350 / 660
I have a problem
しおりを挟む
草木も眠るミッドナイト。オレはひとり、庭で達人の型を繰り返していた。そんな様子を、ダンジョン能力犬のタロだけがつまらなそうに地面に顎をつけ眺めている。
素早い足捌きに土埃が舞い、月明かりがそれを照らしだす。地面を踏みしめる音だけが夜闇に響き、影が朧に伸びて揺らめくトゥナイト。
(スキルトーナメントか…)
要するに、「特異迷宮能力者って、強くてスキルも使えてカッコイイよね!」という風潮を生み出したい政府のイメージ戦略だろう。で、これにより特異迷宮能力者を増産したいと。
悪くない手だと思う。少なくとも増税までして防衛費を捻出するよりは。
それだと法案通していざ実際に金が回るようになるまでに、かなりの時間を要してしまう。しかも今必要な戦力は戦闘機でもミサイルでもなく、人だ。だが現在の状況下で、苦労と面倒しかない自衛官にわざわざなりたいという人間が、いったいどれほどいるだろうか。
またスタンピードの影響で景気は悪化し、窃盗だなんだと治安もまた悪くなっている。
そんな折に国民を苦しめるさらなる増税なんかをすれば、ここ日本でも外国のように暴動だって起きかねない。そうすれば暴徒鎮圧のために機動隊が出動したりと、さらに国民の士気を挫き国力を損じさせてしまう事になってしまう。
であるならば嘘でもなんでも特異迷宮能力者を褒めそやし、国民が自発的にモンスターと戦ってくれた方が、政府としては楽チンなワケだ。
海外でも次のダンジョンスタンピードが警戒され、と同時にダンジョンのモンスターをしっかりと間引いておけばその規模は緩和されソフトランディングも可能。と世界の有識者たちが述べている。
まぁこの辺はついさっき調べて知った情報だが。田舎暮らしが楽し過ぎて、つい情報収集を怠っていた。
特異迷宮能力者の管理だなんだといった手間暇は、当然かかるだろう。
が、ダンジョンスタンピードの第二波で大きな被害をこうむった自衛隊を大規模に再編成することを考えれば、その方がはるかに安上がりなはず。なにしろどれだけ特異迷宮能力者が損耗しようとも、あとのことは全て自己責任で済ませられるのだから。
(にしても…、アレは不味かったな~)
そう改めて思い返すのは、巨大鰐の件。
ひどく悪目立ちしてしまった。アレで警察にも相当睨まれただろうし、特異迷宮対策省の枝葉志さんにも、警察から庇ってもらったという借りができてしまった。オレなんかにスキルトーナメントの話が振られてくるのも、たぶんその借りが原因だろう。
直接なにか言われたわけではないけど、状況的にオレが特異迷宮対策省を警察の盾に使おうと考えていた事は、当然感付いていただろうし。あの時、枝葉志さんもオレと話すのに含みのあるような笑みと言い回しをしてたもんな。
だからこのタイミングで話がきたのも「警察から庇ってやったんだから、その借りをコレで返せよ」ってことなのだろうたぶん。
(ハァ~ッ…、ただなぁ。オレって目立つと碌なことないんだよな…)
過去の経験上、そういう時は大抵赤っ恥をかいてる時か槍玉にあげられてる時だ。
でもつい、今のオレなら…なんて風にも考えてもしまう。物語の主役みたいに大活躍で優勝し、賞金を手に瑠羽たちと大喜び。
だがそんな甘い夢想を思い描いたあとで、すぐに首を左右にふりそれを打ち消す。いやいや、オレはダンジョンを秘匿している身だぞ。アホみたいに自分から目立ってどうする。
(掤・捋・擠・按・採・挒・肘・靠…。掤・捋・擠・按・採・挒・肘・靠…)
ラーニングしていた拳法の達人が行っていた型。太極拳八法五歩を繰り返し気を落ち着かせようとするも、どうにもスキルトーナメントのことが気になって仕方がない。
(どんなスキルを持った能力者が出場するんだろう…。賞金一千万…ああでも、オレ免許取得の時に登録申請したスキルが、【瞑想】に【図工】に【塩】なんだよなぁ~)
ってことは、オレに塩だけで戦えと?
ああ、いったいどうすれば…。なんて悩んでいればいつもならいい感じに「ソルトを信じるのじゃ」とか塩のちっさい神さまの声が聞こえてくるのだが。今回はそのお告げも無い模様…。
なんというか出たいのと出たくない気持ちの中間で、どっちつかずのやじろべえ状態。でも仁菜さんも瀬来さんも応援するって言ってくれてたし、ココは期待にこたえて出場したほうがいいのかな…。
ああ、もう悩ましいッ!めっさ悩ましいでおじゃるッ!!
素早い足捌きに土埃が舞い、月明かりがそれを照らしだす。地面を踏みしめる音だけが夜闇に響き、影が朧に伸びて揺らめくトゥナイト。
(スキルトーナメントか…)
要するに、「特異迷宮能力者って、強くてスキルも使えてカッコイイよね!」という風潮を生み出したい政府のイメージ戦略だろう。で、これにより特異迷宮能力者を増産したいと。
悪くない手だと思う。少なくとも増税までして防衛費を捻出するよりは。
それだと法案通していざ実際に金が回るようになるまでに、かなりの時間を要してしまう。しかも今必要な戦力は戦闘機でもミサイルでもなく、人だ。だが現在の状況下で、苦労と面倒しかない自衛官にわざわざなりたいという人間が、いったいどれほどいるだろうか。
またスタンピードの影響で景気は悪化し、窃盗だなんだと治安もまた悪くなっている。
そんな折に国民を苦しめるさらなる増税なんかをすれば、ここ日本でも外国のように暴動だって起きかねない。そうすれば暴徒鎮圧のために機動隊が出動したりと、さらに国民の士気を挫き国力を損じさせてしまう事になってしまう。
であるならば嘘でもなんでも特異迷宮能力者を褒めそやし、国民が自発的にモンスターと戦ってくれた方が、政府としては楽チンなワケだ。
海外でも次のダンジョンスタンピードが警戒され、と同時にダンジョンのモンスターをしっかりと間引いておけばその規模は緩和されソフトランディングも可能。と世界の有識者たちが述べている。
まぁこの辺はついさっき調べて知った情報だが。田舎暮らしが楽し過ぎて、つい情報収集を怠っていた。
特異迷宮能力者の管理だなんだといった手間暇は、当然かかるだろう。
が、ダンジョンスタンピードの第二波で大きな被害をこうむった自衛隊を大規模に再編成することを考えれば、その方がはるかに安上がりなはず。なにしろどれだけ特異迷宮能力者が損耗しようとも、あとのことは全て自己責任で済ませられるのだから。
(にしても…、アレは不味かったな~)
そう改めて思い返すのは、巨大鰐の件。
ひどく悪目立ちしてしまった。アレで警察にも相当睨まれただろうし、特異迷宮対策省の枝葉志さんにも、警察から庇ってもらったという借りができてしまった。オレなんかにスキルトーナメントの話が振られてくるのも、たぶんその借りが原因だろう。
直接なにか言われたわけではないけど、状況的にオレが特異迷宮対策省を警察の盾に使おうと考えていた事は、当然感付いていただろうし。あの時、枝葉志さんもオレと話すのに含みのあるような笑みと言い回しをしてたもんな。
だからこのタイミングで話がきたのも「警察から庇ってやったんだから、その借りをコレで返せよ」ってことなのだろうたぶん。
(ハァ~ッ…、ただなぁ。オレって目立つと碌なことないんだよな…)
過去の経験上、そういう時は大抵赤っ恥をかいてる時か槍玉にあげられてる時だ。
でもつい、今のオレなら…なんて風にも考えてもしまう。物語の主役みたいに大活躍で優勝し、賞金を手に瑠羽たちと大喜び。
だがそんな甘い夢想を思い描いたあとで、すぐに首を左右にふりそれを打ち消す。いやいや、オレはダンジョンを秘匿している身だぞ。アホみたいに自分から目立ってどうする。
(掤・捋・擠・按・採・挒・肘・靠…。掤・捋・擠・按・採・挒・肘・靠…)
ラーニングしていた拳法の達人が行っていた型。太極拳八法五歩を繰り返し気を落ち着かせようとするも、どうにもスキルトーナメントのことが気になって仕方がない。
(どんなスキルを持った能力者が出場するんだろう…。賞金一千万…ああでも、オレ免許取得の時に登録申請したスキルが、【瞑想】に【図工】に【塩】なんだよなぁ~)
ってことは、オレに塩だけで戦えと?
ああ、いったいどうすれば…。なんて悩んでいればいつもならいい感じに「ソルトを信じるのじゃ」とか塩のちっさい神さまの声が聞こえてくるのだが。今回はそのお告げも無い模様…。
なんというか出たいのと出たくない気持ちの中間で、どっちつかずのやじろべえ状態。でも仁菜さんも瀬来さんも応援するって言ってくれてたし、ココは期待にこたえて出場したほうがいいのかな…。
ああ、もう悩ましいッ!めっさ悩ましいでおじゃるッ!!
36
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる