勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です

天野ハザマ

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闇の巫女レルスアレナ4

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 特に頑丈に造られていたはずの村長の家の扉。
 開けてくれと懇願する村人達の血で染まったその扉は、続けてやってきたビスティア達の叩き付けた武器によってボロボロになってしまっている。
 だが、鉄板でも中に仕込んでいるのだろうか。表面の木の部分こそボロボロだが、その奥からは鈍く輝く何かが見えている。
 ……まあ、ビスティアだけではなく盗賊という脅威もある。
 このくらいの備えはしていても当然といったところだろうか。

「……」

 少女は扉を前に少し考えると、手の甲でノックをしようとして……やはり引っ込めてから、杖で扉を叩く。
 ガンガン、という比較的煩い音を響かせるが、反応は無い。
 すでに背後での戦闘音は止んでおり、静かなものだ。
 それ故に、「聞こえなかった」ということはないだろう。
 念のため、と少女は先程より強めに扉を叩くが、やはり反応は無い。
 
「……反応なし」

 少女は扉の前から離れ、背後に立つ二体のゴーレムへと振り返る。
 そのまま少女はゴーレムへと近づいていき、青いゴーレムに手を触れる。
 そうするとゴーレムは微かな冷気を残して消え、青い宝珠が少女の手へと落ちる。
 それを懐へ仕舞いこむと、少女は赤いゴーレムへと話しかける。

「あの扉、開けてください」

 赤いゴーレムは了承したとでも言うかのように動き出し、村長の家の扉へと近づいていき……先程ビスティアを砕いていたその蹴りで、扉を蹴り破る。
 そのあまりにも激しい蹴りは扉ごと入り口を粉砕してしまったようだが、少女は気にした様子も無い。

「ありがとう。貴方も戻ってください」

 そう言って少女は赤いゴーレムに触れ、落ちてきた宝玉を懐へと仕舞いこむ。
 完全に粉砕された入り口へと進もうとすると、脅えた様子の男が一人震える手で剣を構えながら出てくる。

「な、ななな……なんだお前! この家に何の用だ!」

 威嚇しているつもりなのだろうが、ガタガタと小刻みに震えているのが丸分かりでは、大した意味も無い。
 そういう剣法だというのであれば流石だが、そういうわけでもなさそうだ。
 まあ、どちらにせよ「ビスティアを倒した命の恩人」に対する態度ではない。

「金なら黙って待っていればくれてやったものを、玄関を壊すとは! この野蛮人め……!」

 傲慢さが非常に目立つが、まあ正論ではある。
 しかし少女はそれを聞き流し、男を指差す。

「村長?」
「ああ!?」

 キョロキョロと辺りを見回していた男は少女以外に動くモノが何も無いのを見て安心したのか、震えも止まり多少強気に声を荒げる。
 少女は男の反応に首を傾げると、同じ質問を繰り返す。

「村長?」
「まだ村長じゃねえ。次期村長だ」

 こうした小さな村では村長とは大抵世襲制だが、つまりこの男は村長の息子ということなのだろう。
 少女はそれを理解し、頷く。

「そう。村長は何処です?」
「知りたきゃ、こっちに武器を寄越しな」
「意味が分からないです」

 少女が答えると、男はわざとらしく肩をすくめてみせる。

「おいおい、ビスティア共を皆殺しにするような危ない奴に武器持たせたまま村長に会わせる奴が何処にいるんだよ」

 随分な言い草だが、正論ではある。
 少女が溜息をついて杖を投げると、男はそれを掴んで剣を地面に刺すと、空いたほうの手を差し出してみせる。

「あの宝石もだよ。あれで巨人の化け物を操ってたんだろ? あれも寄越せ」
「それは無理です」
「無理ならおや……村長には会わせられねえな」

 ニヤニヤと笑う男に、少女は再度溜息をつき……地面を、足で軽く打ち鳴らす。
 そうすると、男の背後に土の人型が盛り上がるように現れて男を羽交い絞めにする。

「う、うおっ!? な、なんだこりゃ!?」
「杖はまあ、いいです。どうせ貰い物ですから。でも、宝玉はダメです。理解できますか?」
「離せ、おい離せ畜生っ!」

 暴れる男は全く話にならず、少女は男から杖を奪い返すと興味を失ったかのように視線を外し崩れた入り口から中と入っていく。
 パラパラと壊れた欠片が振ってくる入り口から中に入ると、そこは丁度小ホールのような場所になっていた。
 勿論貴族の家の小ホールと比べるまでもないが……まあ、金を少し持つと貴族の生活の真似をしたがるという典型例であろう。
 赤いゴーレムが入り口を扉ごと壊した影響か、あちこちヒビが入ったり歪んだりしている場所もあるが……他の部屋に行く為の扉も見た目には支障は無さそうだ。
 ……だが、その中で奇妙なものを少女は発見する。
 どうやら赤いゴーレムの蹴りの衝撃で歪んだのか、壁が外れかかっているような場所があるのだ。

「……?」

 いや、壁ではない。
 近づいて見ると、壁を四角く切り取ったような違和感。
 所謂隠し扉であることは一目瞭然であり、それを悟った少女は隙間に杖を挟み込んで歪んだ扉を引っ張り、無理矢理自分が入れる程度にまで隙間を押し広げる。
 そうして出来た隙間に身を滑り込ませると、何やら地下へと続く階段があるのを発見する。

照明ライト

 淡く光る光の玉を作り出して浮かべると、少女は躊躇いもせずに階段を降りていった。
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