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連載
アルヴァ戦役19
しおりを挟む世界は、混乱に陥っていた。
だが……そんな状況で何故連合軍が気がつかないのか。
それは単純で、次元の狭間の入り口が一時的に閉じているからである。
ヴェルムドールとルーティが闇の鍵と光の鍵に魔力を込める事で開いた入り口も、永遠というわけではない。
戦闘が開始してよりしばらくの後に入り口は閉じ、しかし最初より予定されていた事なので何も問題は無かった。
いざという時の撤退用として闇の鍵はファイネルに、光の鍵はトールに貸与されていたし、今こそ決戦の時と逸る連合軍にそんなものを気にする者はほとんどいなかったからだ。
そしてそれ故に、連合軍の進む道は前にしかなかった。
進む先に餌のように鎮座するアルヴァの城。
其処へ向けて、隙あらば一番槍と士気は旺盛。
少しでも戦果をあげようと選りすぐりを各国投入しているだけあって、アルヴァの大軍相手にもそこそこは戦えるし、何よりファイネルと「新たな勇者」トールが尋常ではない。
「電撃砲!」
ファイネルの電撃砲が飛来してきた巨大アルヴァを到達前に消し飛ばし、追随していた他のアルヴァ達もザダーク王国軍の放つ魔法で羽虫か何かのように落ちていく。
空を飛べるという生物の中では優位に立てる能力を持っているアルヴァは、空からの対地攻撃手段としての魔法をも使用可能だ。
そして、その肉体は半魔力体という魔力の通わぬ攻撃に対して強い耐性を持った反則的な性能だ。
これだけ生物として有利に立っているアルヴァが、何故こうもバタバタと落とされていくのか。
ザダーク王国軍相手であれば、攻撃のエキスパートである魔族相手では分が悪い……という理由も捻り出せる。
だが実際には、人類軍相手にもそれなりにアルヴァ達は落とされている。
「正面上方、長杖構え! 撃てぇ!」
指揮官の指令に従い一斉に火撃が空に向かって放たれていく。
一個一個はアルヴァを落とすに至らずとも多数の騎士達による同魔法の一斉射撃はその二段階も三段階も上の威力を叩き出し、結果としてアルヴァは落ちていく。
「ギアアゲウオアアアアアア!」
「右、来るぞ! 弓隊、撃て! 盾は急げ! 陣を崩すな!」
対アルヴァでは牽制にしかならない矢も、しかし牽制でいい場面では魔法より速い遠距離攻撃手段となりうる。
実際無数の矢に狙われたアルヴァの速度は僅かながら遅くなり……その間に盾持ちの防御陣が構築され、その裏から魔法騎士による攻撃魔法が放たれていく。
「意外にやるもんですのう、人類連中も」
「そうだな。私はそう意外でもないが」
よくルーティの家に勝手に遊びに行っているファイネルは、ルーティから人類に関する話についてはよく聞いていた。
その中には現代における騎士の話も含まれていた。
「連中は実戦が少ない分想像が好きなんだそうだ。「もしこういう敵が来たら」を考えて、訓練でそれを練り上げるんだとルーティは言っていた。それがハマってるんだろうさ」
「ほお」
実際にはもう少しニュアンスが違うんだろうな、と思いながらアルムは相槌を打つが、その通りである。
人類は人類同士での戦争をやめて久しく、騎士の仕事は盗賊やゴブリンやビスティア、あるいはオウガ退治となっていた。
ゴブリンは然程強くないが尋常ではないほど数が多く、オウガは数は少ないが尋常ではないほど強い。
そうしたものを相手にしている中で人類は「もしオウガがゴブリンほどの数で闊歩していやら」という想像をし、ソレに対する解決策を出そうとするのである。
騎士にもそれを想定した訓練をやらせ、アルヴァの存在が確認されてからはソレに対する戦術構築にも余念が無かった。
今回の戦いはいわばその「予習」に対する答え合わせのような側面すらあるというわけだ。
無論、彼等の予習内容に巨大アルヴァや特殊アルヴァなどというものはないが……ファイネルやトール、ザダーク王国軍といった規格外の存在がそれの埋め合わせとなっているが故に、なんとか形になっているというわけだ。
「まあ、我等の助力なくば被害甚大な箇所もあったでしょうがな」
「想像が足りん奴もいるだろうよ。アルヴァを「ちょっと強いオウガ」程度に考えている馬鹿とかな」
具体的には一部の中小国家のことだが、的確なザダーク王国軍のフォローでそうした彼等もどうにかなっている。
何しろ、今回のテーマは「協調」だ。
目立ちすぎるつもりはないが、わざわざ被害を大きくするつもりも無い。
むしろ目立ってアルヴァクイーンのところまで「勇者」を届けるよりは、ヴェルムドール達がアルヴァクイーンを倒すまでのんびりとお守をしているのが正解というモノだ。
そこに「もしヴェルムドールが負けたなら」という心配は無い。
魔王ヴェルムドール。
魔族の勇者サンクリード。
最も魔王に近い魔族ラクター。
冷血メイドナイトのイチカに、ついでに魔人イクスラース。
これだけ揃っていて、負ける要素がない。
「まあ、我等はこのま、ま……」
言いかけたその瞬間、ファイネルは何かを感じる。
それは、巨大な魔力を持つ何か。
よく知っているような、違うような……そんな魔力の気配。
「うわあああああああああああ!」
「ば、化け物があああ!?」
その次の瞬間、前方に転移されるようにして出現した巨大な「何か」に最前線の部隊から絶叫にも似た声が上がった。
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