青春〜或る少年たちの物語〜

Takaya

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第二章 燃え上がる日々

第二話 謝罪 ※R-15、百合注意

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 時間は、香織と麻耶の事件の次の日まで遡る。この日の昼休み、桃子は麻耶を連れて1年1組に来た。香織に謝るためだ。麻耶は香織の前で頭を下げた。香織もその謝罪を受け入れた。教室を出てた時、麻耶は少々涙目だった。

「麻耶、私が何言いたいか分かるわよね?」
「....はい。」
「あんたに泣く資格なんてないの?分かる?」
「....はい。」
「じゃあ、もっとシャキッとしなさいよ!」

 そんな話をしたあと2人は無言だったが、麻耶が突然話しかけた。

「あの、桃子先輩!」
「何よいきなり?」
「話があります。」
「何の話よ?」
「部室棟のトイレまで来てもらっていいですか?」
「部室棟の?まぁいいわ。」

 こうして部室棟のトイレに向かうことにした。しばらくして到着した。

「んで、何よ話って?」
「....あのー、そのー、何ていうか、そのー。」

 麻耶は何やらモジモジしている。

「私、実はずっと桃子先輩に憧れてました。バレーだって上手いし、リーダーシップもあって、その、なんていうか…」
「はぁ?」

 桃子は最初、怒られたから媚びてるのかと思った。しかし、そういう訳ではなさそうだ。むしろ、照れているようにも見える。

「私、自分が男だったら、その、桃子先輩みたいな人と付き合いたいなぁ、なんて、思ってて…」
「…キモいよあんた。それに、私が男でもあんたみたいな性悪女と絶対付き合いたくないんだけど?」
「うぅ…」

 今度は泣きそうになってる。まるで、好きな人に冷たくされて悲しんでいるかのようだ。

「ねぇ、あんた何が言いたいの?」
「うぅ、やっぱり言えないよぉ…」

 そこで桃子は少々、脅かしてみることにした。右手を麻耶の顔の横の壁に叩きつける。そこから、腕をスライドして肘まで壁につけ、同時に顔も近付ける。極めつけは左手で麻耶の顎先を掴み、クイッと上げる。この当時にはまだなかった言葉だが、いわゆる「壁ドン」「顎クイ」というやつだ。

「ねぇ、麻耶。私さ、あんたみたいにはっきり物事言えない人大嫌いなの?」
「うぅ…」
「ねぇ何なの?文句?それとも媚び?」
「そ、そんなんじゃ....」
「だから早く言いなさいよ!答え次第じゃ、昨日と同じ目に遭うわよ?また、おしっこ飲みたいの?」

 すると、麻耶が意を決したかのように叫んだ。

「じ、実はそうなんです!」
「…はぁ?」

 桃子は拍子抜けする。

「昨日のことはもちろん反省してます。でも、でも、実はちょっと嬉しかったんです。」

 桃子は頭が混乱してる。怒るべきか、否か。どうしていいのか分からない。

「だから、その、怒られてる時とかじゃなくて、その、もっと、普段から、こう…」
「キモい!」

 桃子が麻耶から離れる。

「キモい!キモい!キモい!キモい!」
「そ、そんなぁ…」
「そんなも何もあるか!変態!だから彼氏できないのよ!死ね!」

 そう言うと桃子はトイレから出て行った。

(あぁ、また、怒らせちゃった…)

 麻耶は1人でシュンとしている。しかし、しばらくすると顔を赤らめ、内股になる。

(でも、やっぱり桃子先輩カッコいいなぁ~。)

 頭がぼんやりしたまま、内股気味で歩きながら個室に入る。例の如く、ここから先は記せない。

 その日の部活を覗いてみよう。前日の分を取り戻そうとみんないつも以上に気合いか入ってる。

「はい、じゃあ休憩!」

 桃子が言うと全員、汗だくで息切れしながら倒れるように座りこんだ。

「ちょっと、あんたたち!こんなんじゃまた今年もベスト8止まりだよ?それでもいいの?」
「いいえ!」

 全員が声を揃えて答える。

「じゃあ、そんなとこで倒れるんじゃないよ!みっともない!」
「はい!」

 全員がやっとの思いで立ち上がる。1年生はもうヘトヘトだが、2年生と3年生はもっと辛そうだ。というのも、彼女たちは昨日の事件の連帯責任として、当分の間ユニフォームはもとより、バレー部らしい格好を桃子に禁止されたのだ。桃子曰く「麻耶の行いはバレーを侮辱するもの、それをやったやつにバレーの服を着る資格はない」らしい。そのため、みんなサッカーやハンドボール、バスケなど他の部活のようなTシャツと短パンで来ている。無論、桃子もそうだ。全員、普段は太ももを出して運動しているが、今はそうじゃないので風を通さない分余計に暑い。

(まさか、おしゃれのつもりで買ったサカTとサカパンを部活で着けるとはね。それにしても、暑い…)

 真咲はTシャツを掴んで、パタパタしている。すると、桃子が近づいてきた。

「真咲、みっともないからやめなさい。」
「えっ、そんな…」
「えっ、じゃないわよ。あんた、男子に見られてもいいの?」
「そ、それは....」

 突然、麻耶が割り込んできた。

「桃子先輩、そんなに責めないで下さい。真咲、あんたも素直に言うことききなよ。」
「え、麻耶、あんた、え?」

 麻耶はみんなの方を向き語りだす。

「みんな、暑いのは分かるわ。私だって慣れないバスケの格好していつもよりきつい練習してるから今にも死にそうよ!でも、桃子先輩見てよ?ハンドの格好で汗だくで湯気まで出てるけど、Tシャツもインしたままで、自分を扇ごうともしてないわ。」

 みんなは一瞬、特に1年生は、麻耶は昨日のことで桃子に媚びてるのかと思った。だが、そういう訳ではなさそうだ。かと言って、上級生としての自覚が芽生えたようにも見えない。
 しかし、桃子だけは分かっている。

「麻耶!」
「はい!」
「あんたキモい。」

 そう言って、桃子はそっぽを向いた。麻耶が少々内股になったような気がしたが、気のせいだと思うことにした。

 しばらくして、練習が再開。後半は外周を走り続けた。練習が終わり、今はシャワー室で体を流している。

 ここで、1年生たちはとある洗礼を受ける。桃子が誰よりも早く体を流すと、1年生、まずは香織の所に来た。

「香織、こっち向きなさい。」
「はい?」
「あんた、まだまだ腹筋足りてないんじゃないの?」
「えっ?」

 全員でシャワー室を使う度に、桃子はひとりひとりに小言を言っていく。これは去年、桃子が部長になってからずっと続いている。

 今日、用事で来ていない明良以外の1年生全員に小言を言い終わる。麗花は少々泣き顔だ。次は2年生の番だ。麗子と真咲はいつも通りに絡まれて終わった。次は鈴美だ。

「....鈴美、あんた結構体仕上がってるじゃん?」
「....えっ?」
「通りで最近、動きにキレがあると思ったよ。」
「…」
「何、固まってんの?私は褒めてるのよ?」

 すると、鈴美の目から大粒の涙が溢れた。彼女もなんだかんだ言って桃子に憧れてきた。その憧れの人が今、自分を褒めているのだ。

「....ひっぐ、あ、ありがとうございます、」
「何泣いてんのよ、馬鹿。」

 桃子が鈴美を優しく抱き締める。そして、そのまま唇を重ねた。バレー部では、昔から上級生が後輩を認めた時にキスをするのが習わしだ。
 朱里は何度かしているが、桃子が誰かにするのは初めてのことだ。しかも、そこそこ時間をかけている。先程まで泣き顔だった鈴美がトローンとした表情になる。

(ふふっ、桃子のやつ結構上手いじゃん。)

 朱里はクスっと笑う。実は桃子は今まで、こんな日がいつ来てもいいように朱里と練習していた。なぜ練習が必要なのか、そもそもなぜ相手が朱里なのかというと、桃子は彼氏がいない、というより、できたことがないからだ。

(ふー、上手くいった。)

 桃子は一安心しながら唇を離す。鈴美はトロンとした表情でゆっくり座り込む。だいぶ気持ちよかったようだ。いつもなら、みっともないと注意する所だが、今回ばっかりはそうはいかなかった。なぜなら、桃子も若干濡れているからだ。幸い、場所がシャワー室なのもあって誰もまだ気付いていない。2年生たちは鈴美に羨望の眼差しを向けている。1年生たちは羨望、というより愕然としている。キスについてではなく、あのサバサバした鈴美が涙を流したり、こんなに女っぽくなったりしてることが信じられない様子。

「鈴美、風邪ひくから先にあがりな。」
「....ふ、ふぁ~い」

 呂律が回ってない鈴美がフラフラしながら更衣室に向かう。

「さて…」

 桃子が最後に残った麻耶の方を見る。すると、いつもはビクビクしているくせに、今日はなんだかウキウキというか、モジモジというか、クネクネしている。

「あんたはいいや。キモい。」
「そんなぁ…」
「早くあがりな。」
「うぅ....」

 またまた泣きそうになる。しかし、麻耶は意を決して語る。

「桃子先輩!私、もっと、たくましくなって、強くなって、そして、そして....」
「…」
「桃子先輩にチュー、いや××××してもらえるように頑張ります!」

 その言葉に全員が固まる。さすがにひいてる。

「ふざけるな!早く出てけ!この×××!」
「うぅ....」
 (私、大会までにストレスで死ぬかも....)

 大会まであと3か月。桃子の悩みの種は尽きない。

つづく。

    
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