青春〜或る少年たちの物語〜

Takaya

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第一章 それぞれの出逢い

第九話 仲間

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 ※前回の第八話の後半を修正しました。再読した方が分かりやすい展開になってます。

この状況の中、恵弥は1人考えていた。

(こいつ、怯えてはいるがそれでも喧嘩するつもりか。ただの虚勢か、それとも....)

「さっさと死ね!」

 音也の右フックが貴哉の鳩尾を捉えた。小柄で細身の、鍛えたことなんかない貴哉はそのままうずくまる。

「おい小僧、やり返してみろやこら!」

 音也はニヤニヤ笑っている。

(ちくしょう、なんてパワーだ。)

 貴哉は度肝を抜かれた。しかし、ここで諦めることだけはしたくなかった。

「おい、そいつもう戦えねぇだろ!」

 さきほど倒された春樹が起き上がりながら叫ぶ。

「うるせぇ!負けた野郎は黙ってみてろ!」
「....お前がうるせぇよ...」

 貴哉がどうにかして立ち上がり、両手で音也の胸ぐらを掴む。

「おぉ、チビ野郎、よく起き上がれたなぁ、えぇ?ここからどうするつもりだ?あ?」
「....こうするんだよ!」

 貴哉は思いっきり頭を音也の鼻目掛けてぶつけた。

「うぐっ、この野郎っ...!」
「俺だってやるんだ!」
「調子に乗るな!」

 音也は力任せに貴哉の顔に拳を叩き込んだ。貴哉はそのまま倒れる。が、

「まだだよ、来いこら!」

 フラフラになりながらも立ち上がる。

「音也、それ以上やったらそいつ死ぬぞ!」

 春樹が再び叫んだ。

「うるせぇ!こいつがまだやれるっていうなら全力で迎え討つのが男ってもんだろうが!」

 音也が言い返した。

「貴哉!頼むからもう立つな!」

 今度は和人が叫んだ。

「....うるせぇよ。邪魔すんじゃねぇ....」
「はぁ?お前、何言ってんだよ。」

 貴哉は息を切らしながら答えたのを聞いて、和人は自分の耳を疑った。小さい頃、ゲームに負けたらいじけて泣いていた貴哉が、こんなにもボロボロになっても突っ立っている。

「なんでお前、そんなになってまで....」
「だからうるせぇよ!俺はなぁ、中学になったら、絶対こういうのでは負けたくねぇって、あの日決めたんだ!」
「あの日?」

 貴哉の言う「あの日」が何のことなのか、和人には分からない。無論、恭典にもだ。

「貴哉お前、何があったんだ?」
「うるせぇよ!何度も言わせるな!」

 貴哉がそう叫んで音也を殴ろうとした時、恵弥が体当たりしてきた。たまらず、貴哉は倒れた。

「おい、何すんだよ!」

 和人や恭典たちが抗議する。貴哉は抗議する気力も残ってないようだ。

「こうでもしないと止まらないだろこいつは。」

 一息ついて、恵弥が喋りだす。

「貴哉、お前なかなかの男じゃねぇか。昔何があったか知らねぇが、俺はお前が好きになったよ。」
 
 続いて、音也が口を開いた。

「まぁ、それには同感だ。ただの口だけ野郎かと思ったが、ぶん殴ちまって悪かったな!」

 音也はガハハと大声で笑った。つられて、和人と恭典も笑いそうになる。

「貴哉、俺はお前のこと見直したよ。」
「あぁ、俺もだ。見ない間に随分男になったじゃねぇか。」

 この戦いを眺めていた奏や裕明、春樹、謙治も痛む体を起こし、貴哉のもとに歩みよる。

「すげぇなお前、感動しちまったよ。」
「あぁ、お前みたいなやつとは、是非仲間になりてぇよ。」
「....俺も同感だ。」
(仲間、だって?)

 彼らの言葉は貴哉の耳にほとんど入ってなかった。だが、貴哉も彼らが自分に対しての敵意がないことだけは感じたようだ。掠れるような声で呟く。

「俺は別に仲間になんか....」
「何言ってんだよ、男のツンデレなんてみっともねぇぜ?」
「つん、なんて?」

 春樹の言葉に謙治が食いついた。2009年当時、ツンデレという言葉はまだオタク界隈の言葉であり、世の中に浸透していなかった。

「お前やっぱり、韓国オタクつっーか、普通にオタクなんだろ?」
「うるせぇロン毛!」

 2人のやり取りが可笑しくて、みんなが笑いはじめた。つられて、貴哉の顔にも笑みがこぼれる。

「さて、おしゃべりはここまでにして俺から一つ提案がある。」

 恵弥が場を仕切りはじめた。皆が一斉に恵弥を見る。

「俺は、貴哉を強者チューバーに推薦したい。」

 一瞬、どよめきが起こる。

「お前ら、自分が勝てない相手に向かってあんな風にタンカきれるか?立ち向かってくことができるか?ボコボコになっても、立ち上がろうとすることができるか?それができる貴哉こそ、*強い者*の称号に相応しいんじゃねぇか?」
「それも分からなくもねぇがよぉ、」

 恭典が口を挟む。

「こいつ、人を仕切ることも出来ねぇし、そもそもKYだぜ?余計に揉め事ばっかり起こされちゃ、俺たちの身も持たねぇよ。」
「それは俺たちが支えていけばいい。最初っからなんでもできるやつなんて、それこそいねぇだろ。」

 恵弥はどうやら貴哉に惚れ込んでいるようだ。それを見て、音也が口を開く。

「恵弥の言うとおりだ!こいつはきっと大物になるぞ!いや、大物にするんだ!俺たちがな!」

 音也がまたガハハと笑う。しかし、

「勝手に決めんなよ....」

 貴哉が今にも潰れそうな声で言う。

「俺は仲間になるなんて一言も言ってねぇぞ。それに、何が強者チューバーだ。俺は負けたじゃねぇか。」
「お、おい、貴哉、みんなお前のこと思って....」

 恭典が語りかけるが貴哉は聞かない。

「いいや、俺は強者チューバーにはならねぇ!そんなお情けで手に入る称号なんていらねぇ!3年になった時、自分の力で幹部になってやる!」

 みんなすっかり、貴哉の気迫に呑まれてしまった。そして、1人がガハハと笑い出した。今度は音也ではなく、恵弥である。

「やっぱりお前、たいしたやつだ!俺が惚れ込んだだけはある!よし、じゃあ、俺の提案は没にしよう!」
「ちぇっ、なんだよ、せっかく盛り上がったのによぉ、」
「お前だけだろうが。」

 音也が少々ふて腐れたのを恭典がなだめた。

「お前、やっぱりツンデレだな。」

 貴哉の頭を春樹が小突く。

「まぁ、貴哉の仲間入りが決定した所で、そろそろ強者チューバーと幹部を決めようじゃないか。」
強者チューバーは恵弥、お前がなるべきだ。」

 和人が言った。それに謙治が同調する。先ほど恵弥に倒された2人だ。

「なんだと?」
「さっきは突っ掛かって悪かったな。ずっと見て思ったけど、やっぱりお前が相応しいよ。」

 他の者も口々に言う。すると、恭典と音也が、

「いいじゃねぇか。それで勝ち残ってる俺と音也が幹部だ。一緒に伊志凪盛り上げていこうぜ?」
「そうだぜ、恵弥、俺からも頼む。」
「そこまで言うなら、強者チューバーなってやろうじゃねぇか!」
「よし、決まりだな!みんな、これからは恵弥中心に俺たちが仕切って行く!しっかりついて来いよ!」

 全員が、思い思いの返事をした。伊志凪中学校63期生野球部、もとい不良グループ誕生の瞬間である。
 その後、全員で一緒に帰った道中、ボロボロの貴哉が音也を「金髪やめろよ」とからかい、音也が「やっぱりこいつ殺す」と大騒ぎした。
 和人が恭典に「あの場で自分の幹部入りを宣言するなんてやっぱりお前ちゃっかりしてるな」とからかい、チョークスリーパーをかけられた。
 謙治が春樹をオタク扱いして蹴られ、裕明が奏に「よくも裕明をっ、て聞こえてたぜ」とからかい足を踏まれた。
 そしてその無茶苦茶具合に、恵弥が「お前らいい加減にしろ」と叫んだ。
 だが、そこには殴り合った時の殺伐さ微塵もなく、むしろ中学生らしい、ほのぼのとした空間が広がっていた。

つづく




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