うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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ウラ!

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瀬来さんと仁菜さんは、オーラを操るという感覚の取得に苦戦していた。

まぁ自分の殻を破るなどといっても、言葉でいえば簡単でもそれをいざ実践するとなればなかなかどうして思うようにはいかないもの。なにせ大人になるにつれ自身のブレイクスルー体験など、そうそう起きるものでもないのだから。

とはいえ人生とは、小さなブレイクスルーの積み重ね。

たとえば赤ん坊が初めてその足で立ちあがった日も。初めて自転車に乗れたり鉄棒で逆上がりが出来た日も、忘れてしまっているだけでそれらは全て得難いブレイクスルー。

新たな経験を積むことで獲得した視点や感覚。それこそが成長でありブレイクスルー。

しかしこれを得るには、やはりどうしたって過去の自分からの脱却が必要なのではないだろうか。それをオレは、失意の底で知覚した…。

たとえばどしゃぶりの雨に打たれた時。必死に雨に耐えながらもどうにかして身を、衣類を守ろうとするだろう。しかし下着まで完全に濡れてしまった時に、それはもはや意味を失う。

パンツびっしょりになった時点で、失うものが無くなるからだ。

つまりなにかを護ろうと必死になっている時には、逆にそれらが重石となって思考を縛り付けてしまう。だがいっそパンツびっしょりになってしまえば、その先にあるのはもはやなんでもこいで破れかぶれのフリーダム。

ふぅむ。ま、この解釈が適切かどうかは不明だが、つまりは自身を縛り付けている固定観念を打ち砕かない事には、先には進めないということ。

そして彼女たちの場合、その思考や価値観はまさに今時のイケてる女子大生。なのでそんな彼女たちに厨二臭くオーラだなんだといっても、通じる訳がないとみた。

そこでオレは、もっとふたりに心を解放するようにと勧めてみた。

「精神を研ぎ澄ませたりと細かいことはもうここまでだ!これから先はフリータイム!ふたりとも、自然のなかで好きなように、おもいきり暴れてごらん!!」


…。


人が大勢の人間と社会生活を送る為には、自身を戒める倫理道徳というものが必要。しかしこの倫理道徳や固定概念といったものが、心の自由度を妨げるのも確か。

オレが独りダンジョンで暴れていた時。痛烈な悲しみを覚えると同時に、そんな虚しさのなかにもどこか解放されたような高揚があった。

うむ、それこそが縛られるもののない魂。フリーダムソウル。自由な魂でなければ、きっとオーラは操れない。

かつてアダムとイヴは、知恵の実を口にしてしまったが為に楽園を追われたという。

が、どうしてそれが神にバレてしまったのかというと、ふたりがイチジクの葉っぱで股間を隠すようになったから。つまり「アッ!おまえらなに股間隠しとんねん!ハッ…さては知恵の実食うたやろッ!!」ってな感じ。

アダムとイヴは知恵の実を口にしたことで羞恥心を獲得し、裸でいることに耐えられなくなってしまったのだ。

これは原罪などと呼ばれる。が、神が怒り悲しんだのは、ふたりが知恵の実を食べてしまったことによって知恵に縛られ、自由で無垢な心を失ってしまった事を嘆いたのではなかろうか。

まぁそれはともかく瞑想だ精神修練だなどと畏まっていても、それに疲れたりつまらなくなってしまっては逆効果。

そうさ、好きこそもののグッドネス。オレが飽きることなく身体を鍛えたり出来たのも、ダンジョンでの冒険がすこぶる楽しく、自身を鍛えるために費やした努力がどんどんとカタチとなって返ってくることが嬉しかったから。

そうだ、ともあれ魂のバイヴレーション!とにかく心の赴くままにゆけ!さぁふたりとも、気の向くままにビートでシャウトだ!

「わーお!わーお!わおーッ!!」

瀬来さんが大声をあげ、骨を振り回しながら樹上を駆け回る。

「高級車なんて!高級車なんて大キライやぁ~!!」

仁菜さんはどういうわけかハイパーエクスカリバールで倒木を打ち砕いている。

普段は胸に秘めた鬱憤を吐き出しているようだ。その衝撃は凄まじく、倒木がみるみるまに粉砕されていく。うむむ、普段冷静な仁菜さんからは想像できないお姿。

(だが、それこそが嬉しいな。ふたりがこんなにも赤裸々な心をみせてくれているのだから…)

彼女たちには前もって「遠慮は無用。なにせ男でありながら女性の姿に変わってしまった恥ずかしい姿のオレを、ふたりはその優しさで受け止めてくれただろう?だからオレも、ふたりがどんなにおかしな真似をしても、絶対にだいじょうぶだ」と言い含めた。

ゆえに彼女たちの行動は、そう言ったオレを信じてくれてのこと。

「ほら、江月さんもいっしょにやろ!」


樹から降りてきた瀬来さんが、受け取るようにと手にした骨ハンマーをオレに差し出す。

「せやでぇ。うちらにだけ恥ずかしい真似させといて、あとで笑い話にでもしたら承知せんから…。ふふ、でもアタマ真っ白にして暴れてこい言われた時は、なにいうとるんのやろ?って思ったけど、やってみると意外と楽しいもんやねぇ」


ハイパーエクスカリバールをふりまわし、ストレスを発散した仁菜さんも集まってきた。

「「さぁ!いっしょに!」」

そこでオレも骨ハンマーを受けとり、そのままクルリと回してみせる。

「お…。よし、ではいっちょやるか!」

こうしてオレ達は、陽の暮れるまでズンビビウバウバ!ウラウラベッカンコ!したのだった。
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