2 / 99
偶然知ったヒミツ➁
しおりを挟む
―― 事の発端は、一週間前のある夜の事。
私はある事でムシャクシャしていて一人、ヤケ酒を呑んでいた。
酔いたくて入った居酒屋なのに、全く酔えない。日本酒をコップに4杯ほど呑んでいるのに、なぜだろう。普段はこの位でベロベロになれるのに、どんどん意識が冴えて行く感覚さえ覚える。
「はぁ……」
せっかく美味しい鯛の煮付けをアテに食べているのに、こんなんじゃ気分転換にもならない。
私はお酒をグイっと煽り、残りの鯛を食べきって帰ろうと立ち上がった。
「キャッ!」
後ろから短い女性の叫び声と、ドサッ!と何かが落ちる音が聞こえる。
え?と振り向くと、手の甲を押さえて一人の長身女性が立っていた。
何の確認もせずに立ち上がった為に、後ろを通りかかった彼女にイスがぶつかってしまったらしい。
そしてその拍子に、彼女の手からバッグが落ちてしまったみたいだ。
「ご、ごめんなさい!」
私は急いでバッグを拾い上げる。
「後ろを見ていなかったもので!お怪我ありませんか!?」
私はバッグに付いた土埃を叩き落とし、それを手渡した。
「いいえ、大丈夫ですよ」
彼女は、私が差し出したバッグを慌てて受け取る。
受け取る、と言うか、奪い取る、に近かった。
その行動にちょっとムッとしたけど、悪いのは私なのでそれは顔に出さずに何度も頭を下げた。
「本当にごめんなさい」
「大丈夫ですから」
女性にしては少し重低音の声に頭を上げる。
しかし、その低い声色が気にならないほど綺麗な人だった。
(綺麗な人……)
少しの間、見惚れてしまう。
(……あれ?)
私は彼女を見て、何か違和感を覚えた。
(ん?なんだろう。この人、どこかで見た事がある気がする……)
確実に初対面のハズなのだが、そんな変な感覚に囚われる。
「あの、突然で失礼なんですが、どこかでお会いした事あります?」
私は思いきって尋ねてみた。
だって、なんだか妙に気になる。
「えっ!?」
彼女は、私の唐突な質問に動揺を隠せないでいる。
まあ、そりゃそうか。突然、初対面の人にこんな事聞かれたら、誰でも警戒するだろう。
「い、いいえっ!?今日が初対面です!では、失礼っ!」
彼女がそそくさとお店を出ようとパッと顔をそむける。その拍子に綺麗な黒髪ロングヘアーがフワッとなびいた。
(あっ……!)
その瞬間、私の頭の中のモヤモヤが、一瞬でパッと明るく鮮明になった。
私はある事でムシャクシャしていて一人、ヤケ酒を呑んでいた。
酔いたくて入った居酒屋なのに、全く酔えない。日本酒をコップに4杯ほど呑んでいるのに、なぜだろう。普段はこの位でベロベロになれるのに、どんどん意識が冴えて行く感覚さえ覚える。
「はぁ……」
せっかく美味しい鯛の煮付けをアテに食べているのに、こんなんじゃ気分転換にもならない。
私はお酒をグイっと煽り、残りの鯛を食べきって帰ろうと立ち上がった。
「キャッ!」
後ろから短い女性の叫び声と、ドサッ!と何かが落ちる音が聞こえる。
え?と振り向くと、手の甲を押さえて一人の長身女性が立っていた。
何の確認もせずに立ち上がった為に、後ろを通りかかった彼女にイスがぶつかってしまったらしい。
そしてその拍子に、彼女の手からバッグが落ちてしまったみたいだ。
「ご、ごめんなさい!」
私は急いでバッグを拾い上げる。
「後ろを見ていなかったもので!お怪我ありませんか!?」
私はバッグに付いた土埃を叩き落とし、それを手渡した。
「いいえ、大丈夫ですよ」
彼女は、私が差し出したバッグを慌てて受け取る。
受け取る、と言うか、奪い取る、に近かった。
その行動にちょっとムッとしたけど、悪いのは私なのでそれは顔に出さずに何度も頭を下げた。
「本当にごめんなさい」
「大丈夫ですから」
女性にしては少し重低音の声に頭を上げる。
しかし、その低い声色が気にならないほど綺麗な人だった。
(綺麗な人……)
少しの間、見惚れてしまう。
(……あれ?)
私は彼女を見て、何か違和感を覚えた。
(ん?なんだろう。この人、どこかで見た事がある気がする……)
確実に初対面のハズなのだが、そんな変な感覚に囚われる。
「あの、突然で失礼なんですが、どこかでお会いした事あります?」
私は思いきって尋ねてみた。
だって、なんだか妙に気になる。
「えっ!?」
彼女は、私の唐突な質問に動揺を隠せないでいる。
まあ、そりゃそうか。突然、初対面の人にこんな事聞かれたら、誰でも警戒するだろう。
「い、いいえっ!?今日が初対面です!では、失礼っ!」
彼女がそそくさとお店を出ようとパッと顔をそむける。その拍子に綺麗な黒髪ロングヘアーがフワッとなびいた。
(あっ……!)
その瞬間、私の頭の中のモヤモヤが、一瞬でパッと明るく鮮明になった。
33
あなたにおすすめの小説
昨日、あなたに恋をした
菱沼あゆ
恋愛
高すぎる周囲の評価に頑張って合わせようとしているが、仕事以外のことはポンコツなOL、楓日子(かえで にちこ)。
久しぶりに、憂さ晴らしにみんなで呑みに行くが、目を覚ましてみると、付けっぱなしのゲーム画面に見知らぬ男の名前が……。
私、今日も明日も、あさっても、
きっとお仕事がんばります~っ。
幸せのありか
神室さち
恋愛
兄の解雇に伴って、本社に呼び戻された氷川哉(ひかわさい)は兄の仕事の後始末とも言える関係企業の整理合理化を進めていた。
決定を下した日、彼のもとに行野樹理(ゆきのじゅり)と名乗る高校生の少女がやってくる。父親の会社との取引を継続してくれるようにと。
哉は、人生というゲームの余興に、一年以内に哉の提示する再建計画をやり遂げれば、以降も取引を続行することを決める。
担保として、樹理を差し出すのならと。止める両親を振りきり、樹理は彼のもとへ行くことを決意した。
とかなんとか書きつつ、幸せのありかを探すお話。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
自サイトに掲載していた作品を、閉鎖により移行。
視点がちょいちょい変わるので、タイトルに記載。
キリのいいところで切るので各話の文字数は一定ではありません。
ものすごく短いページもあります。サクサク更新する予定。
本日何話目、とかの注意は特に入りません。しおりで対応していただけるとありがたいです。
別小説「やさしいキスの見つけ方」のスピンオフとして生まれた作品ですが、メインは単独でも読めます。
直接的な表現はないので全年齢で公開します。
運命には間に合いますか?
入海月子
恋愛
スペイン建築が大好きな設計士
大橋優那(おおはし ゆな) 28歳
×
せっかちな空間デザイナー
守谷翔真(もりや しょうま) 33歳
優那はスペイン建築を学ぶという夢が実現するというときに、空間デザイナーの翔真と出会った。
せっかちな彼は出会って二日目で優那を口説いてくる。
翔真に惹かれながらも、スペインに行くことが決まっている優那はその気持ちに応えられないときっぱり告げた。
それでも、翔真はあきらめてくれない。
毎日のように熱く口説かれて、優那は――
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる