青春〜或る少年たちの物語〜

Takaya

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第一章 それぞれの出逢い

第十四話 男たちの放課後〜伯亜の場合〜

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「裕也くーん!早く行こうよ!」

 伯亜は放課後、隣のクラスに来て池宮城 裕也いけみやぎ ひろやを呼んだ。

「急かさないでよ!今行くから!」

 裕也は答える。彼は伯亜らと同じ荒川小出身で、彼もまた貴哉たちの従兄弟である。小柄で華奢な、どちらかといえば貴哉寄りだか、貴哉ほどKYでも無愛想でもない。しかも、素直だ。そして、恭典たちのようにガツガツしてる訳でもない。池宮城一族の中では1番まともなのではないだろうか。

「今日もまた吹奏楽見に行くの?」

 廊下を歩きながら裕也が尋ねる。

「うん、だって昨日楽しかったじゃん!」
「確かに楽しかったけどさ、僕たち以外みんな女の子だったじゃん?ちょっと恥ずかしいよ。」
「えー、照れ屋だなー、大丈夫だよ!僕も行くから!」

 なんて言っているが、実は伯亜も男1人は恥ずかしいと思っていた。たが、昨日の体験で吹奏楽に魅力を感じていたため、なんとしても入部したい。

「伯亜はまだいいよ、可愛いお姉ちゃんいるし、女の子に慣れてるでしょ?僕はほら、1人っ子だからさ....」
「んもー、そんなんじゃ一人前の男になれないぞ!」

 紅一点、ならぬ黒一点にはなりたくない。ここでこいつを逃がす訳にはいかない。伯亜は実はこういうこと考える男なのだ。
 ちなみに、彼の姉はバレー部の平田桃子だ。

「そこまで言うんなら行こうかな。でもその前にトイレ行こうよ。部活中、女の子の前でトイレ行きたいなんて恥ずかしくて言えないよ。」
「....君、ちょっと異常だよ。」

 さすがに伯亜もズッコケる。取り敢えずトイレに向かうと、女子トイレからユニフォームに着替えた香織、明良、麗花が荷物を持って出てきた。その瞬間、裕也が立ち止まり目を覆った。

「見えなくなったら教えて。」
「君どれだけシャイなの?」
「だって、ドキドキするじゃん。」
「ふーん、僕はお姉ちゃんで見慣れてるからなんとも思わないや。それより頑張って目開けなよ。」
「でも....」
「大丈夫だって!ほら、早く!」
「うん....」

 裕也はドキドキしながら目を開ける。少し彼女たちは遠くに行ったが、まだよく見える。

「....よく見るとあんまりドキドキしないね。」
「でしょ?明良くんも結構ブルマ似合ってるじゃん?」
「本当だね。」
「香織ちゃんなんて、結構いいお尻してるじゃん?」

 その瞬間、香織が後ろを振り向いた。まるで睨みつけるような顔をしている。2人は違う意味でドキッとした。

「伯亜が変なこと言うからじゃん!早くトイレ入ろう!」
「うん、僕も今ちょうどおしっこしたくなったゃった.....」

 ちなみに香織はただ呼ばれたような気がして振り向いただけで、ただ遠いから目を細めただけだ。

(気のせいか。)

 香織は気にせず部活へ向かっていった。

 一方、男子トイレで用を済ませて2人が外に出ると見慣れた顔に遭遇した。

「あっ!尚也くん、優也くん!」

 池宮城 尚也いけみやぎ なおや池宮城 優也いけみやぎ ゆうや、池宮城一族で唯一の双子である。2人とも小柄でモサモサの髪でよく似ている。因みに見分け方としては、尚也は右目が小さくて、優也は左目が小さいことだ。

「あー、伯亜じゃん?何してるの?」
「今から裕也くんと吹奏楽部に行くの!よかったら優也くんたちもどう?」
「....僕、尚也なんだけど?」
「あ、ごめんね。」
「そろそろ覚えてよ。」

 尚也はどちらかと言えば無愛想で、はっきり物言うタイプだ。貴哉に近い。それに、優也と間違われると不機嫌になる。

「まぁまぁ、僕たちよく似てるんだから仕方ないよ。ごめんね伯亜、尚也は新学期で皆から間違われて不機嫌なんだ。それより、吹奏楽?面白そうじゃん、行こうよ。」

 対して優也はいつもニコニコしている。こういう気遣いもできる。これは小さい頃から尚也が余計なこと言った時にフォローしてきたからだ。

「いや、僕はいいよ。今そんな気分になれないから。」
「尚也、どうして?」
「優也、よくそんなニコニコしてられるね。さっき見たでしょ?貴哉が恭典たちに連れて行かれるの?」
「えっ?」

 伯亜は驚いた。確かに教室を出る時に貴哉が彼らと話し込んでいるのは見たが、まさかそんなことになっているとは。

「恭典さ、最近煙草なんか吸うようになってさ、不良みたいになってるじゃん?」
「確かにそうだけどさ....」
「今頃、貴哉が何かされてるんじゃないかと思うと僕は心配でならないよ。」
「尚也、どうしてそんなこと....」
「だって、僕は小さい時から恭典に小突かれてきたんだ。心配にもなるよ。」
「馬鹿!」

 すると、いきなり今まで黙っていた裕也が叫んだ。少々涙ぐんでいる。

「どうしてそんなことが言えるの?僕たち従兄弟だよ?もっとお互いを信じようよ?それに、恭典を悪く言わないで!恭典はね、確かにあんなんだけど、それでも、それでも、とっても優しいんだから!」

 裕也の目に涙が伝う。それを優也がハンカチで拭う。

「裕也、泣かないで。尚也はただ貴哉が心配なだけだからさ。尚也も言い方悪いよ?恭典だって悪い奴じゃないんだからさ、分かるでしょ?」
「....悪かったよ。」

 伯亜はこの重苦しい雰囲気の中で狼狽していたが、意を決して仕切りだす。

「さっ、仲直りして、行こうよ!」
「....入ってくるなよな。」
「えっ?」
「だから入ってくるなって。今僕たちが話してるでしょ?」

 尚也の言い草にさすがの伯亜も頭にきた。

「なにそれ!偉そうに。僕はね、昔から尚也くんのすぐ不機嫌になる所、本当に嫌なの!」

 すると、尚也が伯亜の弁慶のあたりを蹴り飛ばした。

「だからなんだよ。じゃあ、関わってくんな。」

 そこまで言いかけたが、尚也は言えなかった。なぜなら、優也のボディブローが直撃したからだ。たまらず、尚也は倒れる。

「そうやって、すぐ不機嫌になってすぐ手を出すから恭典たちに小突かれるんでしょ?中学生になったらそういう所直すって、僕と約束したでしょ?」
「....ごめん。」
「僕じゃなくて伯亜に謝りな。」
「伯亜、ごめん。」
「い、いや、分かってくれたならいいよ、全然....」

 因みにボディブローは昔恭典から習って以降、尚也が暴走する度に使わせてもらってる。優也は一転してニコッとした笑顔を浮かべ、

「この雰囲気じゃ吹奏楽部行けないから、今日は2人で行ってきて。明日は4人で行こう。約束するよ!」
「....うん、そうしよう。」

 尚也が立ち上がりながら答える。そして、別れの挨拶をして帰っていった。

「裕也くんも、辛いなら無理しないで帰っていいよ?」
「....いや、僕、吹奏楽行くよ。」
「えっ?」
「僕、強くなりたい。こんな、ちょっと怒っただけで泣いちゃうような自分が嫌だ。だから、もっと強くなりたい。」
「で、でも、」
「僕、女の子と喋るの恥ずかしいけど、まずそれから直したい!だから、伯亜!早く行こうよ!」
「....うん!」

 2人は音楽室へ向かって歩き始めた。

つづく




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