うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

文字の大きさ
136 / 660

モンスター戦火

しおりを挟む
飛び込んだ1-Eの教室では、傷だらけになったシャークが3匹のゴブリンと対峙していた。

シャークは学校の椅子を振り回している。だがそんな取り回しの悪い武器では上手く戦えなかったようで、右上腕のブレザーが裂け黒く血が滲んでいる。さらにはチェックのスカートも破れ、ふとももに負った傷から出血し左膝まで濡らしていた。


「うわぁぁっ!!」

そんなシャークの背後には、怯えて固まっている女子生徒たち。

それぞれ鞄やバッグを盾に、それに一番外側にいる者が必死に椅子や机を盾にしようとしているが、シャークのように戦う意志のある者はどうにも皆無らしい。

「よく頑張ったシャーク!今助けるぞ!!」
『ドガガッ…!』


オレはそんなシャークの姿に理想とするヒーローの姿を垣間見た気がして、なんとも嬉しくなった。そこで邪魔な机や椅子を蹴散らして、真っ直ぐゴブリンどもの始末に向かう。

『ごぎんッ!…ゴシャッ(ぶぢゅ)!!』

左手を伸ばしゴブリンの首を握り潰し、右の岩塩パンチを振り下ろし突然の乱入者に振り向き驚いていたゴブリンの頭を粉砕。

「「「キャアアアアア~~~~ッ!!」」」

するとシャークの背後に隠れる女子生徒たちから、つんざくような悲鳴が。

うん、まぁ眼球とか前歯とか色々飛び散ったからね。そのリアクションも解るけど、もう少し音量は抑えて欲しい。

「ゲギャギャ…!!」
「おっと逃すか。ソルトパイルッ!」

一瞬でほかの仲間がやられ形勢不利と見て逃げ出そうとした最後の1匹には、アンダースローで岩塩杭をプレゼント。背中から串刺しにしてやる。

「「ふぅっ…(ばたた)」」
「「ひぃっ…(したたぱぱぱぱ…)」」

すると今度は、それを見て失神したり失禁する女子生徒が続出してしまった。

むぅ…、ダンジョンだと倒せばすぐ煙になって消えるから、綺麗に殺す方法なんて試したことが無かったんだよ、ごめんな。

それはともかく、これでもう安心だ。

ゴブリンが死んだことで緊張の糸が切れたのか、床にへなへなとへたり込むシャークへと近づき傷を診てやる。

「だいじょうぶかシャーク、ちょっと上着を脱がせるぞ。(ごそごそ)ウッ…これは結構深く斬られたな。でも骨は大丈夫そうだ、いま応急処置をするからジッとしてろ…」
「ハァ…ハァ…ハァ……」

へたり込んで肩で荒く息をつくシャークは、極度の緊張で瞳孔がキュっとしぼんでしまっている。

先ほどの警官や女性教諭も似たような状態だった。要するに正常な思考が飛んで、イッちゃってるヤツの眼だ。以前には瑠羽も、これと似たショック状態に陥ってしまったな。

「よしよし、よくがんばった。えらいぞ…」
『(きゅわわ~)』

そんなシャークの傷口にベタベタ粘液を這わせて錆片などの異物を取り除くと、なんちゃって滲出液を生成。で、急速に外側の水分だけを飛ばし、かさぶた状にしてやる。うむ、これでとりあえずの止血は充分だろう。

「え…?な、なんでアンタ、ジャングと同じことが出来るんだ…??」

お、もうショック状態から回復したか。

さすがはシャーク、伊達に女子高生でもミリオタやってるわけじゃないな。しかしオレのことが解らないか…。まぁ瀬来さんもオレが女の姿になったなんて、シャークに告げなかったんだな。よし、ならば…。

「オレはジャングの妹のサンドラだ。よろしくな。ココへは兄貴に頼まれて来た。おまえ、話に聞いていた通りチビなのにタフなんだな。ハハハ、一目で解ったぞ」
「え?あ…そ、そうかな?」

うん、この方が自然で納得できるだろう。

今正体を明かしても、混乱させるだけだし。で、肩に手をおき褒めてやると、シャークが意外にも頬を赤らめ照れている。ふふふ、なんだ。可愛いとこあるじゃないか。

「ほら、脚の傷も見せてみろ?」
「あ、うん。痛つつ…」

脚を伸ばして破れたチェックのスカートを自らめくり、眩しいふとももを晒すシャーク。だがそこにはゴブリンの錆びたナイフで刻まれた、稲妻マークみたいな傷が痛々しい。

「腕と同じように、粘液で錆を取ってから覆ってやるからな、少し痛むかもしれないぞ…(きゅわわ~)」
「う…うん…(チラ…もじもじ)」

「さ…これで良し。腕の方は傷が深いから、あとで医者に縫ってもらった方がいいぞ」
「あ、ありがとう…(ポッ)」


『『『きゅりぃぃ…ん♪』』』
「「「キャアアッ!…?、わぁぁあ…♪」」」

シャークが受けた傷の応急処置を終えると、ちょうどそこにピクシー達が戻ってきた。

それに驚いて悲鳴をあげかけた女子生徒たちだったが、現れたのが愛くるしい姿の小妖精だったことでその悲鳴を途中から明るい歓声に変える。

「「「ぴぃ~、ぴぴ!」」」
「お、任務完了か。無事制圧できたか?被害は?」

「「「ぴぴぴっぴ!」」」
「自分達には被害なし。人間に多少の負傷ありか。ご苦労、じゃあいっしょに少し外を回って掃除をするか」

「「「ぴぴっ!」」」

「よし、そういうわけだシャーク。また後で来るから大人しくしてろよ」
「あ…、いや。全然解んなかったんだけど…」

「とにかく、後は任せて大人しくしてろ。おまえたち!モンスターから守ってくれたシャークの面倒、しっかりとみてやれよ!」
「「「は、ハイッ!!」」」

ピクシーたちの姿を見て浮かれる女子生徒たちに念を押すと、オレは残敵掃討の為ピクシー達を連れ高校の外へと向かったのだった。


……。


そうして…。日が暮れて、夜空に星が瞬きだした。

さきほどまではアチコチで救急車に消防車にパトカーが走り回って煩い事このうえなく、住宅地に紛れ込んだモンスターをサーチ&デストロイするのを散々に邪魔してくれた。

それでもそんな救急車両が走り回ってくれたおかげか、ゴブリンなんかの多少は知恵の回るモンスターはどこかに身を潜めたようだ。オレもピクシー達も頑張ったが、それでもこの一帯に出没したモンスター全てを駆除できるわけではない。

なのでこの辺が頃合いとみて、シャークの所へ戻ることにした。

で、高校へ戻ると正門の前で険しい顔してサスマタを持った男性教諭に誰何されたが、「1-Eの利賀るりの知人だ」というと、すぐに通してもらえた。やはりこの高校をピンチから救ったピクシー達を連れていると、話が早くて助かる。

「賢治兄ぃ!」
「るりッ!」

こうして1-Eに赴くと、なんだかシャークとこの学校に来る途中で助けた若い警官が感動の再会をして抱き合っていた。ごほんごほん…うん、チミ達、ここは学校ですよ?

「あッ…!サンドラさんッ!!」

が、近づいてくるオレに気付いたシャークが、すぐに顔を向け笑顔で迎えてくれた。

「なんだ、ふたりは兄弟だったのか?」

そういえばシャークは、兄達の影響を受けてミリオタになったような事を言ってたもんな。

「いえ、るりは従妹になります。自分ばかりか、るりまで助けていただき本当にありがとうございました!」

ちょ…、うわ、ドキッとしたよ。

もしあのとき時間を惜しんで見捨てていたら、シャークの従兄はゴブリンに嬲り殺されてたところだったじゃないの。危ない危ない…。

「そ、そうか、まぁふたりとも無事で良かった…」
「賢治兄ぃも助けてくれたんだ!サンドラさん、ありがとうッ!」

ウッ…キラキラと輝く真っ直ぐな瞳がオレには辛い。

助けようと思ったのは7:3くらいの気持ちだったし、3割くらいは見捨てようとか思ってたし。

「と、ともかく無事でなにより。じゃ、じゃあオレはもう行くからな!」
「「ありがとうございましたッ!!」」

なにか居た堪れない思いに駆られ、そそくさとその場を後にする。うん、整体学校に置いてきたピクシーVも迎えに行かないといけないし。そうだよ、早く迎えに行ってやろう。


………。


「「「ズッキーさぁああん!!」」」
「おわ!?どうしたおまえたち!」

そうして急ぎ整体学校の教室へと戻ると、なぜか加藤と佐藤のふたりに詰め寄られた。というか他の生徒たちまでもがいる。

「なんなんですかあの子たちぃ!?」
「超カワイイんですけどッ!?」

ああ、なんだ。コイツ等もすっかりピクシー達の愛らしさにやられてしまったのか。

そんなピクシーVはというと、留守中モンスターの襲撃はもうなかったようで自分達が如何に強くてカッコイイかを整体学校の生徒たちに寸劇で見せていた模様。うん、というかその台本はオレが彼女らに観せた戦隊ヒーロー物じゃないの??


「ねっ!1匹だけで良いですから!どうか譲ってくれませんか!」

「俺も!」
「「俺も俺も!」」

「馬鹿モン!彼女たちを1匹などと呼ぶ奴に譲ると思ってるのか!」
「「「えぇ~ッ!そんなこと言わずにぃ~~っ!」」」

「ええい、しつこいッ!集団で迫って来るな!やれっピクシー達!この色ボケどもに、おまえたちの力を見せてやれッ!」

「「「ぴぴぃ!(しぴゅん!しゅぴゅぴゅん!)」」」
「「「ぐわぁあああああ!」」」

あ~あ、せっかくモンスタースタンピードを無傷で乗り越えられたのに。こんなことで怪我するなよな…。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...