うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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I have a problem

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草木も眠るミッドナイト。オレはひとり、庭で達人の型を繰り返していた。そんな様子を、ダンジョン能力犬のタロだけがつまらなそうに地面に顎をつけ眺めている。

素早い足捌きに土埃が舞い、月明かりがそれを照らしだす。地面を踏みしめる音だけが夜闇に響き、影が朧に伸びて揺らめくトゥナイト。

(スキルトーナメントか…)

要するに、「特異迷宮能力者って、強くてスキルも使えてカッコイイよね!」という風潮を生み出したい政府のイメージ戦略だろう。で、これにより特異迷宮能力者を増産したいと。

悪くない手だと思う。少なくとも増税までして防衛費を捻出するよりは。

それだと法案通していざ実際に金が回るようになるまでに、かなりの時間を要してしまう。しかも今必要な戦力は戦闘機でもミサイルでもなく、人だ。だが現在の状況下で、苦労と面倒しかない自衛官にわざわざなりたいという人間が、いったいどれほどいるだろうか。

またスタンピードの影響で景気は悪化し、窃盗だなんだと治安もまた悪くなっている。

そんな折に国民を苦しめるさらなる増税なんかをすれば、ここ日本でも外国のように暴動だって起きかねない。そうすれば暴徒鎮圧のために機動隊が出動したりと、さらに国民の士気を挫き国力を損じさせてしまう事になってしまう。

であるならば嘘でもなんでも特異迷宮能力者を褒めそやし、国民が自発的にモンスターと戦ってくれた方が、政府としては楽チンなワケだ。

海外でも次のダンジョンスタンピードが警戒され、と同時にダンジョンのモンスターをしっかりと間引いておけばその規模は緩和されソフトランディングも可能。と世界の有識者たちが述べている。

まぁこの辺はついさっき調べて知った情報だが。田舎暮らしが楽し過ぎて、つい情報収集を怠っていた。

特異迷宮能力者の管理だなんだといった手間暇は、当然かかるだろう。

が、ダンジョンスタンピードの第二波で大きな被害をこうむった自衛隊を大規模に再編成することを考えれば、その方がはるかに安上がりなはず。なにしろどれだけ特異迷宮能力者が損耗しようとも、あとのことは全て自己責任で済ませられるのだから。

(にしても…、アレは不味かったな~)

そう改めて思い返すのは、巨大鰐の件。

ひどく悪目立ちしてしまった。アレで警察にも相当睨まれただろうし、特異迷宮対策省の枝葉志さんにも、警察から庇ってもらったという借りができてしまった。オレなんかにスキルトーナメントの話が振られてくるのも、たぶんその借りが原因だろう。

直接なにか言われたわけではないけど、状況的にオレが特異迷宮対策省を警察の盾に使おうと考えていた事は、当然感付いていただろうし。あの時、枝葉志さんもオレと話すのに含みのあるような笑みと言い回しをしてたもんな。

だからこのタイミングで話がきたのも「警察から庇ってやったんだから、その借りをコレで返せよ」ってことなのだろうたぶん。

(ハァ~ッ…、ただなぁ。オレって目立つと碌なことないんだよな…)

過去の経験上、そういう時は大抵赤っ恥をかいてる時か槍玉にあげられてる時だ。

でもつい、今のオレなら…なんて風にも考えてもしまう。物語の主役みたいに大活躍で優勝し、賞金を手に瑠羽たちと大喜び。

だがそんな甘い夢想を思い描いたあとで、すぐに首を左右にふりそれを打ち消す。いやいや、オレはダンジョンを秘匿している身だぞ。アホみたいに自分から目立ってどうする。

(掤・捋・擠・按・採・挒・肘・靠…。掤・捋・擠・按・採・挒・肘・靠…)

ラーニングしていた拳法の達人が行っていた型。太極拳八法五歩を繰り返し気を落ち着かせようとするも、どうにもスキルトーナメントのことが気になって仕方がない。

(どんなスキルを持った能力者が出場するんだろう…。賞金一千万…ああでも、オレ免許取得の時に登録申請したスキルが、【瞑想】に【図工】に【塩】なんだよなぁ~)

ってことは、オレに塩だけで戦えと?

ああ、いったいどうすれば…。なんて悩んでいればいつもならいい感じに「ソルトを信じるのじゃ」とか塩のちっさい神さまの声が聞こえてくるのだが。今回はそのお告げも無い模様…。

なんというか出たいのと出たくない気持ちの中間で、どっちつかずのやじろべえ状態。でも仁菜さんも瀬来さんも応援するって言ってくれてたし、ココは期待にこたえて出場したほうがいいのかな…。

ああ、もう悩ましいッ!めっさ悩ましいでおじゃるッ!!
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