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西の河原温泉
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瀬来さんとふたり、温泉街を歩く。
ほんとは肉を配るのも手伝って帰りも送ってもらう予定だったけど、人に怪我をさせたりと騒ぎが起きてしまったので、先に抜けさせてもらったのだ。
いやほら、手伝うにしてもあの音夢くんの仲間といっしょじゃない。だからお互いにねぇ…。
そんな訳であちこちに電話をかけアレコレと手配してる笹山さんに「タクシーでも拾って帰るから」と、その場で別れを告げた。すると笹山さんも「若いのが悪かったね」と、オレ達に頭を下げてくれた。
うん、そのまま残っててもオレ達がトラブルの元になるだけだろうから、これがベターだろう。
去り際もあのやかましい子が、「ハァ!?アンタらに山の主が倒せるわけないじゃない!」などと喚いていたし。
でもトラックに山と積まれていたのが超巨大猪の肉と知ると、絶句してた。トラックの荷台で、しかもたっぷりと塩をまぶしてあったから、コンクリのブロックにしか見えなかったようだ。まぁ特大のシシ肉ブロックだったから、ふつう肉の切り身とも思わないか。
そんな超巨大猪だが、ここいらではそういうのがいるんじゃないかっていうくらいのUMA的扱いだったらしい。
まぁアイツを発見したのなら、まず自衛隊呼ぶよな。
そこでダンジョン能力を得てちょっと調子に乗ってる若者たちに釘を刺す為にも、「ヌシ?あれが?ほぉ、まぁ倒すのに5分とかからなかったがなぁ」などと放言してやった。
するとまぁ、面白いくらいにざわつくざわつく。そんな彼らに背を向け、何でもない事のように去ってきたのだ。どうよ、強者感プンプンじゃない?
そんな感じでブラつく、お土産屋の並んだ通り。
で、眼を向けるも普段なら観光客で賑わっているだろう景色も、いまは静か。
ほとんどが閉まっていて、開いてるお店もまばら。それに開いてる店もほかにやることないから仕方なくあけましたって感じで、温泉まんじゅうを蒸す機械も店先には出さずシートがかけられたままだったりする。
で、そんななかどこに向かっているのかというと、西の河原露天風呂。
それは緑豊かな公園のなかにある、天然温泉。なんか気分の悪いことになってしまったし、ここはひとっ風呂浴びてサッパリして帰ろうと思ったのだ。
…。
土産物屋の並ぶ温泉街を抜け公園に入ると、視界がひらけ吹く風が気持ちいい。先まで坂道が続いていて、立体的な地形もまた見ていて面白い。
そうして歩いていると、ずっと黙りこくっていた瀬来さんが口を開いた。
「アレね…、前の彼氏なの…」
「うん、そうか」
瀬来さんに対する馴れ馴れし過ぎる態度から、なんとなく察してはいた。
でもま、彼ではなくアレ呼ばわりな時点で、瀬来さんのなかでは終わった関係なのだろう。それから、瀬来さんは途切れ途切れではあるものの、経緯を説明してくれた。オレに対しても申し訳ないと思ってくれたのだ。
それによると音夢くんとは、高校時代に交際していたそうな。
声を掛けられ、ちょっとカッコイイかなと交際に応じた。ただ初めは良かったものの次第に束縛してきたり、まずマウントとってから話しだすような態度に嫌気がさしてその後の交際を断念。
しかし別れ話をきりだすと途端に機嫌を悪くし話をきかなくなったりと当時の瀬来さんの手には負えなかったので、東京の大学に進学する形で離れたのだという。
ふ~む、なるほど。それで音夢くんの方は瀬来さんに未練タラタラだった訳か。
瀬来さんは、勝手にギルドの受付嬢を愛でる会なんてファンクラブが立ち上がってしまうほどに可愛い。
だからそんな子に恋人がいないなんてことの方がおかしい。うむ、顔面偏差値でいえば、よりどりみどりで誰でも選べる立場といえよう。なので瀬来さんに恋人がいたとしても、なんら不思議ではない。
ただ、あの音夢くんか~。とは、思わなくもない。
いや、普通にカッコイイんだと思うよ。現にあのやかましかった子なんか、音夢くんにかなりお熱みたいだったし。ただまぁ狭量なオレなんかは瀬来さんの元彼氏という時点で、彼にいい感情は抱けないのだけど。
それでもカッコつけか本心からかは解らないものの、避難していた人達の為に色々動いてはいたようだ。
チラと彼らが車から降ろしてた荷物を見たが、山で採ってきたらしいフキやらの山菜だった。圧倒的にカロリーが足りないわけだが、まぁ口寂しさは紛らわせられるだろう。ただ笹山さんも言っていたように、あんなに大勢の騒々しく山に入っていったんじゃ、罠でもなきゃ獲物だって逃げてしまうだろう。
そういう意味では、さすが瀬来さんが子供の頃から猟をしていた大ベテランの笹山さん。
見てた感じ、かなり立場が強かった。うん、やっぱりこういう時は、食い物をとってこれる人の発言が強くなるよな。俺も見習って食料の確保は欠かさぬ事にしよう。
兵站て大事だもん。それを現地調達で~、なんて言い出した時点でもう負け確定よ。
音夢くんに関しては、まぁ思う事もなくはないが、現時点でどうこうと決めつけてしまうのは早計というモノ。それではあのやかましかった子と、なんら変わらなくなってしまう。
実力は簡単に腕をへし折られてた時点でお察しだけど、30人くらいいたかな。
あれだけの仲間をちゃんとまとめてたというなら、かなりの人望だ。オレなんて友達と呼べるのは、ネッ友と智くらいのものなのに。
それも今は瀬来さん達のおかげで、ありがたいことに色々と広がったけど…。
「じゃ、一時間くらい?」
「そうだね、それくらいにしようか」
さて、西の河原露天風呂に到着したので入浴タイムだ。
…。
「ふぃ~~ッ、あぁ~沁みるなぁ!」
かけ湯をし、たっぷりの湯に身を浸けると酸性度の強い湯の温もりに包まれる。
「にしても、恋愛か。学生時代にはとんと縁がなかったからな~。…男は最初の男になりたがり、女は最後の女になりたがる…ってのは、誰の言葉だっけ?アニメやギャルゲーじゃなかったよな」
なんにせよ、命の洗濯。瀬来さんもこの湯で、機嫌直るといいな。
ほんとは肉を配るのも手伝って帰りも送ってもらう予定だったけど、人に怪我をさせたりと騒ぎが起きてしまったので、先に抜けさせてもらったのだ。
いやほら、手伝うにしてもあの音夢くんの仲間といっしょじゃない。だからお互いにねぇ…。
そんな訳であちこちに電話をかけアレコレと手配してる笹山さんに「タクシーでも拾って帰るから」と、その場で別れを告げた。すると笹山さんも「若いのが悪かったね」と、オレ達に頭を下げてくれた。
うん、そのまま残っててもオレ達がトラブルの元になるだけだろうから、これがベターだろう。
去り際もあのやかましい子が、「ハァ!?アンタらに山の主が倒せるわけないじゃない!」などと喚いていたし。
でもトラックに山と積まれていたのが超巨大猪の肉と知ると、絶句してた。トラックの荷台で、しかもたっぷりと塩をまぶしてあったから、コンクリのブロックにしか見えなかったようだ。まぁ特大のシシ肉ブロックだったから、ふつう肉の切り身とも思わないか。
そんな超巨大猪だが、ここいらではそういうのがいるんじゃないかっていうくらいのUMA的扱いだったらしい。
まぁアイツを発見したのなら、まず自衛隊呼ぶよな。
そこでダンジョン能力を得てちょっと調子に乗ってる若者たちに釘を刺す為にも、「ヌシ?あれが?ほぉ、まぁ倒すのに5分とかからなかったがなぁ」などと放言してやった。
するとまぁ、面白いくらいにざわつくざわつく。そんな彼らに背を向け、何でもない事のように去ってきたのだ。どうよ、強者感プンプンじゃない?
そんな感じでブラつく、お土産屋の並んだ通り。
で、眼を向けるも普段なら観光客で賑わっているだろう景色も、いまは静か。
ほとんどが閉まっていて、開いてるお店もまばら。それに開いてる店もほかにやることないから仕方なくあけましたって感じで、温泉まんじゅうを蒸す機械も店先には出さずシートがかけられたままだったりする。
で、そんななかどこに向かっているのかというと、西の河原露天風呂。
それは緑豊かな公園のなかにある、天然温泉。なんか気分の悪いことになってしまったし、ここはひとっ風呂浴びてサッパリして帰ろうと思ったのだ。
…。
土産物屋の並ぶ温泉街を抜け公園に入ると、視界がひらけ吹く風が気持ちいい。先まで坂道が続いていて、立体的な地形もまた見ていて面白い。
そうして歩いていると、ずっと黙りこくっていた瀬来さんが口を開いた。
「アレね…、前の彼氏なの…」
「うん、そうか」
瀬来さんに対する馴れ馴れし過ぎる態度から、なんとなく察してはいた。
でもま、彼ではなくアレ呼ばわりな時点で、瀬来さんのなかでは終わった関係なのだろう。それから、瀬来さんは途切れ途切れではあるものの、経緯を説明してくれた。オレに対しても申し訳ないと思ってくれたのだ。
それによると音夢くんとは、高校時代に交際していたそうな。
声を掛けられ、ちょっとカッコイイかなと交際に応じた。ただ初めは良かったものの次第に束縛してきたり、まずマウントとってから話しだすような態度に嫌気がさしてその後の交際を断念。
しかし別れ話をきりだすと途端に機嫌を悪くし話をきかなくなったりと当時の瀬来さんの手には負えなかったので、東京の大学に進学する形で離れたのだという。
ふ~む、なるほど。それで音夢くんの方は瀬来さんに未練タラタラだった訳か。
瀬来さんは、勝手にギルドの受付嬢を愛でる会なんてファンクラブが立ち上がってしまうほどに可愛い。
だからそんな子に恋人がいないなんてことの方がおかしい。うむ、顔面偏差値でいえば、よりどりみどりで誰でも選べる立場といえよう。なので瀬来さんに恋人がいたとしても、なんら不思議ではない。
ただ、あの音夢くんか~。とは、思わなくもない。
いや、普通にカッコイイんだと思うよ。現にあのやかましかった子なんか、音夢くんにかなりお熱みたいだったし。ただまぁ狭量なオレなんかは瀬来さんの元彼氏という時点で、彼にいい感情は抱けないのだけど。
それでもカッコつけか本心からかは解らないものの、避難していた人達の為に色々動いてはいたようだ。
チラと彼らが車から降ろしてた荷物を見たが、山で採ってきたらしいフキやらの山菜だった。圧倒的にカロリーが足りないわけだが、まぁ口寂しさは紛らわせられるだろう。ただ笹山さんも言っていたように、あんなに大勢の騒々しく山に入っていったんじゃ、罠でもなきゃ獲物だって逃げてしまうだろう。
そういう意味では、さすが瀬来さんが子供の頃から猟をしていた大ベテランの笹山さん。
見てた感じ、かなり立場が強かった。うん、やっぱりこういう時は、食い物をとってこれる人の発言が強くなるよな。俺も見習って食料の確保は欠かさぬ事にしよう。
兵站て大事だもん。それを現地調達で~、なんて言い出した時点でもう負け確定よ。
音夢くんに関しては、まぁ思う事もなくはないが、現時点でどうこうと決めつけてしまうのは早計というモノ。それではあのやかましかった子と、なんら変わらなくなってしまう。
実力は簡単に腕をへし折られてた時点でお察しだけど、30人くらいいたかな。
あれだけの仲間をちゃんとまとめてたというなら、かなりの人望だ。オレなんて友達と呼べるのは、ネッ友と智くらいのものなのに。
それも今は瀬来さん達のおかげで、ありがたいことに色々と広がったけど…。
「じゃ、一時間くらい?」
「そうだね、それくらいにしようか」
さて、西の河原露天風呂に到着したので入浴タイムだ。
…。
「ふぃ~~ッ、あぁ~沁みるなぁ!」
かけ湯をし、たっぷりの湯に身を浸けると酸性度の強い湯の温もりに包まれる。
「にしても、恋愛か。学生時代にはとんと縁がなかったからな~。…男は最初の男になりたがり、女は最後の女になりたがる…ってのは、誰の言葉だっけ?アニメやギャルゲーじゃなかったよな」
なんにせよ、命の洗濯。瀬来さんもこの湯で、機嫌直るといいな。
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