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連載
魔王というもの2
しおりを挟むその問いに、ヴェルムドールは答えない。
ヴェルムドール自身、あの魔神に関しては「ありえるかもしれない」という答えが出てきてしまうからだ。
だが、それを肯定してしまうことだけはできない。
「……それが、聞けば後悔する理由とやらか」
「そうだ。知らねば純粋な復讐者のままでいられただろう。どうせ結果が同じなら、その方が迷いがなかったかもしれん」
なるほど、確かにヴェルムドール達は今、真実の断片を知った。
戦う者に理由があることなどは、分かりきったことだ。
互いに信じる正義があるからこそぶつかり合う。
それを多少理解したところで、戦いを避ける理由などにはならない。
だが……「神」と「魔王」の関連性についてだけは話は別だ。
それしか手がないというのであれば躊躇う理由はない。
歪神の話にしたところでそうだ。
それはフィリアとの対決を躊躇う理由にはならない。
問題なのは……そう、ヴェルムドールとダグラスが問題としているのは「その先」の話なのだ。
「俺がフィリアを倒し命の神になったとしよう。ダグラス……お前はその後に、俺の後釜となる魔王が送り込まれると……そう予想しているんだな?」
「えっ」
ヴェルムドールの発言にイクスラースが驚いたような声をあげ、サンクリードも僅かながら眉をあげる。
レルスアレナの表情は相変わらず分からないが、魔神の事をよく知っているイチカは黙って目を閉じている。
そう、今のダグラスの話を聞く限り……そしてイチカの知る魔神の性格であれば、それは充分に有り得る事だった。
それがまた百年先になるか、あるいは千年先になるかは分からないが……きっと、魔神は後釜を送り込んでくるだろう。
そしてそれは、ヴェルムドールに好意的であるとは限らないのだ。
「そうだ。そしてそれが魔族以外の生命体に敵対的な奴であった場合……その時、お前の国は割れる。お前自身に従う奴と、魔王という存在に従う奴の二つに分かれてな」
ありえない話ではない。
むしろ、限りなく可能性の高い話であると考えていいだろう。
魔王が空席である。
ただそれだけの理由で魔神はヴェルムドールを送り込んだのだ。
「……確かに、それは問題だ。だが、今この場でどうこう出来る問題ではないな」
「そうだな。どうだ、同情でもしてやろうか」
「茶化すな。ご大層な昔話をくっつけてまで俺達に決心を鈍らせようとか、そういう話ではないんだろう?」
多少の殺意すら込めて睨みつけるヴェルムドールに、ダグラスは肩をすくめて見せる。
「茶化したくもなる。今から俺が提示するのは、そういう妄想にもならん夢物語な可能性の提示だ」
そう言うと、ダグラスはヴェルムドールへと腕を突き出し人差し指を立てる。
「まず、一つ目。お前の代わりになる魔王をお前が創れ。出来るなら、の話になるがな」
確かに、それが出来ればヴェルムドールに都合の悪い魔王が誕生する可能性は限りなく低くなる。
……だが、それは恐らく無理だ。
「勇者」であるサンクリードでさえ、奇跡的な成功といえるのだ。
これが「魔王」ともなれば、そんなものが成功するとは思えない。
そんな事を考えていると、ダグラスは今度は中指を立てる。
「そして、二つ目。魔神に会い説得しろ。お前の代わりを送り込むな、とな」
魔神に会う事自体は、可能か不可能かでいえば可能だろう。
だが、今度は魔神の納得する「答え」を用意せねば魔神がヴェルムドールの要求などを聞くかは限りなく不明だ。
そもそも、あの魔神を何処まで信用していいかすら不明なのだ。
最悪、リスクだけ増やす可能性すらある。
「三つ目。アルヴァクイーンの心を変えさせ、新たな魔王に育て上げろ」
「……無理だろう。そもそも奴は職業魔王だ」
それが一番無茶だ。
そして今ヴェルムドールが言ったとおりにアルヴァクイーンは職業魔王であって、種族としての魔王ではないはずだ。
要はイクスラースと同じで、ヴェルムドールと同じではない。
「そうだな。だが奴は、この世界に存在する中では一番お前に近い。劣化版と言ってもいい。奴のアルヴァ創造能力を忘れたわけでもあるまい」
……確かに、その能力を応用して過去の魔族の再生も成功させている。
それは言うなれば、「命」の属性……「魂」の領域へと足を突っ込んだ技だ。
「勿論、それはフィリアが与えた能力を超えている……つまり、アルヴァクイーンが自力でそこまで進化したのだろう。だからこそ今フィリアは、奴を早急に排除しようとしている」
「勝手な話だ」
「だが、結果的にはお前にとって良い話にもなるかもしれん。上手くいけば……だがな」
上手くいけば、確かに可能性の高い話ではあるだろう。
だが、やはり無理だろう。
アルヴァクイーンは人類にすでに自発的にちょっかいをかけているし、ヴェルムドールの治めるザダーク王国にも何度もちょっかいをかけてきている。
こちらの説得に応じるなどとは思えない。
「無理だろうな。魂を多少弄ったところでどうにかなるとも思えん」
「そうか。ならば、最後に四つ目の可能性を提示しよう」
四本目の指を立てて、ダグラスは「それ」を口にする。
「アルヴァクイーンを倒し、その魂より力を奪い取り別の者に移し変えろ。魔王に「なれる」器を、お前が造るのだ」
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