勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です

天野ハザマ

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神の条件

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 フィリアとヴェルムドールの和解。
 握手によって互いの意思を確認した二人は、にこりともしないまま手を離す。
 しかしまあ、それも当然の事だろう。
「和解」は「友好」とは違う。
 互いにそうするべきと考えたから協力関係が成立したのであって、友達になったわけでは断じてない。
 そんな関係になるには互いに積み重ねたモノが大き過ぎ、それはこの場で解決できるようなものではない。
 そして更に言えば、そんな関係になる事を互いに望んでいない。
 望みもしない関係が出来上がるはずも無く、ヴェルムドールに寄り添ったままニヤニヤしている魔神を除けば実に寒々しい空気が流れている。

「……ヴェルムドール」
「なんだ、フィリア」

 その魔神を無視しながらフィリアはヴェルムドールに声をかけるが、当然ヴェルムドールの反応は必要最小限のものであり……何がツボに入ったのか、魔神がヴェルムドールの胸元をバシバシ叩いて笑い始める。

「おーいおい、冷え切った熟年夫婦だってもう少し気を使った会話をするぜ?」
「黙りなさい」
「黙れ」
「わあ、こわーい」

 ちっとも怖がってない顔で肩をすくめる魔神を再度無視し、フィリアは無理矢理話を続けることにする。

「貴方は魔力の神になると言いましたが……それをどう実現する気ですか?」

 そう、過去に魔王が神になった例はダグラスの一例だけ。
 それも闇の神が空席になった結果での結果に過ぎない。
 つまり魔王が神になろうとして神になった実例は無く、「どうすれば神になれるのか」などというマニュアルがあるはずもない。
 故に、フィリアの問いは当然のものだ。
 いくらヴェルムドールやフィリアが命の種を弄れるからといって「神」を気軽に生み出せるはずも無いのだから。
 
 ……当然、今二人の間でニヤニヤしている魔神であれば「ヴェルムドールを魔力の神に変える」のは可能だろう。
 頼めば二つ返事で引き受けるかもしれないし、散々馬鹿にした上で断るかもしれない。
 一つ分かっているのは「それでは意味が無い」ということだけだ。
 魔神の影響力を排除する為の「魔力の神」が魔神の手によるものであるなど、冗談にもなりはしない。
 そして勿論だが、ヴェルムドールはそんな手段は考えてはいない。
 だが根拠の無い空手形を切ったわけでもない。
 この場に来て思いついたアイデアだが……恐らくは成功するとヴェルムドールは考えていた。

「お前の協力が必要だ、フィリア」
「それはそうでしょうね。貴方を神にするとなれば、間違いなく魂を弄る必要がある。しかし知ってはいるでしょうが……神の魂など、作ろうと思って作れるようなものではありません」

 神の卵である魔王の魂ですら、フィリアが意図的にゼロから作成するのは無謀であったのだ。
 それ程までに「神の創造」というものは偶発的要素に満ち、だからこそ「神」は崇められる者たりえるのだ。
 それはヴェルムドールとフィリアが協力したとて変わるようなものではないが……ヴェルムドールは、極彩色の空を見上げて「アレだ」と語る。

「……アレ?」
「この空間にお前が溜め込んだ、混沌の如く混じり合った魔力。アレを俺に寄越せ」

 ヒントは、ダグラスの話の中に在った。
 ダグラスが「闇の神」に変化した時のこと……「魔王ダグラス」の許容量を超える闇の魔力に満たされた時のこと。
 そもそも「神」と「魔王」の違いを考えてみれば、「各属性の魔力の取り扱いに特化した存在」であることと、「オールマイティーに魔力を扱える」事があげられる。
 もっとも後者に関しては大体の生命体はそうなので自慢にもならないが、そもそも「魔法」における大魔法の理論では目に見える範囲の魔力を制御することが基本とされ、いわば神とはそれを超大規模で行える存在であると解釈することが出来る。
 それを「権能」と一言で切って捨ててしまうのは簡単だが、代償を必要とせずに行使できる力などあらゆる世界を見渡しても存在しない。
 どのような力もそれを可能にする「動力」があるのが必要最低条件であり、「魔王ダグラス」と「闇の神ダグラス」の差で特に大きな点をあげるならば「制御可能な闇の魔力の規模」と「魔力総量」があげられるのは間違いない。

 これはつまり「神」としての膨大な体内の魔力が神の下地であり、条件であると考えられるのだ。
 そして……これが神の条件と考えられるもう一つの理由としては、モンスターエレメントやソウルイーターの存在があげられる。
 様々な魔力の特性を持ったモンスターエレメント達は、たとえばファイアエレメントならば「燃え盛る火の体」を持っている。
 ソウルイーターとなったキャナル王国の前光杖騎士団長のチェスターという男も「火の体」を得たことがあったが、その時には詠唱すらせずに火の力を行使したことがあった。
 その時はチェスターの異常さばかりが際立ち誰も気にしなかったが……あの時チェスターは確かに、「魔法」という形ではなく周囲から火の魔力を僅かながら精製し制御してみせたのだ。
 それはいわば神々による「世界の魔力の調整」と僅かながら似通ったものであると言えるだろう。

「俺が、「魔力の神」になるには……この場に溜め込んでいる「神ですら消し飛ばす」魔力があれば恐らく事足りる。だから俺に寄越せ、フィリア。お前にはもう必要の無いものだろう?」
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