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偶然知ったヒミツ⑦
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「……………」
私の話を、途中までうんうん、と頷きながら聞いていた津田部長が、話が終わったあと何か考え込んでいる。
(やっぱり、こんな話されても困るだけだったかな……)
今更ながらちょっと後悔した。
「津田、部長……?」
「……………」
「あの……」
もう一度問いかけ様とした時、津田部長がパッと私の方を向き、突然、
「私が彼氏になってあげるわ」
――と言った。
「…………は?」
津田部長の言っている意味が理解出来ず、私の頭の上には「?マーク」がいっぱい浮かぶ。
「あ、ちょっと違うわね。彼氏『役』になってあげる。が正しいわ」
「はぁ……」
そう言われてもまだピンと来ない私は、口をパカーっと開けて気の抜けた返事をする。
そんな私を見てちょっとイラついたのか、津田部長が「だ・か・ら!」と人差し指を立てて、私の顔の前でブンブン振り回した。
「アタシが美園さんの彼氏役になって付き合っている『フリ』をすれば、笹木に言い寄られる事ももうないでしょって事よ」
「あ……あぁっ!」
なるほど、そう言う事か。やっと理解出来た。
「他の男に頼んでも良いんだろうけど、アンタ美人だからそいつに好かれる様な事があったらまた危険だし、その点アタシならそんな心配もないし」
津田部長は、一人で頷いて一人で納得している。
確かに、その役を頼むなら津田部長はうって付けだ。でも、それってなんだか都合よく津田部長を利用している様で、気が進まない。
「津田部長は、良いんですか……?」
「なにが?」
「多分ですけど、笹木どころか会社中に知れ渡っちゃいますよ?迷惑じゃないですか?」
「全然構わないわ。気遣い無用よ。あと、アタシが助けてあげたいって思ったんだから、アンタは気にしなくていいの」
津田部長がそう言って、私の背中をバシッと叩いた。そんなに痛くは無かったけど衝撃で少しよろめく。
いや、ちょっと痛かったか……。
「ほ、本当に良いんですか?」
「良いって言ってるじゃない。それに、アタシに言い寄ってくる女避けにもなるし、アンタに興味も沸いたし。一緒にいてもおかしくない口実が出来たから一石二鳥ね」
若干、津田部長がウキウキしている様にも見える。
私に興味が沸いた、ってセリフがちょっと気にかかるけど、今の私はそんな事を気にしている余裕はない。
(大丈夫、かな?甘えても良いかな?)
津田部長に迷惑がかかる事は明白。
(だけど、これで笹木が私の事を諦めてくれるなら……)
そう強く願い、この時は少しでも楽になりたい一心で申し出を受け入れた。
「じゃあ、あの……よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね」
津田部長が手を差し出す。
私もそれにならって手を差し出し、握手をした。
格好は女性だけど、手はやっぱり男性の手でゴツゴツしていた。
――そんなこんなで、私と津田部長の、奇妙な関係が始まった。
私の話を、途中までうんうん、と頷きながら聞いていた津田部長が、話が終わったあと何か考え込んでいる。
(やっぱり、こんな話されても困るだけだったかな……)
今更ながらちょっと後悔した。
「津田、部長……?」
「……………」
「あの……」
もう一度問いかけ様とした時、津田部長がパッと私の方を向き、突然、
「私が彼氏になってあげるわ」
――と言った。
「…………は?」
津田部長の言っている意味が理解出来ず、私の頭の上には「?マーク」がいっぱい浮かぶ。
「あ、ちょっと違うわね。彼氏『役』になってあげる。が正しいわ」
「はぁ……」
そう言われてもまだピンと来ない私は、口をパカーっと開けて気の抜けた返事をする。
そんな私を見てちょっとイラついたのか、津田部長が「だ・か・ら!」と人差し指を立てて、私の顔の前でブンブン振り回した。
「アタシが美園さんの彼氏役になって付き合っている『フリ』をすれば、笹木に言い寄られる事ももうないでしょって事よ」
「あ……あぁっ!」
なるほど、そう言う事か。やっと理解出来た。
「他の男に頼んでも良いんだろうけど、アンタ美人だからそいつに好かれる様な事があったらまた危険だし、その点アタシならそんな心配もないし」
津田部長は、一人で頷いて一人で納得している。
確かに、その役を頼むなら津田部長はうって付けだ。でも、それってなんだか都合よく津田部長を利用している様で、気が進まない。
「津田部長は、良いんですか……?」
「なにが?」
「多分ですけど、笹木どころか会社中に知れ渡っちゃいますよ?迷惑じゃないですか?」
「全然構わないわ。気遣い無用よ。あと、アタシが助けてあげたいって思ったんだから、アンタは気にしなくていいの」
津田部長がそう言って、私の背中をバシッと叩いた。そんなに痛くは無かったけど衝撃で少しよろめく。
いや、ちょっと痛かったか……。
「ほ、本当に良いんですか?」
「良いって言ってるじゃない。それに、アタシに言い寄ってくる女避けにもなるし、アンタに興味も沸いたし。一緒にいてもおかしくない口実が出来たから一石二鳥ね」
若干、津田部長がウキウキしている様にも見える。
私に興味が沸いた、ってセリフがちょっと気にかかるけど、今の私はそんな事を気にしている余裕はない。
(大丈夫、かな?甘えても良いかな?)
津田部長に迷惑がかかる事は明白。
(だけど、これで笹木が私の事を諦めてくれるなら……)
そう強く願い、この時は少しでも楽になりたい一心で申し出を受け入れた。
「じゃあ、あの……よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね」
津田部長が手を差し出す。
私もそれにならって手を差し出し、握手をした。
格好は女性だけど、手はやっぱり男性の手でゴツゴツしていた。
――そんなこんなで、私と津田部長の、奇妙な関係が始まった。
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