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第10話
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翌日の仕事帰り。
食べ物がスッカラカンの我が家に、明日を生きる糧となる『賄いの余り物』を引っ提げて帰宅する途中。
「お、和馬じゃんか」
「ミノル?」
コンビニから出てきたツンツン頭の男、園田ミノルとばったり遭遇してしまった。
「仕事終わりか?」
「まあな」
「お前もここで買い物?」
ミノルは今出てきたばかりのコンビニを振り返る。いや、今日の俺はおにぎりを買うレベルの小銭さえ持ち歩いちゃいないさ。
「ああ、もう持ってるのか」
俺の手からぶら下がるビニール袋を見て、ミノルは一人納得したような顔をした。
この中に入っているのはバイト先でもらってきた「塩おにぎりスペシャル」が二個だ。何がスペシャルって、業務用の塩で味付けしただけの何の変哲もないスペシャルなおにぎりだが、腹が減ってれば何でも「スペシャル」だろ?
俺と並んで歩き出すミノル。なぜついてくる? おにぎりはやらんぞ? 俺の腹に入る保障もないが。
「和馬は相変わらずエロゲーばっかりやってるのか?」
ミノルよ、その言い方には語弊がある。俺はエロゲばっかりやってるのではない。エロゲしかやってないんだ。
「エロゲは俺の魂だからな。俺の生活の基盤は『衣食住』じゃない、『エ食住』だ。エロゲと食事と住むところだ」
「服は必要ないってか?」
冷静なツッコミはこいつの役目だ。
「まず住むところがないとエロゲができない。特に実家はダメだ、危険すぎる。そして食事をしないとエロゲをする体力がもたない。しかし服がなくてもエロゲはできる」
「エロゲーが基準かよ。お前が全裸でエロゲーしてる姿とか、想像したら地獄絵図だな」
自分で想像しても大概に地獄絵図だった。たしかに服も大切だな。全裸ではエロゲを買いにいけない。つまり俺の生活を支える三大要素は『エ衣食住』か。四つになってしまったが。
でも今は家にはほたるが寄生して俺の生活ゾーンは隅へと追いやられているし、とゆーかほたるの前で他のエロゲをやるわけにはいかない。給料日までお金がないから食事もまともに食べてないし、これは大して重要じゃないがお気に入りの服もほとんどほたるに「これあたしが着る」とかで奪われているし。
まあ、ここらへんはミノルに言えないけど。
なにより肝心のエロゲがリアルに侵食してきて、もはやゲームなのかリアルなのか区別がつかない。よって、俺の『エ衣食住』は崩壊しつつある。
「和馬、人生にエロゲーは必須じゃないだろ。必要なのは恋だよ、愛だよ。リアルな女子との恋愛だよ」
顔に似合わずそんなことをのたまうコイツ――園田ミノルは俺の友人で、高校の頃の同級生だ。まあ、ゲーム友達ってやつだな。ただしミノルはエロゲに興味を持たない不健康男子で、代わりにリアルの女子を求めて大学に進学した無謀極まりないヤツである。
そのハリネズミのようにトゲトゲした頭に近寄ってくる女子がいるのか甚だ疑問だがな。近づいたら刺さりそうだ。
「ところで和馬、久々に鉄剣の対戦でもしようぜ。最近オレ、新しいキャラを使うようになったからさ、そろそろお前のアレックスに勝てる気がするんだ。オレのキングジャックとお前のアレックス、どっちが最強か王座決定戦といこう」
「ってミノル、学校は?」
「何言ってんだ、今日は日曜日だろ」
ああ、そういえば今日は日曜か。深夜のレストランで働いていると曜日感覚がなくなって困る。自称「リアルな大学生活を謳歌している」ミノルにとって、週末の意味合いは俺とは違うのだろう。興味ないが。
しかしゲームの対戦か。ミノルは対戦型ゲームが好きだからな。高校時代、俺とはしょちゅう対戦してた。というか、いつも俺にボコられるカモであった。
「で、どこでやるんだよ。ゲーセンはまだ開いてないぞ。まあ開いてても俺は金がないが」
「お前んち」
「ムリ!」
「どうしてだよ。いつもお前んちでやってるじゃん」
ダメだ無理だ不可能だ。この時間はほたるが寝てるかもしれない。きっと今頃、Tシャツ一枚でパンツが見える格好で寝返りをうってるに違いない。
「い、いや……今日は親が来ることになってるからさ」
まあ嘘だけど。
「なんだよ、その『強引に家に来ようとする男を全力で阻止する女』みたいな口実は」
「とにかくダメだ。今日はダメだ」
「じゃあ明日は?」
なぜか食い下がってくるミノル。
「明日もダメだ。てかミノル、お前学校だろ?」
「じゃあ今度の土曜」
しつこい。というか今度の土曜は何か用事があったような。
「……ダメだ。土曜は実家の姉ちゃんが来る。月に一度の様子見で……って」
まずい、そうだった。今度の土曜日は姉ちゃんが俺の様子見に来るんだった。ほたるを隠さなきゃ、いや追い出すか? 待て待て、そんなことをしたら追い出されるのは俺だ。
「しゃーねーな。それじゃあその次の日でもいいから」
「……ダメだ。次の日はきっと、俺の具合が悪くなってる」
「なんだその全力で意味不明な言い訳は」
ミノルには意味不明でも、このままいくと次の日曜日に俺がどうなっているかは明白なんだよ。
「まあいいや、じゃあ暇があったら呼んでくれよ。王座決定戦はオレが勝つからな」
「あ、ああ」
俺の意味不明な言い訳に根負けしたのか、ミノルは諦めてくれたようだった。
しかしな、ミノル。俺はすでに「鉄剣の王座」から陥落してるのだ。自分で「得意」と思っていた鉄剣だが、俺はほたるにあっさりと『究極奥義』をキメられて、もはや王座の地位には立っていない。
それにミノルには、ウチにほたるがいるのを知られるわけにはいかないからな。
俺がほたると同棲してるなんてバレた日には何を言われるかわかったもんじゃない。いや、あれは同棲とは言わないか。ほたるが勝手に寄生してるだけだ。
だいたい同棲っていったらもっとこう……エロゲな展開があってもいいんじゃないか?
それがエロゲどころかチューすらない男女の同棲なんて――
食べ物がスッカラカンの我が家に、明日を生きる糧となる『賄いの余り物』を引っ提げて帰宅する途中。
「お、和馬じゃんか」
「ミノル?」
コンビニから出てきたツンツン頭の男、園田ミノルとばったり遭遇してしまった。
「仕事終わりか?」
「まあな」
「お前もここで買い物?」
ミノルは今出てきたばかりのコンビニを振り返る。いや、今日の俺はおにぎりを買うレベルの小銭さえ持ち歩いちゃいないさ。
「ああ、もう持ってるのか」
俺の手からぶら下がるビニール袋を見て、ミノルは一人納得したような顔をした。
この中に入っているのはバイト先でもらってきた「塩おにぎりスペシャル」が二個だ。何がスペシャルって、業務用の塩で味付けしただけの何の変哲もないスペシャルなおにぎりだが、腹が減ってれば何でも「スペシャル」だろ?
俺と並んで歩き出すミノル。なぜついてくる? おにぎりはやらんぞ? 俺の腹に入る保障もないが。
「和馬は相変わらずエロゲーばっかりやってるのか?」
ミノルよ、その言い方には語弊がある。俺はエロゲばっかりやってるのではない。エロゲしかやってないんだ。
「エロゲは俺の魂だからな。俺の生活の基盤は『衣食住』じゃない、『エ食住』だ。エロゲと食事と住むところだ」
「服は必要ないってか?」
冷静なツッコミはこいつの役目だ。
「まず住むところがないとエロゲができない。特に実家はダメだ、危険すぎる。そして食事をしないとエロゲをする体力がもたない。しかし服がなくてもエロゲはできる」
「エロゲーが基準かよ。お前が全裸でエロゲーしてる姿とか、想像したら地獄絵図だな」
自分で想像しても大概に地獄絵図だった。たしかに服も大切だな。全裸ではエロゲを買いにいけない。つまり俺の生活を支える三大要素は『エ衣食住』か。四つになってしまったが。
でも今は家にはほたるが寄生して俺の生活ゾーンは隅へと追いやられているし、とゆーかほたるの前で他のエロゲをやるわけにはいかない。給料日までお金がないから食事もまともに食べてないし、これは大して重要じゃないがお気に入りの服もほとんどほたるに「これあたしが着る」とかで奪われているし。
まあ、ここらへんはミノルに言えないけど。
なにより肝心のエロゲがリアルに侵食してきて、もはやゲームなのかリアルなのか区別がつかない。よって、俺の『エ衣食住』は崩壊しつつある。
「和馬、人生にエロゲーは必須じゃないだろ。必要なのは恋だよ、愛だよ。リアルな女子との恋愛だよ」
顔に似合わずそんなことをのたまうコイツ――園田ミノルは俺の友人で、高校の頃の同級生だ。まあ、ゲーム友達ってやつだな。ただしミノルはエロゲに興味を持たない不健康男子で、代わりにリアルの女子を求めて大学に進学した無謀極まりないヤツである。
そのハリネズミのようにトゲトゲした頭に近寄ってくる女子がいるのか甚だ疑問だがな。近づいたら刺さりそうだ。
「ところで和馬、久々に鉄剣の対戦でもしようぜ。最近オレ、新しいキャラを使うようになったからさ、そろそろお前のアレックスに勝てる気がするんだ。オレのキングジャックとお前のアレックス、どっちが最強か王座決定戦といこう」
「ってミノル、学校は?」
「何言ってんだ、今日は日曜日だろ」
ああ、そういえば今日は日曜か。深夜のレストランで働いていると曜日感覚がなくなって困る。自称「リアルな大学生活を謳歌している」ミノルにとって、週末の意味合いは俺とは違うのだろう。興味ないが。
しかしゲームの対戦か。ミノルは対戦型ゲームが好きだからな。高校時代、俺とはしょちゅう対戦してた。というか、いつも俺にボコられるカモであった。
「で、どこでやるんだよ。ゲーセンはまだ開いてないぞ。まあ開いてても俺は金がないが」
「お前んち」
「ムリ!」
「どうしてだよ。いつもお前んちでやってるじゃん」
ダメだ無理だ不可能だ。この時間はほたるが寝てるかもしれない。きっと今頃、Tシャツ一枚でパンツが見える格好で寝返りをうってるに違いない。
「い、いや……今日は親が来ることになってるからさ」
まあ嘘だけど。
「なんだよ、その『強引に家に来ようとする男を全力で阻止する女』みたいな口実は」
「とにかくダメだ。今日はダメだ」
「じゃあ明日は?」
なぜか食い下がってくるミノル。
「明日もダメだ。てかミノル、お前学校だろ?」
「じゃあ今度の土曜」
しつこい。というか今度の土曜は何か用事があったような。
「……ダメだ。土曜は実家の姉ちゃんが来る。月に一度の様子見で……って」
まずい、そうだった。今度の土曜日は姉ちゃんが俺の様子見に来るんだった。ほたるを隠さなきゃ、いや追い出すか? 待て待て、そんなことをしたら追い出されるのは俺だ。
「しゃーねーな。それじゃあその次の日でもいいから」
「……ダメだ。次の日はきっと、俺の具合が悪くなってる」
「なんだその全力で意味不明な言い訳は」
ミノルには意味不明でも、このままいくと次の日曜日に俺がどうなっているかは明白なんだよ。
「まあいいや、じゃあ暇があったら呼んでくれよ。王座決定戦はオレが勝つからな」
「あ、ああ」
俺の意味不明な言い訳に根負けしたのか、ミノルは諦めてくれたようだった。
しかしな、ミノル。俺はすでに「鉄剣の王座」から陥落してるのだ。自分で「得意」と思っていた鉄剣だが、俺はほたるにあっさりと『究極奥義』をキメられて、もはや王座の地位には立っていない。
それにミノルには、ウチにほたるがいるのを知られるわけにはいかないからな。
俺がほたると同棲してるなんてバレた日には何を言われるかわかったもんじゃない。いや、あれは同棲とは言わないか。ほたるが勝手に寄生してるだけだ。
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それがエロゲどころかチューすらない男女の同棲なんて――
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