婚約から始まる「恋」

観月 珠莉

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*51* 当て馬

以前に呼び出されてから、結構な期間が過ぎているように思う。
…そうは言っても、何年も過ぎている訳ではない。
それでも気分は『浦島太郎』というところだろうか?
伏魔殿に潜む魔物と対峙するかのような勇ましい気持ちで、タカラ・コンツェルンのビルを見上げた。

以前に出迎えを受けた男性が迎えてくれる。
きっと、六代目の懐刀か秘書なのだろう。
今回も多くを語らず、六代目当主が待つ部屋へと案内された。

一度体験済なので、どんな話をされてもそうビックリする事も無いだろう。
…そう思いながら、六代目当主と再会した。

「霧ヶ谷くん、儂は君を買い被っていたよ。未だに宝生院の邸に居るそうじゃないか。思っていたよりもずっと厚顔無恥な人間らしい。」
「……。」

私は、理解していたつもりでいたものの、それでも斬り付けられるような言葉に返す事が出来ない。

「お陰さまでな、儂の孫は霧ヶ谷くんが身を引いてくれたので、大変な良縁に恵まれた。そのお礼と言ってはなんだが、約束したとおり、花香流の家柄に相応しい相手を見繕っておいたよ。今日の夜に一席設けておいたので、話を纏めてくると良い。」

私は、どのような話を聞いてもビックリする事は無いと高を括っていた。
自分が思っているよりもずっと…宝生院家の六代目当主は傲慢な人間らしい。
さて…どうしたものか?

「六代目当主、お話させて頂いても?」
「なんだね。お礼ならば気に病む事は無い。」
「いいえ、そうでは無く。私が以前にお伝えした事は覚えておいでですか?」
「何かあったかね?」
「私は、七代目当主と直嗣さんの意向を確認した上で、お返事すると言ったかと思うのですが。」
「そんな事はあったかな?悪いが記憶に無いねぇ。」

頭の中で、お前は今どきの政治家かッ!!…とツッコミを入れたいが、場にそぐわないので止めた。
もう一点、大切な確認がある。

「六代目当主にお気遣い頂いたようですが、花香流家元には話は通っていますか?」
「喜ばれる事をしているんだ、特に問題は無いだろう。」

…ママに話は通していないらしい。
どんな席を設けたのかわからないが、行くのも癪だし行かないと花香流の家に泥を塗る事になり兼ねない…背水の陣な状況になってしまった。

この判断は、ここで私がするべきか否か…。

意外と面倒臭いゾ、宝生院家!!
いえ騒動は、おうちの中でだけやって頂きたい…というのは、結婚したいと思っている私が言ってはいけない言葉なのだろうか?

何処かにスーパーマン、落ちてないかなぁ…と場違いな事を想像していた。
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