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連載
世界会議4
しおりを挟むそうして集まる視線に心の中で舌打ちをしたのはアルムである。
しばらくは様子を見ているつもりが、援護射撃付きで話を振られてしまった。
先鋒だか何だか知らないが、そんなものはやりたい連中に任せるつもりだったのだ。
しかしながら、こうして話を振られてしまったからには反応せざるを得ない。
「そうですのう……我が国としては、先鋒である事に固執するつもりはありませんな。他に希望する国々があるとすれば尚更ですわい……我が国よりも、この大陸の四大国の方々の希望はどうなのでしょうかの?」
故に、アルムは無難な台詞で居並ぶ四大国……すなわち聖アルトリス王国、サイラス帝国、ジオル森王国、キャナル王国の代表者へと話を投げる。
いずれかの国がやりたいと言えば、それを後押ししようという腹積もりであるが……一番最初に口を開いたのは、キャナル王国の代表者である光杖騎士団長のアンナという女であった。
「我が国としては、ザダーク王国の方々が先鋒というのは良い事なのではないかと考えています」
内戦で疲弊しているとはいえ四大国の一角であるキャナル王国側の発言に中小国がざわめき、先ほどから威勢のいい発言を繰り返していたアルスレイが慌てたように叫ぶ。
「な、何を言っているのだ! 栄えある先鋒を簡単に譲るなどと……臆したか!」
「そちらこそ何を言っているのですか。先鋒であるということは祈国の方の仰るとおり「盾」であり「露払い」であるということです。当然、それを切り払い押し返す戦力が求められます。貴方方に、それが可能なのですか?」
「そ、そんなもの。我が国の闘士達の力を持ってすれば……」
「なるほど。では、アルヴァ相手に一対一で勝てる兵士が揃っていると。それは素晴らしい事ですね?」
アンナの皮肉じみた賛辞にアルスレイは悔しそうな顔で黙り込み……しかし、今度は別の男が声を上げる。
「どの国が行くかはともかく……我が国はザダーク王国が先鋒というのには反対ですな」
すっかり禿げ上がった頭の壮年の男は、中小国の一つ「デルサエル皇国」の代表者であり外務大臣であるという男である。
何の特徴もない帝政国家であるが、ここに居並ぶ国々の中ではそれなりに大きいほうである。
「そもそもの話になりますが、我等が皇帝はザダーク王国をそこまで信用しておられない。万が一……ええ、万が一の話ですが、ザダーク王国の魔族達とアルヴァ共が繋がっていたら如何されるおつもりか」
「む、確かに……。我が国の王も同じような懸念を抱かれておりました」
「そうですな、罠でも仕掛けられたら……」
別の国の代表者がそんな事を言えば、中小国の代表者達の間でざわめきが広がっていく。
そんな面倒くさい小芝居をするよりは纏めて魔法で吹っ飛ばしたほうが余程話が早いのだが、どうせ会議が荒れるだけだとアルムは溜息をついて議論の様子を見守ることにする。
何やら向けられる視線に敵意じみたものが混じっている気もするが、ゴブリンの癇癪のほうがまだ怖いというものだ。
「何やら盛り上がっているようですが、発言してもよろしいですか?」
だが、そんな喧騒も一人の女が立ち上がった事でピタリと止まる。
お団子に纏め上げた金色の髪が特徴的なその女は、ジオル森王国の代表者の一人であり……確か政治屋ではないはずの「英雄」ルーティ・リガスである。
そんな彼女が「発言する」と宣言してまだ喋り続ける事が出来る者はどうやらこの場には居なかったようで……議場はしんと静まり返る。
「感謝します。さて、ザダーク王国の事について随分と噂話で盛り上がっているようですが」
噂話、という単語にルーティは力を込めて口にする。
そう、証拠の無い話は所詮噂話である。悪口と言い換えてもいい。
そんな無責任な話で盛り上がっている中小国の面々にまずは遠まわしに釘を刺したわけだ。
「当然、ジオル森王国がザダーク王国と友好関係にあると知った上での発言なのですよね?」
「ああ、キャナル王国もまだ限定的ではありますが友好条約を結んでいますね。サイラス帝国も交渉中だと伺いましたが?」
「……確かに。我が国も交渉中である」
アンナがサイラス帝国の代表団に話を振ると、むっつりとした顔の「銀の第一席」シャイアロンドがそう答える。
何がそんなに不満なのかはアルムには分からないが、この前会った「銀の第二席」のトルクレスタはこの場にはいないようだった。
「さて、このような状況下でザダーク王国の悪意ある噂話とは、我々を無能と侮辱しているも同然ですが……まさか、遠回しに我々三国にケンカを?」
「え、あ、いや! そんなつもりは……」
「ええ、ええ! あくまであらゆる可能性を……!」
一斉にそんなつもりはないと繰り返す中小国に、ルーティとアンナは呆れたような目をして、シャイアロンドはむっつりとした顔で小さく溜息をついて立ち上がる。
「ルーティ殿もそのくらいでよかろう。多数の国が一同に集まれば揉めるは必定というもの。ザダーク王国の方々は気を悪くされるかもしれんが、魔族絡みの話にナーバスになるのも仕方の無いことでもある」
そう言うと、シャイアロンドはアルムへと視線を向けた。
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