98 / 99
最後は笑顔で④
しおりを挟む
「え?どうしたの?急に」
何かお礼を言われる様な事をした覚えはないんだけど。
「ハナがね……」
「ハナちゃん?」
「うん。……江奈に出会ってから楽しそうなのよね」
「え?」
私と出会ってから?
クルッと振り返って、窓からお店の中を見る。
……確かに楽しそうに笑っているハナちゃん。
でもそれって、真司さんが戻って来てくれたからじゃ?
そう雪ちゃんに言ったら、「そうじゃないわ」と首を振った。
「ハナね、江奈に出会う直前に真司さんと一度別れたって話したでしょう?」
「うん……」
「危なっかしいな、とは思ってたんだけど、案の定、塞ぎ込んじゃってね。……ホラ、前に話した一件があるから、アタシも気が気じゃなかったのよ」
『前の一件』とは、ハナちゃんの自殺未遂の事だろう。
「かろうじて店をやる気力だけはあったみたいだから毎日の様に顔を見に来てたんだけど、江奈を初めてここに連れて来たあの日から妙に元気になり始めたのよね」
「そう、なの?」
「ええ。何がそうさせたのかは分からないけど、それは確かだわ」
不思議そうに雪ちゃんが頷いた。
私はハナちゃんと初対面《はつたいめん》した時の事を思い出す。
(う~ん。特に違和感なんてなかったけどなぁ)
初めて会った時からハナちゃんは凄く元気だった気がするし、落ち込んでる素振りなんて一切見られなかった。
(まあ、客商売をやっているんだから、落ち込んだまま接客はしないだろうけど)
思い返してみても、なんのヒントも得られない。
「別に私、何もしてないよ?」
「そうなのよね。だから余計に不思議でね……」
うーん…なんでだろう?
二人で首を傾げる。
サワサワサワ――……。
風に揺れるバラの隙間から、ワンちゃんを散歩している女の子が通り過ぎるのが見えた。
かわいいな、なんてボーッと見ていると、急にガバッ!と雪ちゃんが立ち上がって私はビックリした。
「ど、どうしたの?」
「エナ……」
「うん?なに?」
「そうよ、『エナ』よ……」
「うん、だからなに?私がどうしたの?」
要領を得ない会話にちょっとイラっとしながら聞き返す。
「違う、そうじゃない!……そうよ!エナよ、エナ!犬っ!!」
「い、犬……?」
尚更分からなくて頭がこんがらがる。
「そう!以前、ハナがボソッと言っていたのを思い出したわ!『一緒に育って来たワンちゃんが病気で亡くなった』って。その犬が確か女の子で名前が『エナ』よ!」
興奮気味に話す雪ちゃんの鼻息が荒い。
「えっと…つまり、可愛がっていたワンちゃんが亡くなった後、私が現れて、しかも名前が同じ『エナ』だったから親近感が沸いた、と言う解釈で良いのかな?」
「そうね、きっとそうだわ。多分、ハナの事だから運命とか感じちゃったんだと思う。絶対にそうよ!」
私の要約した解説に、雪ちゃんがうんうんと頷く。
なるほどね。
確かに、それはちょっと運命感じちゃうかもしれないな。
「あ~、スッキリした~。ずっと気になっていたのよね」
「良かったね」
「ええ、江奈のおかげよ、ありがとう」
「だから、私は何にもしてないってば」
「ううん。江奈のおかげでハナが元気になったのは事実だもの。感謝よ」
「……雪ちゃん」
雪ちゃんは自分で気付いていないかもしれないけど、すごく良い笑顔をしている。
私は、なんだかんだでハナちゃんの事が大好きなんだぁ、と実感した。
(たまに、扱いが雑になるけどね)
こないだの誕生日パーティーの時とか。
「さ!スッキリした所で、そろそろ戻りましょうか」
「うん」
酔いも少し冷めて来たし、私達はお店の中に戻る事にした。
何かお礼を言われる様な事をした覚えはないんだけど。
「ハナがね……」
「ハナちゃん?」
「うん。……江奈に出会ってから楽しそうなのよね」
「え?」
私と出会ってから?
クルッと振り返って、窓からお店の中を見る。
……確かに楽しそうに笑っているハナちゃん。
でもそれって、真司さんが戻って来てくれたからじゃ?
そう雪ちゃんに言ったら、「そうじゃないわ」と首を振った。
「ハナね、江奈に出会う直前に真司さんと一度別れたって話したでしょう?」
「うん……」
「危なっかしいな、とは思ってたんだけど、案の定、塞ぎ込んじゃってね。……ホラ、前に話した一件があるから、アタシも気が気じゃなかったのよ」
『前の一件』とは、ハナちゃんの自殺未遂の事だろう。
「かろうじて店をやる気力だけはあったみたいだから毎日の様に顔を見に来てたんだけど、江奈を初めてここに連れて来たあの日から妙に元気になり始めたのよね」
「そう、なの?」
「ええ。何がそうさせたのかは分からないけど、それは確かだわ」
不思議そうに雪ちゃんが頷いた。
私はハナちゃんと初対面《はつたいめん》した時の事を思い出す。
(う~ん。特に違和感なんてなかったけどなぁ)
初めて会った時からハナちゃんは凄く元気だった気がするし、落ち込んでる素振りなんて一切見られなかった。
(まあ、客商売をやっているんだから、落ち込んだまま接客はしないだろうけど)
思い返してみても、なんのヒントも得られない。
「別に私、何もしてないよ?」
「そうなのよね。だから余計に不思議でね……」
うーん…なんでだろう?
二人で首を傾げる。
サワサワサワ――……。
風に揺れるバラの隙間から、ワンちゃんを散歩している女の子が通り過ぎるのが見えた。
かわいいな、なんてボーッと見ていると、急にガバッ!と雪ちゃんが立ち上がって私はビックリした。
「ど、どうしたの?」
「エナ……」
「うん?なに?」
「そうよ、『エナ』よ……」
「うん、だからなに?私がどうしたの?」
要領を得ない会話にちょっとイラっとしながら聞き返す。
「違う、そうじゃない!……そうよ!エナよ、エナ!犬っ!!」
「い、犬……?」
尚更分からなくて頭がこんがらがる。
「そう!以前、ハナがボソッと言っていたのを思い出したわ!『一緒に育って来たワンちゃんが病気で亡くなった』って。その犬が確か女の子で名前が『エナ』よ!」
興奮気味に話す雪ちゃんの鼻息が荒い。
「えっと…つまり、可愛がっていたワンちゃんが亡くなった後、私が現れて、しかも名前が同じ『エナ』だったから親近感が沸いた、と言う解釈で良いのかな?」
「そうね、きっとそうだわ。多分、ハナの事だから運命とか感じちゃったんだと思う。絶対にそうよ!」
私の要約した解説に、雪ちゃんがうんうんと頷く。
なるほどね。
確かに、それはちょっと運命感じちゃうかもしれないな。
「あ~、スッキリした~。ずっと気になっていたのよね」
「良かったね」
「ええ、江奈のおかげよ、ありがとう」
「だから、私は何にもしてないってば」
「ううん。江奈のおかげでハナが元気になったのは事実だもの。感謝よ」
「……雪ちゃん」
雪ちゃんは自分で気付いていないかもしれないけど、すごく良い笑顔をしている。
私は、なんだかんだでハナちゃんの事が大好きなんだぁ、と実感した。
(たまに、扱いが雑になるけどね)
こないだの誕生日パーティーの時とか。
「さ!スッキリした所で、そろそろ戻りましょうか」
「うん」
酔いも少し冷めて来たし、私達はお店の中に戻る事にした。
23
あなたにおすすめの小説
幸せのありか
神室さち
恋愛
兄の解雇に伴って、本社に呼び戻された氷川哉(ひかわさい)は兄の仕事の後始末とも言える関係企業の整理合理化を進めていた。
決定を下した日、彼のもとに行野樹理(ゆきのじゅり)と名乗る高校生の少女がやってくる。父親の会社との取引を継続してくれるようにと。
哉は、人生というゲームの余興に、一年以内に哉の提示する再建計画をやり遂げれば、以降も取引を続行することを決める。
担保として、樹理を差し出すのならと。止める両親を振りきり、樹理は彼のもとへ行くことを決意した。
とかなんとか書きつつ、幸せのありかを探すお話。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
自サイトに掲載していた作品を、閉鎖により移行。
視点がちょいちょい変わるので、タイトルに記載。
キリのいいところで切るので各話の文字数は一定ではありません。
ものすごく短いページもあります。サクサク更新する予定。
本日何話目、とかの注意は特に入りません。しおりで対応していただけるとありがたいです。
別小説「やさしいキスの見つけ方」のスピンオフとして生まれた作品ですが、メインは単独でも読めます。
直接的な表現はないので全年齢で公開します。
運命には間に合いますか?
入海月子
恋愛
スペイン建築が大好きな設計士
大橋優那(おおはし ゆな) 28歳
×
せっかちな空間デザイナー
守谷翔真(もりや しょうま) 33歳
優那はスペイン建築を学ぶという夢が実現するというときに、空間デザイナーの翔真と出会った。
せっかちな彼は出会って二日目で優那を口説いてくる。
翔真に惹かれながらも、スペインに行くことが決まっている優那はその気持ちに応えられないときっぱり告げた。
それでも、翔真はあきらめてくれない。
毎日のように熱く口説かれて、優那は――
昨日、あなたに恋をした
菱沼あゆ
恋愛
高すぎる周囲の評価に頑張って合わせようとしているが、仕事以外のことはポンコツなOL、楓日子(かえで にちこ)。
久しぶりに、憂さ晴らしにみんなで呑みに行くが、目を覚ましてみると、付けっぱなしのゲーム画面に見知らぬ男の名前が……。
私、今日も明日も、あさっても、
きっとお仕事がんばります~っ。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる