うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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hard catch

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「オラァ!降りてこいやぁ!」
「調子んノッテんじゃねぇぞ!」

目下、路上と門の上という立位置で対峙するヤンチャボーイズとオレ。

(さて、それはともかく、どうにも困ったぞ)

力の差は歴然、であろう。オレは彼らに、ひとつも負ける気がしない。が、彼らがこちらの声に耳を傾ける様子はなく、口々に勝手なことをほざいては挑発を繰り返している。

しかし、ムカついたからといって全員ブッ飛ばしてしまうのも難しい。

なぜなら彼らの中にはまだ未成年ぽい、明らかに顔に幼さを残した者の姿もチラホラと見受けられるから。そんなのがいっちょまえを気取り、イキッて原チャのアクセルをペンペン吹かしている姿には非常に腹立たしさを覚える。

が、だからといって怪我を負わせる訳にもいかないだろう。

それをやると子供が怪我をしただなんだと親が出てきて、後々さらに面倒なことになってしまう。なにせコチラは歩く暴力として認定されている、ダンジョン能力者なのだ。

しかしかといって粘液でまとめてふん縛り、それでハイおしまいというのもナンだ。

人ん家を取り囲み、無法を為す者達。

それをなんの痛い目もみせずに警察に引き渡したところで、少しも懲りはしないだろう。どうせ我が身を振り返らずに、あとから卑怯だスキルの所為で負けたなどと不満を並べ、再びおかしな行動を取るのは目にみえている。

それにスキル【粘液】はオレの戦闘スタイルの主軸。その手の内をこんな奴らに見せてやるのは、もったいなさ過ぎる。

「みんな食いモンが無くて困ってんだぞ!良心が痛まないのか!?」
「そうだ!独り占めして良いと思ってんのか糞が!!」
「俺達が分配してやるっつってんだから、早くよこせよ!」

(ふぅむ。さながら、桃太郎作戦といったところか…)

立場の悪くなった彼らは、オレ達から奪った食料を配ることでその復権を目論んでいる様子。彼らがイイモンの桃太郎なら、コチラは悪い鬼というわけだ。

しかし彼らの好き勝手な言い分を、コチラが飲んでやる理由など一分も無い。なので答えは当然、お断りだ。

「なにを煩く吠えてるのか知らんが、いい迷惑だ。さっさと帰れ。そして二度と来るな」
「「なんだとぉ!!」」

「いいから帰れ。コッチはこれから夕飯の支度があるんだから」
「ッ!?ざっけんなよ糞がぁッ!!」

「(おい、なんか話が違くないか…?)」
「(ああ…。脅せばカンタンに言うこと聞くんじゃなかったのかよ)」

こうして前の方でイキッて吠えてたのはオレの言に激昂し、後ろの方にいた連中は、コチラの動じない態度に動揺をみせはじめた。

(しかし、このままじゃ埒もないな。ハァ…ま、仕方ない。ここは未成年じゃない奴を2.3人痛めつけるか。頭の音夢くんが前に出てくれると、話は早いんだが…)

しかしリーダーの音夢くんは集団の中心にいて動きはない。そして相手に正当性を与えない為にも、オレからも手が出せない。

そこで門の上から、挑発には挑発で返してやる。

「フンッ!そうして群れねば何もできんとは…、まったくゴミのような連中よぉ。よく自分達の行動を見返してみるがいい!ふははははッ!」

どうだみよ、この至高の陶芸おじさんばりの挑発を。

するとそれに我慢のできなくなった者達が判断を仰ぐように、音夢くんへと顔を向ける。その様子から、予め相談はしてきたのだろうと推測。まずは脅し、それでダメならまた指示を出すとでもやりとりがあったのだろう…。

で、そんな視線を受けコチラを見詰めたまま動かなかった音夢くんが、ようやく口を開いた。

「万智はどうした…?おまえじゃなく万智を出せ」

ふむ、どうやら音夢くんは、直接瀬来さんと話がしたい様子だな。だがそれも断りだ。

「不要だな。この場はオレが預かっている。そして『さん』をつけろよデコすけくん。親しくもない女性に対し、呼び捨てなど失礼だろう?」
「なにッ!?」

「解らないか?礼儀がなってないと言ってるんだよ。騒音まき散らしたうえに煩く喚き立て、それが人に会いにきた者の態度か!?」
「門から見下ろしてるお前が言うな…」

「ああ、ここに立っていることか?だが残念、門とは元来そういうものだ。おまえらのような不逞の輩の侵入を阻む為のモノだからな」
「クッ、言わせておけば…!」

(ふははは!どうだ見たか!数を頼みに威嚇し、強談により言うことを聞かせようとしたのだろう。だが甘いわ。おまえらの前に立つ者こそ、正真正銘のしょっぱい男!こうと決めたら岩塩並みの硬い意志を、その眼に焼き付けるがいいわ!)

…。

そうして、睨みあうことしばし…。

すると遂に、音夢くんは無事な方の手をふり仲間に合図を送った。それを受け、近くにいた側近ぽい男2名が頷く。そうしてニヤニヤしながらコチラに歩を進めると、跳躍し門の上へと飛び乗ってきた。

「おい…、招いた覚えはない。不法侵入だぞ?」

「ハァ~??知らねェよ、ココって空中だろぉ~~?!」
「そうそう、空中セーフ!知らなかったのかぁバ~カ!ギャハハ!」

(ふぅむ、またバカなことを…)

挑発の笑みを浮かべる男たちが、門の上で左右からオレを挟み込む。

その手には振りやすそうな鉄パイプ。それはもはや強談では通らないと判断し、武力行使に移ったという事。そして門の上に立ったことで、男たちの目にも庭に置かれている超巨大猪の骨が映ったようだ。

「おっほーッ!アレがそうか!ありゃけっこうデカいじゃねぇか!」
「な~る。アレだけでかけりゃ、まだまだ肉はありそうだよな」

などと舌なめずりをして喜んでいるが、オレが独りでアイツを倒したなどとはまるで考えられないらしい。

しかし、それとは別に。自身の力に自信はあるようだが、高所の戦いには慣れてないようで腰がやや引けている。それでもしきりに鉄パイプを振る素振りを交え、コチラを威嚇する姿が滑稽に映る。

「ハッキリ教えてやる。おまえら二人がかりでも、オレには勝てんぞ?」

「寝ぼけんなよカスがッ!ふざけた格好しやがって!」
「ハ、痛い目みないと目が覚めないとよ!こんなヤツもうやっちまおうぜ!」

忠告したにも関わらず、ふたりはそうして左右から鉄パイプを振るった。

「おりゃッ!」
「死ねや!」

右側にいる男は、オレの右膝を狙う。そして左側の男は、オレの後頭部を狙って。

それは右からも左からも襲いくる、左右同時攻撃。不味い。これでは右にも左にも、どちらにも受け流すことが出来ないではないか…。

うむ、ならば仕方ない。こうなったら、その攻撃を受け止めるまでのこと。

そう、オレの、この両手でな…。

「ハード・キャッチ!!」
『『ブチグシャ!!』』
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