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5,こっくりさんの弱点
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4人は呆然としていた。そっと義文に触れて見ると、義文の体は氷のように冷たく固くなっていて、確実に生きていないことがわかってしまった。いち早く正気に戻った凛香が、
「きゃあぁあああぁぁぁあああぁ」
叫び声をあげて、一歩ずつゆっくりと窓の方へ下がっていく。体が震えている。
「もう・・・いや・・・!」
茫然としてしまっていた夏海と真翔と琉生が何かを言う前に、凛香は窓から飛び出してしまった。4階だった。
・・・ドサッ。
何か、巨大な砂袋が落ちたような音がした。3人は小さく目配せをしあい重々しくうなずくと、一緒に様子を確認した。四肢は生きているならあり得ない方向に投げ出され、地面は赤く赤く血で染まっていた。
「りん・・・!どうして・・。」
夏海は真っ青になりながら悲痛な声でそう言い、深くうなだれた。真翔と琉生も、恐怖で顔が青を通り越して紙のよ
うに白くなっている。
「・・・りんとよっしーのためにも・・・絶対に逃げ切ろう・・・。」
真翔の一言に二人は力強くうなずいた。
*
自分たちの教室に向かっている。一旦作戦会議をしようとなったのだ。そして今3人がそれぞれもっている情報を共有することにした。この状況で、仲違いなどしている暇はない。
「なっつー、何か情報があったか?」
顔色は悪いながらも、いつも道理の冷静沈着に見える真翔が、夏海に小声で質問した。
「図書館に行ったけど、何もなかった・・・。新聞に何か書いてると思ったんだけどな・・・」
悔しそうに、夏海はそう言った。二人は図書室で何一つつかめなかったのだ。大量の新聞をあさっていただけで、なにもつかめなかったことが、悔しくてたまらない。
「そっか・・・でも、まな君が何か見つけてたみたいだよー。」
はーい、とでも言いたげに琉生が手を挙げて言う。ちょっと場の空気が、和らいだような気がした。
「何?その情報って?」
今は、どんな情報でも欲しい。成美、凛香、義文のためにも。
「これだよ。ためになるか分かんないけど・・・。」
ちょっと自信なさげな声で、真翔は夏海に手渡した。夏海は渡された資料を凝視する。
「これ・・・いじめで自殺した子の?すごい前のっぽいけど・・、これがどうかしたの?」
夏海は、小さく首をかしげた。結構昔の自殺の書類を渡されても、今の状況の打開策にはならない。
「中身じゃない。その写真だ。」
真翔はぶっきらぼうに言う。こういう時の真翔は、ちょっと自信のある時だ。真翔の情報は、期待できるかもしれな
い。
「写真・・・?・・・ん?これ・・・!」
きれいな黒髪の力強い目の女の子。だけれど……
「なっつー、気づいたか・・・?」
真翔は、意外と切れ者な夏海がわかっていることを確信してそう聞いた。
「この子・・・気のせいだけど、こっくりさんに似てる・・・!」
夏海は驚いて、少し興奮した様子で言う。
「これ、るい見た?」
夏海は、興奮が冷めきれない声で、琉生にそう聞いた。
「見たよー?すっごいびっくりしたよ。」
水槽の中をゆったりと泳ぐ金魚を見たまま間延びした声で、返事をしてきた。この状況でそんな様子なのは、のんびりしている琉生だけだ。いつも通りマイペースな琉生に、少しほっとした気がした。
「るい!伏せろ!!!」
真翔が唐突に叫ぶ。琉生は何も言わずに伏せる。真翔の視線の先には、【こっくりさん】がいた。
「うわぁあああぁぁ!」
真翔は叫んで、水槽の水をかける。空になった水槽を持ったまま、真翔は身構える。琉生と夏海はドアを勢
いよく開けた。
「う・・・うぅ・・み・・・・・み・・ず・・」
【こっくりさん】が急に苦しそうにうなりだす。夏海、真翔、琉生の3人は何もできずに固まった。
「み・・・ず・・水・・・うぅううぅぅ・・・」
苦しそうにうずくまって、黒い霧のようになって消えた。
「水が・・こっくりさんの弱点・・・?」
びしょびしょになった床を見ながら夏海がつぶやく。
「もう一回試してみよう。・・・でも、失敗したら・・」
真翔が暗い表情で言う。自分が死ぬのも仲間が死ぬのも嫌に決まっている。その時能天気な声が聞こえた。
「僕が実験するよー」
琉生だ。
「2人のおかげでここまで進めたと思うんだ。少しくらい役に立たせてよ。」
2人は止めることができなかった。自分がする勇気がなかった。琉生はもうバケツに水を入れ始めている。
「2人は教室にいて?廊下にいた方が出やすいかなって思って。」
琉生が廊下に立って言う。真翔と夏海は琉生に対して感謝と謝罪の気持ちでいっぱいだった。
「・・・きた・・・!」
夏海と真翔は顔を上げた。こっくりさんだ。琉生は身構える。2人は固唾をのんで見守る。
「・・・みいつけた・・・!」
こっくりさんが声を発した瞬間、琉生がバケツの水をかけた。
「うぅうぅ・・・うぅぅぅ・・・・」
こっくりさんはうずくまって苦しんでいる。実験は成功したみたいだ。こっくりさんに対処できるってことだ。大き
な進歩をすることができた。
「うまくいった・・・よかったああぁぁぁあ・・・・」
教室に戻ってきた琉生は真翔のところにいた。よほど怖かったのか半泣きになっている。こっくりさんの弱点は水。でも不思議だ。なぜ・・・水?さっき真翔に見せたもらった資料に関係がある?考えれば考えるほどわからない。真翔がこっちを見ている。真翔も同じことを考えていたらしい。
「どうしたの?深刻そうにして―?」
琉生は相変わらず能天気だ。その能天気さに少し笑みがこぼれる。こんな状況なのに・・・。凛香と成美のためにも頑張らないと・・・。
「きゃあぁあああぁぁぁあああぁ」
叫び声をあげて、一歩ずつゆっくりと窓の方へ下がっていく。体が震えている。
「もう・・・いや・・・!」
茫然としてしまっていた夏海と真翔と琉生が何かを言う前に、凛香は窓から飛び出してしまった。4階だった。
・・・ドサッ。
何か、巨大な砂袋が落ちたような音がした。3人は小さく目配せをしあい重々しくうなずくと、一緒に様子を確認した。四肢は生きているならあり得ない方向に投げ出され、地面は赤く赤く血で染まっていた。
「りん・・・!どうして・・。」
夏海は真っ青になりながら悲痛な声でそう言い、深くうなだれた。真翔と琉生も、恐怖で顔が青を通り越して紙のよ
うに白くなっている。
「・・・りんとよっしーのためにも・・・絶対に逃げ切ろう・・・。」
真翔の一言に二人は力強くうなずいた。
*
自分たちの教室に向かっている。一旦作戦会議をしようとなったのだ。そして今3人がそれぞれもっている情報を共有することにした。この状況で、仲違いなどしている暇はない。
「なっつー、何か情報があったか?」
顔色は悪いながらも、いつも道理の冷静沈着に見える真翔が、夏海に小声で質問した。
「図書館に行ったけど、何もなかった・・・。新聞に何か書いてると思ったんだけどな・・・」
悔しそうに、夏海はそう言った。二人は図書室で何一つつかめなかったのだ。大量の新聞をあさっていただけで、なにもつかめなかったことが、悔しくてたまらない。
「そっか・・・でも、まな君が何か見つけてたみたいだよー。」
はーい、とでも言いたげに琉生が手を挙げて言う。ちょっと場の空気が、和らいだような気がした。
「何?その情報って?」
今は、どんな情報でも欲しい。成美、凛香、義文のためにも。
「これだよ。ためになるか分かんないけど・・・。」
ちょっと自信なさげな声で、真翔は夏海に手渡した。夏海は渡された資料を凝視する。
「これ・・・いじめで自殺した子の?すごい前のっぽいけど・・、これがどうかしたの?」
夏海は、小さく首をかしげた。結構昔の自殺の書類を渡されても、今の状況の打開策にはならない。
「中身じゃない。その写真だ。」
真翔はぶっきらぼうに言う。こういう時の真翔は、ちょっと自信のある時だ。真翔の情報は、期待できるかもしれな
い。
「写真・・・?・・・ん?これ・・・!」
きれいな黒髪の力強い目の女の子。だけれど……
「なっつー、気づいたか・・・?」
真翔は、意外と切れ者な夏海がわかっていることを確信してそう聞いた。
「この子・・・気のせいだけど、こっくりさんに似てる・・・!」
夏海は驚いて、少し興奮した様子で言う。
「これ、るい見た?」
夏海は、興奮が冷めきれない声で、琉生にそう聞いた。
「見たよー?すっごいびっくりしたよ。」
水槽の中をゆったりと泳ぐ金魚を見たまま間延びした声で、返事をしてきた。この状況でそんな様子なのは、のんびりしている琉生だけだ。いつも通りマイペースな琉生に、少しほっとした気がした。
「るい!伏せろ!!!」
真翔が唐突に叫ぶ。琉生は何も言わずに伏せる。真翔の視線の先には、【こっくりさん】がいた。
「うわぁあああぁぁ!」
真翔は叫んで、水槽の水をかける。空になった水槽を持ったまま、真翔は身構える。琉生と夏海はドアを勢
いよく開けた。
「う・・・うぅ・・み・・・・・み・・ず・・」
【こっくりさん】が急に苦しそうにうなりだす。夏海、真翔、琉生の3人は何もできずに固まった。
「み・・・ず・・水・・・うぅううぅぅ・・・」
苦しそうにうずくまって、黒い霧のようになって消えた。
「水が・・こっくりさんの弱点・・・?」
びしょびしょになった床を見ながら夏海がつぶやく。
「もう一回試してみよう。・・・でも、失敗したら・・」
真翔が暗い表情で言う。自分が死ぬのも仲間が死ぬのも嫌に決まっている。その時能天気な声が聞こえた。
「僕が実験するよー」
琉生だ。
「2人のおかげでここまで進めたと思うんだ。少しくらい役に立たせてよ。」
2人は止めることができなかった。自分がする勇気がなかった。琉生はもうバケツに水を入れ始めている。
「2人は教室にいて?廊下にいた方が出やすいかなって思って。」
琉生が廊下に立って言う。真翔と夏海は琉生に対して感謝と謝罪の気持ちでいっぱいだった。
「・・・きた・・・!」
夏海と真翔は顔を上げた。こっくりさんだ。琉生は身構える。2人は固唾をのんで見守る。
「・・・みいつけた・・・!」
こっくりさんが声を発した瞬間、琉生がバケツの水をかけた。
「うぅうぅ・・・うぅぅぅ・・・・」
こっくりさんはうずくまって苦しんでいる。実験は成功したみたいだ。こっくりさんに対処できるってことだ。大き
な進歩をすることができた。
「うまくいった・・・よかったああぁぁぁあ・・・・」
教室に戻ってきた琉生は真翔のところにいた。よほど怖かったのか半泣きになっている。こっくりさんの弱点は水。でも不思議だ。なぜ・・・水?さっき真翔に見せたもらった資料に関係がある?考えれば考えるほどわからない。真翔がこっちを見ている。真翔も同じことを考えていたらしい。
「どうしたの?深刻そうにして―?」
琉生は相変わらず能天気だ。その能天気さに少し笑みがこぼれる。こんな状況なのに・・・。凛香と成美のためにも頑張らないと・・・。
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