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スキルショック
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「アッ!おまえなにスキルオーブ食ってんだよッ!?」
午後17時、整体学校でしっかりと勉学に勤しみ帰宅すると、スライム狩りをさせていた猿がスキルオーブを食っていた。
すると叱られた猿は、『ンガグック!』と喉を詰まらせながら目を白黒させた後で、『え?なんでワイ怒られなアカンの??』という抗議の眼差しをこちらに向けてきた。
「ああ、いや、怒っている訳じゃないぞ。ただそういう行動を取るのなら、ひとこと確認が欲しかっただけだ」
うん、カードから召喚したいわゆるテイム状態のモンスターとは、召喚者とモンスターとの間にパスが繋がる。これにより言葉の解らないモンスターとも、簡単な意思疎通ならば可能となるのだ。
だがこれはあくまでも簡単な意思疎通なので、うまくいかない事もまま起きる。
今回のケースでいえばオレは猿たちに『スライムを狩ってドロップを集めろ』と命じた訳だが、オレの見解では当然そのドロップのなかにスキル―オーブも含まれていた。しかし猿の側の見解では、『獲物を倒して手に入れた力なんやから、コレはワイのもんや!』という認識だったのだろう。
ちなみにこの同じ命令に対して巨大ナメクジは、スライムは倒すもののドロップは回収せずに放置している。
それを見かねて猿が代わりにドロップを拾っているくらいだ。というかお腹が満腹するまでは、ドロップの魔石も生八つ橋も食べ続けてしまう。まぁ巨大ナメクジにアイテム拾えといっても、手がないのではどうしようもない訳だが。
なので腹を満たすことに関しては、『食うな』とは命じられていなかったから食っただけという認識なのだろう。
モンスターだけに、『スライムを狩ってドロップを集めろ』と命じられても、『じゃあ集めてるのだから自分達で食べちゃいけないよね!』とは、考えない訳だ。
これは猿もカエルも同様で、小腹が空くと魔石も生八つ橋も好き勝手にパクパクと食べている。ま、それでも満腹すればちゃんと前室までドロップを集めてくるので、収支としてはプラスになってるからいいけど。
ふ~ん…でも、モンスターもスキルオーブって使えるんだ。
試しに猿・カエル・ナメクジを集めて【酸】のスキルが使えるのか実験してみたら、なんと3体とも使えた。ただまだレベルが低いのと扱いに慣れてないので、『べしゃッ!』と酸の液体が出て来ただけだけど。
「ふ~む、そうか…。いや、待てよ!コレってよく考えるとすごいなッ!」
モンスターが新たなスキルを後発的に覚えられるとなれば、凄い事だ。なにせスキルを1つ手にするだけでも、戦力的に全然違ってくる。
もしこれを人為的に指導して成長させてやれば、『スキルカスタマイズゴブリン』とかいって『一見ただのゴブリン、でも中身はまったくの別物!』みたいな事ができちゃうかもしれない。
『いやいやこれは良い事を知った』とほくほくしながら集めた3体に仕事に戻るよう命じ、帰る途中で自分でもスライムを狩って、スキルオーブを手に入れてみる。
こう『ずびゃ!』と素手で核を毟り取って、【簒奪】を発動させながら握りつぶせばホラこのとおり。これぞスライムのスキルオーブ【簒奪】獲得法なり。
そして『これはオレもウカウカしていられないぞ』と、【酸】のスキルオーブに魔力をまとわせ力の解放を念じる。
『きゅわ~!ぱ…ぱちちち!ぱしゅーんッ!!』
「ナニッ!?」
(え…まさかスキルの獲得に失敗した!?)
いつもなら『きゅわ~!』の後はこう『ぱわわ~!』となってスキルオーブのなかに秘められていた力が身体に流れ込んでくるはずなのに、どういう訳だか今は『ぱちちち!ぱしゅーんッ!!』ってな感じでその力が散ってしまった。
技能:
【強酸】2・【俊敏】2・【病耐性】7・【簒奪】・【粘液】9・【空間】6・【強運】1.4・【足捌】・【瞑想】・【塩】5・【図工】・【蛆】2・【女】・【格闘】6・【麻痺】4・【跳躍】9・【頑健】8・【魅惑】
不審に思いながらもスキルを確認してみると、やはりレベルアップはしていない。
スキル【強酸】は元は【酸】。これがレベル10になった時に【強酸】変わったので、成功していれば【強酸】2.1となっていた筈…。
(う、これはいったいどういう事だ…!?)
試しにもう一度スライムを探して回り、再びスキルオーブを取得し使用してみると、またしても『ぱしゅーん!』と弾かれてしまった…。
(ゲッ…!マジか!?スキルのレベルがあげられないだと!?)
【強酸】…だけならばいい。
【強酸】2がスキルレベルのマックスで、カンストしている可能性もあるから。だがもし他のスキルも総じてダメとなると、事態は深刻だ…。
「さっき…猿はスキルオーブを食べていたよな?それでスキルも取得できていたはず。なのにオレが手にしたスキルオーブだけが、『たまたま連続して不良品でした』って可能性は…?」
慌てて地下1層を走ってスライムを探し、またスキルオーブを手に入れる。
「あ、そうだレッド!レッドスライムかもん!おまえちょっとこのスキルオーブたべてみてくれ!」
義足の中から姿をみせたレッドスライムにスキルオーブを渡すと、すぐに取りこみ半透明のスライムボディのなかでスキルオーブが輝いた。
『きゅわ~!ぱわわ~ッ!!』
(ウッ…!やっぱり、やっぱりオレだけがスキルオーブを受け付けないのか…!?)
愕然とするような事実を突きつけられ、オレは目の前が真っ暗になるような眩暈を感じた。
…。
よろよろと自室に戻ると、どさりとパソコンチェアに腰を下ろす。
なんてことだ、これでは計画がまったく狂ってしまう。計画とは、もちろんダンジョン攻略計画のこと。少しづつでも強くなって、いつかはダンジョンを攻略してやろうと思っていたのに…。
「いや…!焦っても慌てても仕方がない。ここは落ち着いて良く考えよう。そうだな、よしまずは落ち着く為に珈琲を淹れるか…」
お湯を沸かし、仁菜さんが好きで飲んでいるココナッツフレーバーの珈琲を薄く淹れ、それを飲んで心を落ち着かせる。
「ふぅ~~ッ、死んでない…まだ死んでないぞ。そうだ、死ぬこと以外はなんてことはない…!」
ただちょっと急にスキルがこれ以上成長できないと知って、ショックを受けてしまっただけ。
スキルオーブを使用したのに効果が発揮されず消えてしまったのだって、自販機に小銭を飲まれてしまったようなモンだ。…くそう、あれは悔しい!特にもう小銭が無くて紙幣を投入しなければならない時など、ことさらに悔しいぞ!
って…まだオレは動転しているのか?もっと落ち着け…!そうだ。
「(ぷるるる…!)あ、瑠羽?うん、特に用はないんだけど、声が聞きたくて…」
オレは救いを求めて、瑠羽に電話をかけた。
すると瑠羽はオレからの電話を素直に喜んでくれ、他愛のない会話に付き合ってくれる。『今日は図書館で気になる本をみつけました』とか、『昨日はおかあさんといっしょに料理を作ったの』とか。
電話越しに好きな子と話す時間。嬉しい…何気ない瑠羽の優しさが、心に滲みた…。
…。
こうして瑠羽のあたたかな優しさにより心の平静を取り戻したオレに、隙は無かった。
もう一度熱い珈琲を淹れ直すと、ノートを開いてペンを走らせる。そうだ、問題の見える化を行ない、問題点を明確に把握するのだ…。
「【酸】のスキルオーブ…猿、使えた…レッドスライムも使えた…オレ、使えない…と」
こうして視覚化することで頭の中で主観的に物事を考えるだけでなく、客観的視野も含めた多角的なモノの見方が独りでも出来るようになるのだ。
技能:
【強酸】2・【俊敏】2・【病耐性】7・【簒奪】・【粘液】9・【空間】6・【強運】1.4・【足捌】・【瞑想】・【塩】5・【図工】・【蛆】2・【女】・【格闘】6・【麻痺】4・【跳躍】9・【頑健】8・【魅惑】
「1234…と、ぜんぶで125か。スキルを全て数えると、こんな数字になるのだな」
スキル自体がレベルアップにより名称の変わった【強酸】2・【俊敏】2・【強運】1.4・【魅惑】があるので解り難いが、元の名称のままであれば【酸】20・【敏捷】20・【運】14・【魅了】10となっていた筈。
「スキル【簒奪】のお蔭で、数だけは凄い事になってるな。でもこれが、人より優っているのか?う~む、優っていると思いたいが…正直まるで解らん。今のネットは虚偽情報ばかりで、まるでアテにならないからな…」
ネット上のダンジョン情報は、現在それこそ酷い事になってる。
元々、ダンジョンやらモンスターといった単語は、ゲームでも頻繁に使われていた。なのでそういった単語で検索をかけても以前からあるゲーム関連の情報が多数ヒットしてしまい、まともにリアルダンジョンへの情報に辿り着くだけでも大変なのだ。
でもそれは一方で良い面もあり、匿名掲示板などでリアルダンジョンの話をしていても普通の人にはそれがゲームの話なのかリアルダンジョンの話なのか解り難くいというメリットもあった。
しかしそういった不都合を排して、リアルダンジョンの情報を皆で共有しようと立ち上げられたサイトでは、悪質なデータの改ざんが頻発しとてもじゃないが用をなさない状態にされてしまっている。
例えば人を簡単に殺せるような強いモンスターを雑魚モンスター扱いで詳細が載せられたり、それとは逆に雑魚なモンスターをさぞ高難度の攻略対象に見せかけたり…などといった具合にだ。
そしてまた、匿名掲示板の荒れ方も酷い。
どういう訳だか最強を自称する者たちが実際あるかどうかも怪しい自慢のマイスキルを延々と書き連ね、スキルの考察をしようにも『おまえらカス!俺最強!』と最強風を吹かしまくって邪魔をしてくる始末で、まるでお話にならない。
そんなに最強なら、『さっさと交通インフラに支障をきたしているダンジョンでも駆除してこいよ』と言いたい。そしたら皆キミのことを褒め称えてくれるのだから本望だろう?無駄に自宅のパソコンの前で管巻いてるより、よっぽどイイ筈だ。
ま、そんな状況なので本当に有益な情報の交換はSNSのボイチャなどで行なわれている…らしいのだが、それに参加するのにもまた結構な費用の会員登録が必要だったりして、オレは参加はしていない。
だって他にもネット上には、『ダンジョンで楽して稼ぐ』や『毎日10分で簡単レベルアップ』などといった謳い文句で、何も知らない情報弱者から金をむしろうとする詐欺広告で溢れかえっているから。
ダンジョンが解放されていない現状でもこの有様なのだから、まったく驚きだ。
そしてオレもまたダンジョンで稼いでいる者のひとりであるが、別段楽とも思わないし『得意先に何を納品しているかなどの情報を売って、金銭を得てやろう』とも思わない。
なので、まずこういった情報商材関係は、ガセ情報で間違いないだろう。
それをするくらいなら、モンスターをもっと使役して納品数を増やした方がよほど稼げる。それを他人に教えて自ら受給を悪化させれば、たちまちその分買取単価が下がって将来は情報商材で得た利益以上に損をすることになってしまうのだから。
「ともかく、レベルが上がればまたスキルも取得できるようになるのかどうか。そういった事を地道に検証していくより他に無いか…」
他にも考えられる可能性をいくつか書き記すと、オレは溜息を吐きつつノートを閉じたのだった。
午後17時、整体学校でしっかりと勉学に勤しみ帰宅すると、スライム狩りをさせていた猿がスキルオーブを食っていた。
すると叱られた猿は、『ンガグック!』と喉を詰まらせながら目を白黒させた後で、『え?なんでワイ怒られなアカンの??』という抗議の眼差しをこちらに向けてきた。
「ああ、いや、怒っている訳じゃないぞ。ただそういう行動を取るのなら、ひとこと確認が欲しかっただけだ」
うん、カードから召喚したいわゆるテイム状態のモンスターとは、召喚者とモンスターとの間にパスが繋がる。これにより言葉の解らないモンスターとも、簡単な意思疎通ならば可能となるのだ。
だがこれはあくまでも簡単な意思疎通なので、うまくいかない事もまま起きる。
今回のケースでいえばオレは猿たちに『スライムを狩ってドロップを集めろ』と命じた訳だが、オレの見解では当然そのドロップのなかにスキル―オーブも含まれていた。しかし猿の側の見解では、『獲物を倒して手に入れた力なんやから、コレはワイのもんや!』という認識だったのだろう。
ちなみにこの同じ命令に対して巨大ナメクジは、スライムは倒すもののドロップは回収せずに放置している。
それを見かねて猿が代わりにドロップを拾っているくらいだ。というかお腹が満腹するまでは、ドロップの魔石も生八つ橋も食べ続けてしまう。まぁ巨大ナメクジにアイテム拾えといっても、手がないのではどうしようもない訳だが。
なので腹を満たすことに関しては、『食うな』とは命じられていなかったから食っただけという認識なのだろう。
モンスターだけに、『スライムを狩ってドロップを集めろ』と命じられても、『じゃあ集めてるのだから自分達で食べちゃいけないよね!』とは、考えない訳だ。
これは猿もカエルも同様で、小腹が空くと魔石も生八つ橋も好き勝手にパクパクと食べている。ま、それでも満腹すればちゃんと前室までドロップを集めてくるので、収支としてはプラスになってるからいいけど。
ふ~ん…でも、モンスターもスキルオーブって使えるんだ。
試しに猿・カエル・ナメクジを集めて【酸】のスキルが使えるのか実験してみたら、なんと3体とも使えた。ただまだレベルが低いのと扱いに慣れてないので、『べしゃッ!』と酸の液体が出て来ただけだけど。
「ふ~む、そうか…。いや、待てよ!コレってよく考えるとすごいなッ!」
モンスターが新たなスキルを後発的に覚えられるとなれば、凄い事だ。なにせスキルを1つ手にするだけでも、戦力的に全然違ってくる。
もしこれを人為的に指導して成長させてやれば、『スキルカスタマイズゴブリン』とかいって『一見ただのゴブリン、でも中身はまったくの別物!』みたいな事ができちゃうかもしれない。
『いやいやこれは良い事を知った』とほくほくしながら集めた3体に仕事に戻るよう命じ、帰る途中で自分でもスライムを狩って、スキルオーブを手に入れてみる。
こう『ずびゃ!』と素手で核を毟り取って、【簒奪】を発動させながら握りつぶせばホラこのとおり。これぞスライムのスキルオーブ【簒奪】獲得法なり。
そして『これはオレもウカウカしていられないぞ』と、【酸】のスキルオーブに魔力をまとわせ力の解放を念じる。
『きゅわ~!ぱ…ぱちちち!ぱしゅーんッ!!』
「ナニッ!?」
(え…まさかスキルの獲得に失敗した!?)
いつもなら『きゅわ~!』の後はこう『ぱわわ~!』となってスキルオーブのなかに秘められていた力が身体に流れ込んでくるはずなのに、どういう訳だか今は『ぱちちち!ぱしゅーんッ!!』ってな感じでその力が散ってしまった。
技能:
【強酸】2・【俊敏】2・【病耐性】7・【簒奪】・【粘液】9・【空間】6・【強運】1.4・【足捌】・【瞑想】・【塩】5・【図工】・【蛆】2・【女】・【格闘】6・【麻痺】4・【跳躍】9・【頑健】8・【魅惑】
不審に思いながらもスキルを確認してみると、やはりレベルアップはしていない。
スキル【強酸】は元は【酸】。これがレベル10になった時に【強酸】変わったので、成功していれば【強酸】2.1となっていた筈…。
(う、これはいったいどういう事だ…!?)
試しにもう一度スライムを探して回り、再びスキルオーブを取得し使用してみると、またしても『ぱしゅーん!』と弾かれてしまった…。
(ゲッ…!マジか!?スキルのレベルがあげられないだと!?)
【強酸】…だけならばいい。
【強酸】2がスキルレベルのマックスで、カンストしている可能性もあるから。だがもし他のスキルも総じてダメとなると、事態は深刻だ…。
「さっき…猿はスキルオーブを食べていたよな?それでスキルも取得できていたはず。なのにオレが手にしたスキルオーブだけが、『たまたま連続して不良品でした』って可能性は…?」
慌てて地下1層を走ってスライムを探し、またスキルオーブを手に入れる。
「あ、そうだレッド!レッドスライムかもん!おまえちょっとこのスキルオーブたべてみてくれ!」
義足の中から姿をみせたレッドスライムにスキルオーブを渡すと、すぐに取りこみ半透明のスライムボディのなかでスキルオーブが輝いた。
『きゅわ~!ぱわわ~ッ!!』
(ウッ…!やっぱり、やっぱりオレだけがスキルオーブを受け付けないのか…!?)
愕然とするような事実を突きつけられ、オレは目の前が真っ暗になるような眩暈を感じた。
…。
よろよろと自室に戻ると、どさりとパソコンチェアに腰を下ろす。
なんてことだ、これでは計画がまったく狂ってしまう。計画とは、もちろんダンジョン攻略計画のこと。少しづつでも強くなって、いつかはダンジョンを攻略してやろうと思っていたのに…。
「いや…!焦っても慌てても仕方がない。ここは落ち着いて良く考えよう。そうだな、よしまずは落ち着く為に珈琲を淹れるか…」
お湯を沸かし、仁菜さんが好きで飲んでいるココナッツフレーバーの珈琲を薄く淹れ、それを飲んで心を落ち着かせる。
「ふぅ~~ッ、死んでない…まだ死んでないぞ。そうだ、死ぬこと以外はなんてことはない…!」
ただちょっと急にスキルがこれ以上成長できないと知って、ショックを受けてしまっただけ。
スキルオーブを使用したのに効果が発揮されず消えてしまったのだって、自販機に小銭を飲まれてしまったようなモンだ。…くそう、あれは悔しい!特にもう小銭が無くて紙幣を投入しなければならない時など、ことさらに悔しいぞ!
って…まだオレは動転しているのか?もっと落ち着け…!そうだ。
「(ぷるるる…!)あ、瑠羽?うん、特に用はないんだけど、声が聞きたくて…」
オレは救いを求めて、瑠羽に電話をかけた。
すると瑠羽はオレからの電話を素直に喜んでくれ、他愛のない会話に付き合ってくれる。『今日は図書館で気になる本をみつけました』とか、『昨日はおかあさんといっしょに料理を作ったの』とか。
電話越しに好きな子と話す時間。嬉しい…何気ない瑠羽の優しさが、心に滲みた…。
…。
こうして瑠羽のあたたかな優しさにより心の平静を取り戻したオレに、隙は無かった。
もう一度熱い珈琲を淹れ直すと、ノートを開いてペンを走らせる。そうだ、問題の見える化を行ない、問題点を明確に把握するのだ…。
「【酸】のスキルオーブ…猿、使えた…レッドスライムも使えた…オレ、使えない…と」
こうして視覚化することで頭の中で主観的に物事を考えるだけでなく、客観的視野も含めた多角的なモノの見方が独りでも出来るようになるのだ。
技能:
【強酸】2・【俊敏】2・【病耐性】7・【簒奪】・【粘液】9・【空間】6・【強運】1.4・【足捌】・【瞑想】・【塩】5・【図工】・【蛆】2・【女】・【格闘】6・【麻痺】4・【跳躍】9・【頑健】8・【魅惑】
「1234…と、ぜんぶで125か。スキルを全て数えると、こんな数字になるのだな」
スキル自体がレベルアップにより名称の変わった【強酸】2・【俊敏】2・【強運】1.4・【魅惑】があるので解り難いが、元の名称のままであれば【酸】20・【敏捷】20・【運】14・【魅了】10となっていた筈。
「スキル【簒奪】のお蔭で、数だけは凄い事になってるな。でもこれが、人より優っているのか?う~む、優っていると思いたいが…正直まるで解らん。今のネットは虚偽情報ばかりで、まるでアテにならないからな…」
ネット上のダンジョン情報は、現在それこそ酷い事になってる。
元々、ダンジョンやらモンスターといった単語は、ゲームでも頻繁に使われていた。なのでそういった単語で検索をかけても以前からあるゲーム関連の情報が多数ヒットしてしまい、まともにリアルダンジョンへの情報に辿り着くだけでも大変なのだ。
でもそれは一方で良い面もあり、匿名掲示板などでリアルダンジョンの話をしていても普通の人にはそれがゲームの話なのかリアルダンジョンの話なのか解り難くいというメリットもあった。
しかしそういった不都合を排して、リアルダンジョンの情報を皆で共有しようと立ち上げられたサイトでは、悪質なデータの改ざんが頻発しとてもじゃないが用をなさない状態にされてしまっている。
例えば人を簡単に殺せるような強いモンスターを雑魚モンスター扱いで詳細が載せられたり、それとは逆に雑魚なモンスターをさぞ高難度の攻略対象に見せかけたり…などといった具合にだ。
そしてまた、匿名掲示板の荒れ方も酷い。
どういう訳だか最強を自称する者たちが実際あるかどうかも怪しい自慢のマイスキルを延々と書き連ね、スキルの考察をしようにも『おまえらカス!俺最強!』と最強風を吹かしまくって邪魔をしてくる始末で、まるでお話にならない。
そんなに最強なら、『さっさと交通インフラに支障をきたしているダンジョンでも駆除してこいよ』と言いたい。そしたら皆キミのことを褒め称えてくれるのだから本望だろう?無駄に自宅のパソコンの前で管巻いてるより、よっぽどイイ筈だ。
ま、そんな状況なので本当に有益な情報の交換はSNSのボイチャなどで行なわれている…らしいのだが、それに参加するのにもまた結構な費用の会員登録が必要だったりして、オレは参加はしていない。
だって他にもネット上には、『ダンジョンで楽して稼ぐ』や『毎日10分で簡単レベルアップ』などといった謳い文句で、何も知らない情報弱者から金をむしろうとする詐欺広告で溢れかえっているから。
ダンジョンが解放されていない現状でもこの有様なのだから、まったく驚きだ。
そしてオレもまたダンジョンで稼いでいる者のひとりであるが、別段楽とも思わないし『得意先に何を納品しているかなどの情報を売って、金銭を得てやろう』とも思わない。
なので、まずこういった情報商材関係は、ガセ情報で間違いないだろう。
それをするくらいなら、モンスターをもっと使役して納品数を増やした方がよほど稼げる。それを他人に教えて自ら受給を悪化させれば、たちまちその分買取単価が下がって将来は情報商材で得た利益以上に損をすることになってしまうのだから。
「ともかく、レベルが上がればまたスキルも取得できるようになるのかどうか。そういった事を地道に検証していくより他に無いか…」
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