勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です

天野ハザマ

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たとえ、この身は滅ぶとも23

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「では……光の魔法障壁マジックガード・ライト!」
「後で私も話を聞かせてもらうわよ……光の魔法障壁マジックガード・ライト!」
 ヴェルムドールの展開している光の魔法障壁マジックガード・ライトよりは幾分か輝きの弱い光の魔法障壁マジックガード・ライトが二つ展開される。
 外側のものがルモン、その内側のものがイクスラースだが……消耗している分、イクスラースの展開したもののほうが輝きが弱いようだ。

「……よし」

 紙片に視線を落としていたヴェルムドールは紙片を懐に入れると、魔剣ベイルブレイドに魔力を込め始める。

「いくぞ……耐えろよ」

 宣言と同時にヴェルムドールの光の魔法障壁マジックガード・ライトが解除され、荒れ狂う二つの影世界の異邦人ダルケルヴィシュエがルモンの光の魔法障壁マジックガード・ライトを打ち破るべく絡みつく。

「ぐ……うっ!? ヤバいヤバい! これ想像以上にきっつ……!」

 魔力を全開にしても食い破られそうな感覚。
 それを感じ、ルモンは必死で魔力を光の魔法障壁マジックガード・ライトへと流し込む。
 少しでも余裕を見せて気を抜こうものなら、一瞬で影世界の異邦人ダルケルヴィシュエは雪崩れ込んでくるであろうことがハッキリと理解できる。
 その様子を視界の端に捉えながら、ヴェルムドールは魔法解除ディスペルの発動に集中する。

「……此処に、法在り」

 魔剣ベイルブレイドが流し込まれるヴェルムドールの魔力に反応し、黒い光を纏わせる。

「それが魔なる法であるならば、その全ては我に抗うこと能わず。その全ては、我をただ賞賛する為にあるべし。故に、我はその法を認めず」

 ヴェルムドールは確信する。
 この魔法は「完成」した。
 あとは、解き放つ……いや、掌握するだけだ。

魔法解除ディスペルッ!」

 ヴェルムドールの放った魔力の波動が、周囲の魔力へ伝わり……次々に、その制御下へと塗り替えられる。
 まずはイクスラースの光の魔法障壁マジックガード・ライトが、その姿を消す。
 突然魔法が消失した感覚にイクスラースが驚くより早く、ルモンの光の魔法障壁マジックガード・ライトも消え……続けて、二つの影世界の異邦人ダルケルヴィシュエが消失する。
 それは相殺のような激しい消え方ではなく……まるで溶けるように、あるいは幻であったかのような消え方。

「……な、何よこれ」

 四つの魔法が消え去った後には、何も残らない。
 ただヴェルムドールの魔力の気配だけが充満し……しかし、それもすぐに霧散していく。

「今のって……まさか、他者の魔法を魔力に変換した上で別の魔法に再構築したの? 何それ、そんな力技……いえ、そんな問題じゃ……」

 イクスラースの驚愕に満ちた顔が、ヴェルムドールに向けられる。
 だが、ヴェルムドールは答えずイクスラースの頭にぽんと手を置く。

「それは後回しでいい。とりあえずコレで、全員助かったんだからな」
「……! そういえばレルスアレナは……!」

 慌てて振り向くと、レルスアレナは先程とは変わらぬ位置に立って空を見上げている。

「……私がたまたま言ったことを実行する為の手札がすでにあり、それを実現させるとは。それは貴方の運ですか? それとも……」
「実力だと思いますよ?」

 ルモンはそう言うと、少しだけ疲れたような顔で笑う。

「たぶん今代魔王様は、そういうのを引き込む土壌作りが上手いんですよ。少なくとも僕に、秘匿してた札を吐き出させるくらいには……ね」
「そうですか」

 レルスアレナは、やはり何の感情も見えない顔でそう呟く。
 駆け寄ってくるイチカやロクナ達に適当に手を振っていたヴェルムドールは、飛び込むように抱き着いてくるロクナの勢いに思わず「ぐっ」と小さな声をあげ……そのロクナを引きはがしてポイ捨てしたイチカに苦笑する。

「ヴェルムドール様」
「ああ、一休みといきたいところだが……どうもそういう状況ではないらしい」

 ヴェルムドール達の周りを遠巻きに囲むのは、無数のエレメント達。
 攻撃を仕掛けてくるでもなく佇むエレメント達は、ヴェルムドール達をただじっと見つめている。
 空にもウインドエレメント達が舞っていて……その間を、一際強い存在感を放つ黒い何者かが下りてくる。
 その腕にはそれぞれクリムとルーティを抱え、足にはファイネルがしがみついている。
 ファイネルの着地の後にその何者かも下りてきて、ずらりと牙の並んだ口を開けてニヤリと笑う。

「おう、状況はよくわかんねーが怪我はないみてえだな、魔王様」
「ラクターか。その姿は初めて見るな」
「まあな、この前試してみたらできたんだがよ……それより、こりゃなんだ?」

 周囲を取り囲むエレメント達を見回すラクターに、ヴェルムドールも首を横に振る。

「……イチカ、どうなんだ?」
「私達にも分りかねます。先程より攻撃を仕掛けてくるわけでもなく、ただああしています。ですから……」
「私の意思ではありませんよ」

 イチカの視線に気づいたレルスアレナがそう答え、更に何かを言おうとしたその時。

「王ヨ」

 アースアレメントのうちの一体が、ハッキリとした口調でそう呟いた。
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