420 / 660
jump
しおりを挟む
枝葉に遮られ、陰影がまだら模様になった樹上を跳び駆ける。
緑豊かな自然のなか。なので樹に跳び移るたびに、何かしらの生き物が驚いて逃げていく。前方を行く瀬来さんたちも順調のようだ。
そして、谷間を大跳躍で飛び越える。
その急上昇により暗かった世界から、一気に明るい陽の光の下へ。するとそこは絶景の大パノラマ。遮るものの何もない状態で周囲が一望でき、実に爽快な気分だ。
うむ、一句できたぞ。
『夏空に 蟲人間が 跳びにけり 背に負うたのは 女子高生』
なんてな。
「うわぁ、すっげぇ~!」
しかし高く跳んだにも関わらず、臆した様子も見せないシャークが背で嬉しそうな声をあげる。あれ、結構高く跳んだから怖がると思ったけど、ぜんぜん平気かよ。
「怖くないのか?」
「へへん、スカイダイビングもやったことあるからな。これくらい平気さ!」
あらま、シャークってばスキューバダイビングもできるうえスカイダイビングも経験してるのか。なんとも芸達者なヤツだ。ところで親から兵士になるための英才教育なんて、されてないよな??
「でもしっかり口を閉じてろよ。空中でも、急に方向転換することもあるからな」
「わぁったよ!ぅわッ!」
大跳躍のまま向かいの山に突っ込むと、落下速度が速すぎ大惨事。
そこで縮めていた手足をバッとひろげ、粘液膜による滑空で減速。それによりツイと風に乗って向きを変えると、葉で遮られていない高い樹の枝に着地した。
「こ、こんな真似もできるのかよ…」
「そうだ。だから気をつけろって言ったろう?」
また樹上を駆けはじめる前に、ずり落ちそうになっているシャークを背負い直す。そして落ちないようにと、粘液ロープも調整してやる。
「どうだ、キツくないか?」
「ああ、だいじょうぶ」
「よし、あと少しだから、しばらく口は閉じてろよ」
「うん!」
そうして再び、樹上を駆ける。
夏、だな。
すこし前ならイベントに向け、分厚いカタログをめくりながら何処をどう周るかとワクワクソワソワしていた頃だろう。
友よ…。おまえは今、なにをしている?オレは粘液で縛った女子高生を背中にくくりつけ、空を駆けているぞ。
……。
ダンジョン跡地温泉に到着すると、あの見事に噴き上がっていた湯柱は消えていた。だがかなり深さのありそうな池温泉といった感じに、おおきく様変わりしていた。
「「わぁ~~~ッ!!」」
そして初めてダンジョン跡地温泉を目にしたシャークと結月ちゃんは、その美しさに感動の声をあげる。うむ、谷間にひっそりと湯煙をたたえる、深い藍と緑の混じったまさしく秘湯のたたずまい。当然そこまで降りていけるような道も無く、まさに未踏の秘湯だ。
で、瀬来さんと並んで山の峰から下を覗く。
「深いしけっこう大きいわね。30メートルはあるかしら?」
「そうだな。それくらいありそうだ」
ふぅむ、ここからだと余計に深く感じるな。
「なぁ、早く下におりようぜ!」
「まぁ待て。降りる前に、ここでおまえの会いたがってたマサルを呼ぼう」
大きく穿たれたすり鉢状の地形。だがそこに降りて行ってしまったら、周囲に声も響かない。
「あ、マサルってあのゴツいカンガルーか!」
「でもあのマサルが、呼んだくらいで来てくれるかしら?」
「どうだろうな?でも山のなかを探して回るのも面倒だし、向こうから来てもらう他ないだろう」
そう返すと瀬来さんもしばし思案する素振りをみせたが、やっぱりメンドクサイと感じたのかオレの案に賛同した。
「それもそうね。じゃあふたりとも、おっきな声で山に向かってマサルを呼ぶわよ。いい?」
「おう!まかせろ」
「はい」
「じゃあかけ声は、おーいマサルでいくか。ダンジョン能力者4人がそろって声を張れば、マサルの耳にも届くだろう。アイツも能力者だし」
「そうね、じゃいくわよ。せぇの!」
「「「「お~い!マサルゥ~~!!」」」」
その大音量に近くの山からバッと鳥が飛びたち、鳴いていた蝉の音がピタリとやむ。そして暑い陽射しと澄んだ青空のした、山間にオレ達の発した声がやまびことなってリフレイン。
届け、この思い。マサルよ、ここでおまえのことをミリオタ女子高生が待っているぞ。
緑豊かな自然のなか。なので樹に跳び移るたびに、何かしらの生き物が驚いて逃げていく。前方を行く瀬来さんたちも順調のようだ。
そして、谷間を大跳躍で飛び越える。
その急上昇により暗かった世界から、一気に明るい陽の光の下へ。するとそこは絶景の大パノラマ。遮るものの何もない状態で周囲が一望でき、実に爽快な気分だ。
うむ、一句できたぞ。
『夏空に 蟲人間が 跳びにけり 背に負うたのは 女子高生』
なんてな。
「うわぁ、すっげぇ~!」
しかし高く跳んだにも関わらず、臆した様子も見せないシャークが背で嬉しそうな声をあげる。あれ、結構高く跳んだから怖がると思ったけど、ぜんぜん平気かよ。
「怖くないのか?」
「へへん、スカイダイビングもやったことあるからな。これくらい平気さ!」
あらま、シャークってばスキューバダイビングもできるうえスカイダイビングも経験してるのか。なんとも芸達者なヤツだ。ところで親から兵士になるための英才教育なんて、されてないよな??
「でもしっかり口を閉じてろよ。空中でも、急に方向転換することもあるからな」
「わぁったよ!ぅわッ!」
大跳躍のまま向かいの山に突っ込むと、落下速度が速すぎ大惨事。
そこで縮めていた手足をバッとひろげ、粘液膜による滑空で減速。それによりツイと風に乗って向きを変えると、葉で遮られていない高い樹の枝に着地した。
「こ、こんな真似もできるのかよ…」
「そうだ。だから気をつけろって言ったろう?」
また樹上を駆けはじめる前に、ずり落ちそうになっているシャークを背負い直す。そして落ちないようにと、粘液ロープも調整してやる。
「どうだ、キツくないか?」
「ああ、だいじょうぶ」
「よし、あと少しだから、しばらく口は閉じてろよ」
「うん!」
そうして再び、樹上を駆ける。
夏、だな。
すこし前ならイベントに向け、分厚いカタログをめくりながら何処をどう周るかとワクワクソワソワしていた頃だろう。
友よ…。おまえは今、なにをしている?オレは粘液で縛った女子高生を背中にくくりつけ、空を駆けているぞ。
……。
ダンジョン跡地温泉に到着すると、あの見事に噴き上がっていた湯柱は消えていた。だがかなり深さのありそうな池温泉といった感じに、おおきく様変わりしていた。
「「わぁ~~~ッ!!」」
そして初めてダンジョン跡地温泉を目にしたシャークと結月ちゃんは、その美しさに感動の声をあげる。うむ、谷間にひっそりと湯煙をたたえる、深い藍と緑の混じったまさしく秘湯のたたずまい。当然そこまで降りていけるような道も無く、まさに未踏の秘湯だ。
で、瀬来さんと並んで山の峰から下を覗く。
「深いしけっこう大きいわね。30メートルはあるかしら?」
「そうだな。それくらいありそうだ」
ふぅむ、ここからだと余計に深く感じるな。
「なぁ、早く下におりようぜ!」
「まぁ待て。降りる前に、ここでおまえの会いたがってたマサルを呼ぼう」
大きく穿たれたすり鉢状の地形。だがそこに降りて行ってしまったら、周囲に声も響かない。
「あ、マサルってあのゴツいカンガルーか!」
「でもあのマサルが、呼んだくらいで来てくれるかしら?」
「どうだろうな?でも山のなかを探して回るのも面倒だし、向こうから来てもらう他ないだろう」
そう返すと瀬来さんもしばし思案する素振りをみせたが、やっぱりメンドクサイと感じたのかオレの案に賛同した。
「それもそうね。じゃあふたりとも、おっきな声で山に向かってマサルを呼ぶわよ。いい?」
「おう!まかせろ」
「はい」
「じゃあかけ声は、おーいマサルでいくか。ダンジョン能力者4人がそろって声を張れば、マサルの耳にも届くだろう。アイツも能力者だし」
「そうね、じゃいくわよ。せぇの!」
「「「「お~い!マサルゥ~~!!」」」」
その大音量に近くの山からバッと鳥が飛びたち、鳴いていた蝉の音がピタリとやむ。そして暑い陽射しと澄んだ青空のした、山間にオレ達の発した声がやまびことなってリフレイン。
届け、この思い。マサルよ、ここでおまえのことをミリオタ女子高生が待っているぞ。
45
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる