428 / 660
ghost story
しおりを挟む
今日も一日が終わった。
朝から畑仕事に精をだし、穴の空いていた鶏小屋の修理やホームセンターに買い物に出かけていたら、もう夕暮れだ。
だが時間が経つのが速いと感じるのは、それだけ楽しいからだろう。
そしてマサくんユキくんの楽しい夏の思い出作りのために、ホームセンターで売っていた一番大きな袋の花火も買ってきた。
うむ、物価高の昨今なので、これは大奮発だ。
でもね、こういう楽しい思い出ってプライスレスじゃん?オレには淋しくてつまらない思い出しかないからさ、「こういう楽しい思い出があったら良かったのにな~」という思いもつい重ねてしまい、ふたりにプレゼントさせてもらった。
「ほら、花火買ってきたぞ。夕飯後にみんなでやろう!」
「「わぁ~、花火や!」」
「コォチ、おおきになぁ」
「ああ、いやいや。いいんだよこれくらい」
花火をもらって喜ぶふたりに、仁菜さんも嬉しそうに顔を綻ばせている。うんうん、ええんやで。そういうことをするのも、大人の役目ってもんだ。
……。
そうして午後9時。
いつも寝るのが早いお爺さんと、朝早くから農作業をガンバって手伝ったツインズは就寝タイム。そこでダンジョン能力者で体力に余裕のある者達だけが残り、新宅の前の庭に輪になって座っていた。
そしてその中心には、太い蝋燭だけが一本ポツリと灯されている。
そう、花火のあとでもっと夏らしいことをしようという話になり、これから怪談をすることになったのだ。そこでこうして丸太を椅子代わりに、順に怪談話を披露していく。
『部屋に異変を感じたと思ったら、窓から怖い顔が覗いていた』とか。『廃病院に肝試しにいったグループのひとりがその時変な声を聞き、その後におかしくなって消えてしまった』とか。まぁ恐ろしくもありきたりな怪談が続き、いよいよオレの番が回ってきた。
(むぅ、これは困ったぞ…)
だがオレの話そうと思っていた怪談話は、先に披露されてしまった。ま、こういうのはパターンだからして、細部は違ってても大筋が似てしまうのは否めないのだが。
「ほら次、江月さんの番よ?」
「む、そうだなぁ~」
「ふふ、コォチはどないな怖い話するんやろなぁ」
「なぁおい、スゲェ怖いの頼むぞジャング」
「わ、私は怖い話よりももっとピクシーちゃんたちのお話が聞きたいです…」
「う~む、ではどんな話にするか」
ぶっちゃけ、オレは怖い話をたくさん知っている。それはファンタジー好きなオタとして、そういった方面も調べたりするからだ。
だがここで、ひとつ大きな問題がある。
口下手なオレは語りも恐ろしく下手クソなので、長い話をすればすぐにダレて飽きられてしまうだろう。しかし怖くて面白い話というのは、大抵紆余曲折もあるものなので長い話が多い。
といってそんな話を短くまとめてしまうと、せっかくの怖い話も味気ないモノになってしまう。
「どうしたんだよジャング?もぉ早くしろって!」
そういって隣に座ってるシャークが、バシバシと殴ってくる。もちろんグーパンチだ。おまえねぇ。自分の兄達に対してもそういう態度なのだろうが、オレはおまえのお兄さんじゃないんだぞ?
「ヨシ…、ではだ。ここにいるのは全員ダンジョン能力者だから、この話にしよう」
「お、なに話すか決まったのか!?」
怪談話が好きなのか、話し始めるというとシャークは楽しそうに目を輝かせている。
「うむ…。これは、オレ自身の身に実際に起きた事なんだが…」
そう言って、順にその場にいる全員の眼をみつめていく。
「オレがダンジョンで初めてステータスを取得した時、運が3しかなかったんだ…」
「は…?」
「え…?」
すると疑問の声が口をついた後、数秒してドッと笑いが巻き起こった。
「ぎゃははは!う、運が3てッ!ひ、低すぎるぎゃははは!!」
「えぇ~やめてよもぉ江月さんてば!それじゃ笑い話じゃない~!」
「こらこら、お爺さんたちが寝てるんだから、そんな大きな声で笑うんじゃないよ」
「で、でも3てのはねぇよ…!く、くひひひひ…ッ!」
「え、江月さん…。それじゃぜんぜん怖い話になってませんよ?」
「ふふ、そうやねぇ」
だが、こうして笑いが起きてしまうということも、まぁ想定内だ。
「ハハハ、怖くなかったか。でもね…、キミらは本当にそう思うのかい??」
そうして今度はさっきよりもさらに圧を籠めた眼で、オレは順繰りと全員の眼をみつめていったのだった。
ズゴゴゴゴゴゴ…
朝から畑仕事に精をだし、穴の空いていた鶏小屋の修理やホームセンターに買い物に出かけていたら、もう夕暮れだ。
だが時間が経つのが速いと感じるのは、それだけ楽しいからだろう。
そしてマサくんユキくんの楽しい夏の思い出作りのために、ホームセンターで売っていた一番大きな袋の花火も買ってきた。
うむ、物価高の昨今なので、これは大奮発だ。
でもね、こういう楽しい思い出ってプライスレスじゃん?オレには淋しくてつまらない思い出しかないからさ、「こういう楽しい思い出があったら良かったのにな~」という思いもつい重ねてしまい、ふたりにプレゼントさせてもらった。
「ほら、花火買ってきたぞ。夕飯後にみんなでやろう!」
「「わぁ~、花火や!」」
「コォチ、おおきになぁ」
「ああ、いやいや。いいんだよこれくらい」
花火をもらって喜ぶふたりに、仁菜さんも嬉しそうに顔を綻ばせている。うんうん、ええんやで。そういうことをするのも、大人の役目ってもんだ。
……。
そうして午後9時。
いつも寝るのが早いお爺さんと、朝早くから農作業をガンバって手伝ったツインズは就寝タイム。そこでダンジョン能力者で体力に余裕のある者達だけが残り、新宅の前の庭に輪になって座っていた。
そしてその中心には、太い蝋燭だけが一本ポツリと灯されている。
そう、花火のあとでもっと夏らしいことをしようという話になり、これから怪談をすることになったのだ。そこでこうして丸太を椅子代わりに、順に怪談話を披露していく。
『部屋に異変を感じたと思ったら、窓から怖い顔が覗いていた』とか。『廃病院に肝試しにいったグループのひとりがその時変な声を聞き、その後におかしくなって消えてしまった』とか。まぁ恐ろしくもありきたりな怪談が続き、いよいよオレの番が回ってきた。
(むぅ、これは困ったぞ…)
だがオレの話そうと思っていた怪談話は、先に披露されてしまった。ま、こういうのはパターンだからして、細部は違ってても大筋が似てしまうのは否めないのだが。
「ほら次、江月さんの番よ?」
「む、そうだなぁ~」
「ふふ、コォチはどないな怖い話するんやろなぁ」
「なぁおい、スゲェ怖いの頼むぞジャング」
「わ、私は怖い話よりももっとピクシーちゃんたちのお話が聞きたいです…」
「う~む、ではどんな話にするか」
ぶっちゃけ、オレは怖い話をたくさん知っている。それはファンタジー好きなオタとして、そういった方面も調べたりするからだ。
だがここで、ひとつ大きな問題がある。
口下手なオレは語りも恐ろしく下手クソなので、長い話をすればすぐにダレて飽きられてしまうだろう。しかし怖くて面白い話というのは、大抵紆余曲折もあるものなので長い話が多い。
といってそんな話を短くまとめてしまうと、せっかくの怖い話も味気ないモノになってしまう。
「どうしたんだよジャング?もぉ早くしろって!」
そういって隣に座ってるシャークが、バシバシと殴ってくる。もちろんグーパンチだ。おまえねぇ。自分の兄達に対してもそういう態度なのだろうが、オレはおまえのお兄さんじゃないんだぞ?
「ヨシ…、ではだ。ここにいるのは全員ダンジョン能力者だから、この話にしよう」
「お、なに話すか決まったのか!?」
怪談話が好きなのか、話し始めるというとシャークは楽しそうに目を輝かせている。
「うむ…。これは、オレ自身の身に実際に起きた事なんだが…」
そう言って、順にその場にいる全員の眼をみつめていく。
「オレがダンジョンで初めてステータスを取得した時、運が3しかなかったんだ…」
「は…?」
「え…?」
すると疑問の声が口をついた後、数秒してドッと笑いが巻き起こった。
「ぎゃははは!う、運が3てッ!ひ、低すぎるぎゃははは!!」
「えぇ~やめてよもぉ江月さんてば!それじゃ笑い話じゃない~!」
「こらこら、お爺さんたちが寝てるんだから、そんな大きな声で笑うんじゃないよ」
「で、でも3てのはねぇよ…!く、くひひひひ…ッ!」
「え、江月さん…。それじゃぜんぜん怖い話になってませんよ?」
「ふふ、そうやねぇ」
だが、こうして笑いが起きてしまうということも、まぁ想定内だ。
「ハハハ、怖くなかったか。でもね…、キミらは本当にそう思うのかい??」
そうして今度はさっきよりもさらに圧を籠めた眼で、オレは順繰りと全員の眼をみつめていったのだった。
ズゴゴゴゴゴゴ…
46
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる