うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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summer

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今日も朝から野良仕事。みんなでお爺さんを手伝って、農作業に従事だ。

朝が早いのは先人の知恵。陽が昇ってからの重労働はカラダに負担が大きいので、朝靄のたなびいてるくらい涼しいうちに済ませてしまう方が楽なのだ。

仁菜さん瀬来さんは、畑で草むしりと実ってきた作物の収穫。

ここでは家のお手伝いで農作業の経験豊富な瀬来さんが仁菜さんにいろいろと教えていて、普段とは立場が逆な姿が見れて面白い。

「ホラ、こうやって畝の土をかけてあげると、根菜はここからもっと大きく育つのよ」
「へぇ~、面白いもんやねェ」

(うんうん、あっちもやってるな。よし、オレもがんばらねば…)

「コーイチ。ここんとこの土手を直してくれんか」
「はい、お爺さん。まかせてください」

で、オレのやっているのは土手の補修。

田んぼや用水路周辺で崩れかけている土手を直していく作業だ。田んぼに入って崩れてしまった泥をかきだし、それをまた土手に盛って固めていく。普通の人間が行なおうとすれば、それはたいへんにキツイ作業。

しかしノープロブレム。アイアム粘液マスター。

鳥が自由に空を飛ぶように。魚が水の中を自在に泳ぎ回るように。泥のなかは粘液マスターの独壇場なのだ。

ぬかるんだ泥に足が嵌ると、支点力点作用点のバランスが崩され思うように抜け出すことができなくなってしまう。だがそういった特性を理解しまた十全に扱える粘液マスターならば、自由自在に動くことも可能。

なにせ下半身はスッポリうなぎのようなヌルヌル粘液で覆い、泥の粘着力を無効化。そして支点として抵抗の欲しい足裏部分だけをベタベタする粘液にしてやれば、深い泥の中でも何の苦も無く移動できてしまうというカラクリさね。

「ふぅむ。コーイチはサンショウウオみたいなヤツじゃのぉ」
「ハハハ。でもそれって、褒められてるんですか?」

「ああ。おまえみたいなヤツは今まで見たことがない」
「そうですか、ありがとうございます」

ふふふ、お爺さんからサンショウウオ賞を頂きました。ふむ、でもどうせならサラマンダー賞の方がいいかな。

サラマンダーといえば、ゲームなんかでも火の精霊として有名だ。よく火蜥蜴なんて風にも訳されるな。で、それは火の中でもガチで生きることができる生物だと考えられていた為。

その理由は古代のヨーロッパで、ある時イモリだかサンショウウオだかが薪にひっついたまま火にくべられてしまった。しかしカラダを水分の多い粘液に覆われてたのですぐには焼け死なず、炎の中から這い出てきたらしい。

まぁその理屈は、難燃性ジェルで身体を保護した映画のスタントマンと同じ。

でもそんなことなどまるで知らない当時の人が「うわなんやコイツ!?生き物のくせに燃えても死なんのかいなッ!」って誤解したことから、そう信じられるようになったとか。

きっとその早とちりな人が、エライ貴族とか社会的地位の高い人だったんだろうな。

「なぁ知っとるかおまえら?サンショウウオちゅうのは、火の中でも生きられるんやで!あれこそホンマもんの火の精霊や!!」
「「「ハァ?」」」

「なんや?おまえらワシの言うとることが信じられんちゅうのか!」
「「「い、いえ!サンショウウオ、火の精霊っス!」」」

こうして、もとは人の姿と信じられていた火の精霊は、だんだんとトカゲとかサンショウウオのような姿をしていると信じられるようになっていったと。うん、アリストテレスみたいな古代の学者も、なんかそんな風に文献を残したみたいだし。

まぁ信仰とか科学も化学も全部ごちゃまぜの時代には、そんな紆余曲折がたくさんありましたってな話だな。

…。

こうして早朝からの野良仕事を終えたあとは遅めの朝食を摂り、陽が天高く昇った暑い昼間は自由時間。

お爺さんはお昼寝で、仁菜さんは塩漬けした肉の在庫と熟成具合をチェック。瀬来さんはまた地元の友達と電話をしているらしく、自室に戻っている。

で、オレはというとようやっとポーション作りからも解放されたので、納屋の日陰で涼みながらのんびりスーツの補修を行っていた。

「はぁ~、今日も空が高くて青く澄んでるなぁ。それにすごい入道雲だ。うむ、一句できたぞ。蝉の音が 澄んだ空へと 響きけり 高くそびえた 入道雲 …て、これじゃ蝉と入道雲で、季語が被ってしまったか」

と、そんな風に過ごしていると車の近づいてくる音が聞こえ、瀬来宅の門の前で止まった。そこでなんだろうと手を止め外に出てみると、開いている門の向こうに停まった四駆から人が降りてきた。

「お、ジャング!アタシも来てやったぞ!」
「なに、おまえはシャーク!?なぜここにッ!?」

車から降りてきた人物はトライデントのおチビなボンバーガール、シャークこと利賀るりだった。
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