに強力だ。だが魔王の配下としてはどうだ? 少なすぎるだろう」

 恐らく「当初の計画」ではシュタイア大陸の魔族は「魔王イクスラースの部下」として人類は看做したはずだろう。
 だが、魔王シュクロウスが無数の部下を率いたように「魔王イクスラース」もそれに該当するものがあったはずだ。
 たとえ実際にイクスラースがそれを率いていなくとも、「それ」は用意されていたはずなのだ。

「……これは俺の想像になる」

 ヴェルムドールは、真剣な表情になったイクスラースにそう前置きする。

「お前が本来持っていたはずの力と軍勢が、他に回された。お前に残されたのは恐らく、俺にギリギリ対抗できないはずの力のみだったはずだ。そう考えれば、辻褄が合う。合ってしまうんだ、イクスラース」
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