うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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アトラトル

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芽のでた植物系モンスターは、すべてお爺さんがテイムに成功。

これにより5匹の赤吸血人参と1体の林檎精霊が、お爺さんのテイムモンスターになった。少し惜しかったような気もするが、まぁこれはこれで良かったのだと思う。

オレ達もずっとここには居られないし、お爺さんを守るのがダンジョン能力犬のタロだけというのも不安が残る。なので林檎精霊たちもお爺さんを守ってくれるのであれば、安心だ。まだ芽がでたばかりとはいえエース級とボス級のモンスターだったのだから、育てばゴブリンくらい屁でもないだろう。

それに、オレ達がテイムしたところでどうせ窮屈な思いをさせてしまうだけ。

ならば自然豊かなこの場所で、のびのびと陽の光を浴びて育った方が幸せというもの。なにせ瀬来さんのお爺さんはそういった作物を育てるプロなのだから。きっと彼らの面倒もしっかりとみてくれることだろう。

…。

そして今日のオレ達は、軽バンで盆地をパトロール。

避難により無人になってしまっている民家や田畑が、モンスターの荒らされていないか見回っているのだ。ああ、車に載せておいた毛皮は重かったので一度降ろしてある。

「あ、車停めて江月さん!いま山の方にゴブリンがいたよ!」
「はいよ」

しかし車を路肩に停め確認に戻ってみると、すでに山ゴブリンの姿はなかった。

「あれぇ…、たしかにいたんだよ?」
「ああ、疑ったりはしてないよ。山での生活に適応した姿のゴブリンだ。きっと動きが良いんだろう」

「せやなぁ。あ、あっちの斜面にもなんかおるみたいよ。あれもゴブリンやない?」
「お、そうだな。5匹いるか…?」

瀬来さんがゴブリンを視たという山とは別の山の斜面に、うろついているゴブリンを仁菜さんがみつけた。

「う~ん、でも遠いね。100メートル以上ありそう…。江月さん、得意の塩で銃とか作れないの??」
「おいおい、無茶いわないでよ瀬来さん…」

うん、キックボードくらいは作れても、流石に銃は無理がある。

リボルバー拳銃の見た目くらいは模倣できても、オレの知識じゃ引き金を引いたあとでどうやってレンコン部分が回るのかなんてまるで解らない。なのでブローバック式拳銃なんて、もっとワケワカメ。

夢のある話だが、なんでも想像しただけで創造できちゃう魔法やらスキルなんてのは、いったいどういう理屈なんだろうね?

だって自分の知識や理解の範疇を超えた物ですら、なんかふわっとしたイメージだけで生み出せちゃうんでしょ?本職の設計技師だって、いざなんか作ろうと思ったらちゃんと図面をひいてしっかり強度計算なんかを行わなければならないのに。

拳銃ひとつとってみても、火薬もそうだけど強度があって極めて精度の高い金属部品がいくつも必要になるわけだしね。

もしなんでもアリでそんなんがホイホイ作れるのなら、オレだって宇宙戦艦一撃で沈められるビームライフルとか作るわ。

うん、それでどうせならデオデオデオ…のチャージから、ボヒィ~ッ!!とかいっちゃうヤツがいいね。

でもそれらの情報が、スキルによりまるっと外部から術者の脳内にアップデートされるとしたら…、それはそれで実に不味い。

だってさ。一体どこの誰が、そんな面倒なアフターフォローやアップデートをマメにしてくれているのやら?

なのでそんな怪しいスキルを便利がって使ってたら、いつのまにやら情報に紛れて入れられたウイルスに侵され、すっかり洗脳。当人は全く気づかぬままに意識を乗っ取られ、態の良い人間兵器に仕立て上げられる…な~んてことだって起こりうる。

自身の知識の範疇を超えて勝手に脳内にアレコレ浮かんできちゃうのって、そういうことよ?


「どうしたの江月さん、難しい顔で考え込んじゃって?」

おっと、こんな事を考えてるとまた妖怪みたいな婆さんに背中が煤けてるだのと言われそうだ。よし、ここは気分をかえて、オレなりの遠距離攻撃を披露するとしよう。

「ああいや、なんでもないんだ。では、この距離からでも届く攻撃をみせてあげよう」
「えぇ~ッ!?この距離からでも届く攻撃があるんですかぁ~!?」

なにかな瀬来さん?その通販番組でみるようなベタなリアクションは??

「ゴホン、まぁみてなさい。…スキル【塩】生成!房状岩塩投擲槍クラスターソルトジャベリン岩塩投槍器ソルトアトラトル!!」

解説しよう。房状岩塩投擲槍とは、2メートル近い投擲槍に5筋の溝が掘られた投擲槍。その溝にまた5本の槍をマウントできるので、一投で6回攻撃になるという優れものなのだ。

そして投槍器とは、投げ槍の飛距離を増加してくれる補助器具のこと。

形としては、プラスチックの靴箆とか孫の手をイメージしてくれればいい。コレの返しのついた部分を投擲槍の根元にひっかけて投げることで、てこの原理と遠心力が加わり飛距離が伸びるという仕組みだ。

とはいえ、かなりマイナーなアイテムではある。

だが古くはアステカ神話の金星神トラウィスカルパンテクートリが太陽神トナティウに向かって槍を投げたり、またソレを投げ返したりと神々も愛用の由緒正しい代物なのだ。

「さて、ではゆくぞ…ふんッ!!」

力を籠めて槍を投げると、風が唸って渦を巻く。

なにせ今の筋力は668。うん、四捨五入すれば七十人力。放たれた槍は綺麗に伸び、着弾する前に粘液の縛めから外れた5本の槍が広がって、山ゴブリンの集団に襲いかかる。

「ゲギャ!?」
「ゴギッ!」

結果2本の槍がゴブリンを貫き斜面に縫い付けた。他は外れてしまったが、その着弾の威力に驚いた山ゴブリン達はギャッギャッと悲鳴をあげ山奥へと逃げていく。

「ふぅむ…、まぁ練習無しではこんなものか」

「ほんと…、江月さんてズルイのッ!」
「せやなぁ、あれは反則やわ…」

え、なんでそんなひかれてんの??

飛び道具が欲しいって言うから、希望に応えたのだけなのに??コレはあくまでも工夫で、チートでもなんでもないからね??
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