うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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円運動抽出魔法陣と植物ダンジョン地下5層ボス

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インドすげぇ!最高ッ!マジでインドさんカッコイイっスよ!!

これが今のオレの、偽らざる本心。

なんと本日『インド政府がダンジョン内に描かれていた魔法陣を解析し、円運動の抽出に成功した』と報道があったのだ。

うん、コレがどれほど凄い事なのか、お分かり頂けるだろうか。

『円運動の抽出に成功』とは、『円運動を起こす魔法陣の構築に成功した』とも言い換えられる。そして円運動とは、電気を生み出すのに必要不可欠な運動だったりもする。

今現在、地球上にある既存の発電技術は火力水力風力原子力などなど様々あるが、要するにいずれもそれらの動力でプロペラやタービンを回して、ダイナモやらフライホイールといったモーターに繋いで電気を発生させている仕組み。

だから『円運動の抽出に成功』とは、『これからは魔法陣で電気が生み出せちゃうよ』と言っているのと同義といえよう。

世界ではロシアのウクライナ占領。ロシアは人道的見地からの保護だと言ってそれを否定しているが、その経済制裁の為に石油や天然ガスの価格がひどく高騰している。

そこに来てこの朗報。

最近では日本に続いてアメリカも回復剤の生成に成功していたが、それを遥かに超えて新たな時代の幕開けを感じさせるセンセーショナルなニュースに世界が沸いた。

これを知ると仁菜さんもすぐさまノートパソコンや通信端末を使って、インドの株式が詰め合わせになった証券商品の購入を検討していたしね。


ときに昨今の世界情勢はというと、各国で『ダンジョンなんとかしる!』のデモが行われていたり、暴動や治安の低下が取りざたされている。

大人しい国民性の日本では、まだそのような大きな暴動など起きていない。が、ネット上では政府への非難轟々。ニュースでは毎日のように盗難事件を取り扱っていて、ここ日本でも治安の低下が懸念事項のようだ。

あと先日には佐渡島を占拠している中国軍が、住民の一部を日本政府に開放した。

といってもこれは元々病院に入院をしていたような人達が大半で、要するに自分達で世話をするのが面倒になった為だろう。それでも中国側は大々的に人道的な姿勢を謳って住民の一部を解放したので、日本政府もそこを糸口により交渉の継続を模索しているといった感じだ。

…。

で、今日は日曜日で、本日もまたレンタカーで房総半島にあるサバゲダンジョンに向っていた。

なにせ女子大生3人がレベルアップ出来る手頃なダンジョンが、今のところそこしかないからね。カニダンジョンも地下1層からけっこう危なかったし、ウチの冷蔵庫ダンジョンに関しては言わずもがな…。

「すごいねぇインド」
「これでモノの値段も落ち着くとええんやけどなぁ」

そして車内の話題は、今朝のニュースで流れていたインドの件で持ちきり。

ポコポコとダンジョンが出来るせいで既存のライフラインはあちこち損傷し、地震や停電なんかも各地で頻繁に起きている。ウチは巨大カマドウマや巨大カニのおかげで食費がほんと助かっているが、ほとんどの人は流通が妨げれた事で生じた物価高が家計を直撃し、悲鳴をあげていることだろう。

それ故に、この明るいニュースには相当な期待がかけられるというものだろう。

「ね、魔力炉なんてのが出来たらさ、どんな感じになるんだろうね!」

後部座席の瀬来さんは朝から元気いっぱいで、未来を胸に思い描いている。きっとその大きなお胸には、希望がたくさん詰まっているに違いない。今日もたわわに実っていて、じつに素晴しい。

「そうだねぇ。最初は蒸気機関みたいに、魔法的な回路と炉と動力が一体になったモノが生み出されるんじゃないかな」

新たな時代の幕開け。これにより魔法的産業革命が起きるとするならば、これからはどんどんと魔法的な科学、魔学なんてモノが発展するんではなかろうか。

AIや量子コンピューターなどの最先端技術と、魔法的なモノが融合して進歩していったとしたら、いったいどんな未来になるのやら。

「でも昔の人からしたら、きっと今の世界も魔法で動いてるみたいに思いますよね」

うん、それもまた助手席に座っている瑠羽の言う通り。

進んだ科学技術は魔法にも等しい。一声かければパッと部屋の電気が点いたり、問いかければすぐに通信端末が返事をする現在の姿を見たのなら、昔の人はそれを魔術の御業や魔法の鏡とでも話しているように思うことだろう。


……。


「あ、ジャングてめぇ!あれから思い出して夜眠れなくなったんだぞ!どうしてくれんだよ!!」

朝8時半、サバゲフィールドの駐車場に到着すると、早速シャークが喰ってかかってきた。コイツも朝から元気なヤツだ。

「ふぅむ、そうか。なら最後までしっかりと想像してみるといい。まず最悪を想定し、そこから打開策をこうじられるかどうかを、色々と考えてみるんだ」

うん、コレはオレもずっとやってきた事。

左足を巨大蛆に溶かされて失った夜。その晩は高熱が出て、随分とうなされた。

膝からどんどんと溶けていく組織が広がって、最後には全身がドロドロに溶けてしまうという悪夢。オレはその悪夢の中で身体の溶解をなんとか食い止めようと、何度も自身の身体をグラインダーで切り刻んでいた。

だが何度やってもドロドロに溶けては夢の中で死に、その度に場面が巻き戻ってまた同じことを繰り返す。

なので途中からはやり方を変えていった。が、結局それでもダメで、最後はありったけの魔力を全て患部に注ぎ込んだら大爆発した。まぁ単に爆死したわけだが、全力を出し切ってやられると意外とすんなり事態を受け入れられるもんなんだな~、などとも思った。

って、コレじゃなんの解決にもなってないか。

「昔の武士は、常に頭上から重い巨石が降ってくるのを想像して、精神修練を積んだそうだぞ?常在戦場、ならゴキくらい軽いもんだろ」
「ナッ!その名前出すなよッ!肌にブツブツ出てくるだろぉ!!」

怒ったシャークがけっこうな力で胸や腹をボコボコと殴ってくる。イテッ、こいつ結構力あるな。さすがしっかりと鍛えてレベルアップしただけのことはある。

「おいジャング、来てくれ!打ち合わせをしよう」
「ほらシャーク、提督に呼ばれたからもう行くぞ。その話はまた今度だ」

「………」

やれやれ。まだ不服そうな目で睨んでくるシャークをおいて、提督の元へと向かう。

「ジャング、コレをみてくれ」
「お、コレはいいな!作ったのか?」

「ああ、ウチのメンバーにはこういう細工の得意なヤツも多いんでな」
「すごいな…。まるでAチームみたいじゃないか」

提督から手渡されたのは、先端を斜めにカットした鉄製の竹槍。でもただの竹槍じゃあない。

持ち手の部分にボタンがあり、それを押すとギミックが作動してガシャンと勢いよく内部が先端へと押し出される仕組み。先端の穴に鉄パイプを入れて押し込むと、ストッパーがかかる。試しにその状態で地面の土をグリグリして詰め込み、人のいない方向に向けてボタンを押してみた。

するとガシャン!を音がして、詰めた土が勢いよく飛び散った。

なるほど、提督たちはオレがいなくても植物モンスターを狩れるようにと、自前の対植物モンスター用特別攻撃武器を用意していたのだ。この先端に塩を詰めれば、オレが以前に生み出していた塩の穂先とほぼ同等の効果が期待できるだろう。

「うん、いいじゃないか。この先端には塩を詰めるんだろ?」
「ああ、水で湿らせた塩をバケツにたっぷりと準備してある。使う度にまた充填をしなければならないが、それでも塩無しで戦うより格段に良い」
「そうか、いやよく考えたもんだ」

聞けばトライデントのメンバーには、自動車整備工場や金物工場で働いている者達もいるとか。

そんなメンバーが会社で作業機械を拝借して作成したものだという。コレがあれば誰でも容易に植物モンスターを狩れるので、オレも塩の穂先を作る面倒がかからず非常にありがたい。


……。


そして…。

現在であるが、植物ダンジョンの地下5層でボス級モンスターと対峙している。いやほら、瑠羽たちもしっかり成長していて、サクサクッとここまで探索出来ちゃったのよ。

地下4層にいたモンスターは、蔓のモンスターだった。

なんか洋風円筒型のポストみたいなサイズの緑の塊が、その蔓をワサワサと地面に広げて這わせながら近づいてきたのよ。でもすこぶる動きが緩慢で、どちらかというとそういったゆっくりとした動きでそっと敵に忍び寄り、知らぬ間に絡め取るのを得意そしてそうな感じ。

『ファンタジー世界の森で、野営をしている夜とかに襲いかかってきそうなモンスター』とでもいえばいいだろうか。

だが見るからにそんな感じだったので、緑の少ない洞窟内ではめちゃくちゃ目立つ。

さらに動きも緩慢なので、まったく敵にならない。でもその蔓には蔦漆ツタウルシのようにカブれる毒があるようで、その点だけは注意。だがそれさえ注意すればなんの問題も無かった。なんだかこのダンジョンにはカンフーバンブーといい、配置ミスで損をしているようなモンスターが多いな。

そして地下5層に居たのは、人の背丈とそう変わらない低木のモンスター。

歩き回っていた木で、まさしくウォーキングプラント。見た目も木そのもので、コイツをファンタジー的知識に当て嵌めトレント種とするならば、若木魔物ヤングトレントといったとこだろう。

だがコレもまたカンフーバンブーと戦い方は似ていたので、即座に撃破。そんな感じで勢いに乗って快進撃していたら、リンゴのような果実をつけた木のモンスターに遭遇してしまったという訳。

ソイツがいたのはドーム状の広い空間。そこはいかにも癒し空間っぽい雰囲気で、丁度いい休憩場所に見えたのだ。

で、ピクリとも動いていなかったから自然木なのかと思ったら、おもくそモンスターでやんの。

くそう、擬態に騙された。いや、そもそも植物モンスターが動いていない状態を擬態と呼べるのか…まんまやん?

ともかく…。

「「くしゅん!くしゅん!」」

マスクを開けて会話をしていた事が仇となり、仁菜さんと瑠羽はボス級モンスターが人知れず発動していたらしい花粉攻撃をうけてしまった。ふたりは猛烈な目のかゆみと鼻炎に襲われ、可哀そうにくしゃみも止まらないでいる。

しかも2つある退路は、いつの間にか現れたトレントがそれぞれ2体ずつに別れしっかり塞いでいて脱出は不可能。

この場はオレと瀬来さん、それに異変を感じてすぐに口元を布で覆ったシャークの3人で切り抜けるほかはなさそうだ。

眼の前には、林檎の木が化け物になったようなボス級モンスターが迫る。

5メートルを超える背丈に、まるでお約束の如く幹には憤怒の形相を浮かべた顔。腕のように振り回す枝は太く、茂った葉も刃物のように鋭い。

うむむ、瑠羽と仁菜さんを背に守り、3人でこのボス級モンスターといったいどう戦うか?
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