うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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Tokyo underground

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オレは忙しく、そしてまた精力的に働いていた。

週に2日は特異産業に赴き、戦闘指導と植物ダンジョンの間引き。もちろん整体学校にも通い、またそれとは別にこんどは特殊指名案件なる仕事を、特異迷宮対策省から受ける事となった。

これは対策省の経理にいるあの人物から、もぎとった仕事になる。結局前に電話を貰った件で、その内容を受け入れ報告書の改ざんが為されたのだ。

それにより一体どんな風に改ざんされたのかというと、大勢のキノコ感染者に囲まれピンチに陥ったオレ。するとその時、急に意識を取り戻した自衛官たちがそれらを羽交い絞めにし『さぁ今だ!俺達ごとやってくれッ!!』という嘘みたいな超ドラマチック展開に。

ただオレも、任務に身命を懸け亡くなった方たちの名誉は守られるべきだろうし、その遺族にだって恩給みたいなモノはあって然るべしと思った。

なにせ彼らを手にかけたのは、ほかの誰でもないオレなのだ。それにより、少しでも自身の業を祓いたいという気持ちもあった。

死した戦士の名誉とその遺族を守る。そう、これは不正とはいえ、馬鹿な政治家のふざけた脱税などとは、訳が違うのである。

しかしこの辻褄を合わせるため、『詳しい聞き取りを行った結果、手柄を独り占めしようと虚偽の報告をした』として、オレの報酬は大きく減じられる事となった。この金額については伏せておく。ただ一日の稼ぎとしてはスゴイが、受けた危険からすればまったく割に合わなかったとだけいっておこう。ヘタに金額を出すと、ひとりヤッていくらかよ、なんて言い出す者が現れるからな。


とはいえそれだけだとコチラが割を食うだけなので、「そっちの言いぶんを聞いてやるんだから、その分なんかで補てんしろ」と話したら、ご指名依頼というカタチでどぶさらいの仕事がまわってきたのだ。

うん、現在東京の地下は、ダンジョンから溢れ出たモンスターに支配されてしまっているといっても、過言ではない。

獣鼠が丈夫なコンクリートをモノともせずに穴を空け、アッチャコッチャに侵入。そうして地下に埋設されたケーブルなんかを齧っては、銀行の通信障害なんかも頻発している有様なのだ。

だがそれを修理するには、そういったモンスターを駆除し断線箇所なりを特定せねばならない。そこでそういった企業からの依頼が対策省経由であげられるのだが、この依頼がすこぶる不人気なうえ、ことごとく失敗続きらしい。

まぁ、その理由はいうまでもない。

だれも暗くて汚い場所になど入りたくはないし、受けてもやっぱりできませんでしたと音をあげるか、やってますよと言ったまま放置。それ故そういった仕事がちっとも片付かないのだという。

結局それらを自衛隊や対策省で処理していたのだが、それにも限度がある。そこでオレにふる仕事として丁度いいと回されたのが、このどぶさらいという訳だ。

…。

で、仕事当日。下水道職員から渡された地図を頼りに辰巳の森公園をさまようと、地下へ潜れるというフェンスに囲まれた建物をみつけた。

「(ぷすぅ~…すこぉ~…、ぷすぅ~…すこぉ~…)ふむ、ここがそうか…」


そんなオレは蟲王スーツに酸素ボンベをふたつ背負い、汚泥を拭いやすいようマスクも透明な岩塩で覆っている。ま、水陸両用蟲王スーツといった出で立ちだ。

酸素ボンベは、臭気とガス対策の為。

下水道に潜るので臭いは当然ひどいし、場所によっては空気が薄かったりメタンガスなんかが発生している可能性もある。これが、ただのダンジョン能力者ではこの仕事をこなせなかった大きな理由。

しかし完全密閉の蟲王スーツであれば汚れはまったく気にしなくて済むし、これに酸素ボンベもあれば完璧。活動時間の制限も、酸素が減ったらピクシークィーンに充填してもらえばいい。オレと記憶の共有をしたクィーンはその概念を獲得し、酸素のみといった風にも空気を生み出せるのだ。

そうして借りた鍵でフェンスと建物を解錠し、暗い階段をおりて行く。

いわずもがな、ヘッドライトのほかいくつもの光源は身に付けている。ライトも酸素ボンベもミリオタ女子高生シャークのオススメを買ったので、まぁ間違いはないだろう。

「(ぷすぅ~…すこぉ~…、ぷすぅ~…すこぉ~…)ほぉ、ココは意外と広いな…」

おりて鉄扉をあけた先は、カマボコ状でコンクリート製の地下下水道。足元には水が流れているものの、どこか防空壕といった雰囲気を感じさせる。

「「ギュチチッ!!」」

と、ライトで照らされた先に、デカいネズミの影が逃げて行くのを確認。やっぱり地下は、モンスターたちの住みかとなっているようだ。

とはいえ今日の仕事は調査。

決められた順路の写真を撮り、どんなモンスターがいたかなどの報告がメインとなる。うん、慣れてもいない初っ端から修理個所をさがせだとかモンスターを駆除しろなんてのを受けるのは、さすがに危険だろう。

(お、ここから先は煉瓦造りか…。う~む、これはスーパー配管工兄弟のステージさながらだな)

だがそうした判断で受けた軽めの依頼ではあるものの、オレはこの仕事をけっこう楽しんでいた。なぜならば、探検は子供的な冒険心が満たされるから。

普通なら、入ったら怒られてしまうような場所。そしてこの先どうなっているんだろうと普段は見られない場所を、こうして覗けるのだ。

(で、あればオレみたいな蟲男じゃなくて、アブドゥルとミゲルタの方が適任だよな)

口に立派なヒゲを生やしてて【跳躍】のスキルも手にしたあいつらなら、スーパー配管工兄弟の代役もみごと果たせるだろう。スキルを得て、うれしそうにピョンピョンとび跳ねてたし。

(お、なんだ。ここで行き止まりか…。なら、写真を撮って完了だな)

東京の地下へと潜る特殊案件。まだまだたくさんあるらしいが、初回の仕事はこうして何事もなく完了したのだった。
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