青春〜或る少年たちの物語〜

Takaya

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第三章 始まる闘い

第五話 煙草

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  5月6日、合宿も終わり部活も休みの日。貴哉は伯亜の家に呼ばれた。昼過ぎに伯亜の家に向かい、玄関のインターホンを鳴らす。扉を開けたのは桃子だ。

「あ、桃子。伯亜いる?」
「桃子先輩、でしょ?」
「いいじゃん別に。」
「よくない!ほら、言ってごらん。じゃないと入れないわよ?」
「....桃子先輩。伯亜いる?」
「....まぁ、いいわ。部屋にいるわ。」

 なんとか入れてもらい、伯亜の部屋に向かう。

「伯亜ー、入るぞー。」
「ほーい。」

 部屋の中で貴哉は胡座をかいて座る。

「合宿はどうだった?麻耶にいじめられたか?」
「....いや、いじめられてはないよ。」

 適当にそんな会話をしたあと、伯亜が真剣な顔になる。

「それより貴哉くん。何か僕に隠してることない?」
「どうした改まって?」
「いいから!何かあるでしょ!」
「....あっ!」

 貴哉は何かを思い出す。

「5年生の時さ、お前の机からカエルが飛び出してきたことあったじゃん?」
「....あー、あったね。」
「あれやったの俺。」
「....!?」

 伯亜が貴哉に飛びかかる。

「馬鹿馬鹿馬鹿!どれだけびっくりしたと思ってんの!?」
「はははは!わりぃな、どんな顔するか見たかったんだ!」
「僕がカエル嫌いなの知ってて!馬鹿!」

 貴哉は笑いながら続ける。

「あ!あと、あれだ!6年生の時お前落とし穴に落ちたろ?あれ掘ったの俺と明良だ!」
「!?なんでそんなことしたの!?」
「尚也があんまりにも腹立つもんだから泣かしてやろうと思ってな、そしたらお前が落ちてやんの!ぎゃははは!」
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!」

  しばらくして、伯亜は布団の中に潜りこんだ。

「馬鹿!もう貴哉くんなんて知らない!」
(うわぁ、始まったぁ....最近やらないと思ってたのに....)

 こうなると伯亜は何言っても聞かないので、貴哉は取り敢えず外で煙草を吸うことにした。

「....どこ行くの?」
「外だよ。また戻ってくる。」
「....何しに?」
「煙草吸いに....あっ。」

 その瞬間、伯亜が起き上がる。

「思い出した!それだよそれ!」
「???」

 伯亜が再び貴哉に飛びかる。貴哉は堪らず倒れる。

「貴哉くん!なんで!なんで!煙草なんか吸うの!」
「落ち着けって!桃子だって煙草吸ってるじゃねぇか!」
「馬鹿馬鹿馬鹿!貴哉くんだけは!貴哉くんだけは!....違うって信じてたのに!」

 伯亜の動きが止まる。閉じた目から流れるものがある。よっぽど貴哉のことを信じていたのだろう。

「伯亜....泣くなよ。」
「....」
「ちょっと口開けろ。」
「....んぁ....」
「閉じてみろ。」
「....?」

 次の瞬間、貴哉が伯亜の口に差した煙草に火を点けた。

「ごほっ!」
「あ!危ない危ない!落とすなよ!」
「うぇ!苦っ!」
「そんな悪いもんじゃないだろ?」
「悪いもんだよ!何これ!にっがっ!うぉえ!」

 しばらく咳き込んだ後、伯亜が再び布団にくるまる。

「貴哉くんなんて大っ嫌い....」
「伯亜....」
「もう友だちなんかじゃないもん....」
「伯亜、あのな....」
「....初めて煙草吸った時、まずいと思った奴はもう吸わねぇけど、苦いと思った奴はそのまま続けるんだってよ。恵弥が言ってた。」
「....!?」
「後、お前昔から鉛筆噛む癖あっただろ?あれは将来の喫煙者予備軍って恭典が言ってたぜ。」

 伯亜が起き上がり叫ぶ。

「さっさと帰れっーーーー!!!」

その日の夜、貴哉が部屋でくつろいでいると携帯が鳴った。出てみるといきなり怒鳴られた。横では伯亜の泣いている声が聞こえる。

「おい、貴哉!伯亜に何した!?」

 何やら唯ならぬ雰囲気だ。

(まさか、カエルとか落とし穴のことチクったか?いや、まさか、あんなに前のことを今になってチクらねぇだろ。)

「何黙ってんだ?伯亜に何したって聞いてるんだよ!?」
「おい桃子、落ち着けって。一体どうしたんだよ?」
「どうしたも何もあるかっ!!....私はね、悲しいんだよ....まさか伯亜がこんなこと言うなんて....」
「何て言われたんだよ?」

 すると、桃子が声を荒げた。

「伯亜が私に煙草吸わせてとか言ってきたんだよ!」
「....へっ?」
「こいつの周りで煙草吸うのなんてお前しかいねぇだろ!お前、こいつに何した!?」
「....ぎゃははははは!」

 その瞬間、貴哉は笑いが止まらなくなった。訳が分からなくなった桃子がヒートアップする。

「な、何笑ってるんだよ!?」
「いや、だって、伯亜が煙草吸うとか、ふははははは!やっぱりハマってんじゃねぇか!ひゃははははは!」
「お、おい!」
「ひゃはははは!あー、面白れぇ。あ、あと、伯亜に伝えといてくれよ。今日、お前はあんなこと言ってたけど、俺とお前は何があっても友だちだぞ、って。....ぎゃはははは!」
「おい!意味分かんねぇよ!」
「まぁ、そういうことだから、また明日学校で....きゃはははは!」
「おい待て!おい!」

 貴哉はそう言って電話を切ったがその後もしばらく笑い続け、遂には隣の部屋の麻耶が文句を言いに来た。

「だって、だって、麻耶!聞いてくれよ!」

 事情を説明すると麻耶も笑いが止まらなくなり、結局姉弟揃って夜中まで笑い転げた。因みに、明良にも事の顛末をメールで伝えると速攻で電話がかかってきた。明良は笑い過ぎてベットから落ちたらしい。なんとも幸せな奴らだ。

 次の日、貴哉は登校前に桃子によって平田家に呼び出された。2人揃って叱られた後、仲直りの握手もさせられた。その後、桃子は朱里の家に寄るから先に学校へ行くよう言いつけられ、2人はどんよりムードで学校に向かった。

「ねぇ、貴哉くん。」
「なんだよ?」
「お姉ちゃんから聞いたよ。僕のことずっと友だちって言ってくれたんだって?」
「....あぁ。」
「貴哉くん、ごめんね。僕言い過ぎたよ。」
「....気にすんな。」
「....ありがとう。」
「....大袈裟だよ、馬鹿。」

 貴哉は照れくさそうに笑った。しばらくして学校に着き1組の教室に入ると、恵弥、恭典、音也、奏、裕明が居た。みんな一斉に伯亜の顔を見て笑う。

「煙草吸ったんだってな!よっ、不良!」

 裕明が茶化す。後で分かったことだが麻耶が恭典にメールを送り、それを恭典が拡散したらしい。

「そうなんだよ、しかもこいつよ、桃子から煙草貰おうとしてよ!」

 さっきまで共にどんよりしていた貴哉も便乗する。伯亜の顔は真っ赤だ。

(恥ずかしい....)

 昼休みは、裕也、尚也、優也によってトイレに呼び出された。真剣な顔をして尚也が伯亜に言う。

「恭典から聞いたよ。全く、貴哉に説教するんじゃなかったっけ?」
「うぅ....」
「....君ってやつは本当に、本当に、ふ、ふ、ふははははっ!ダメだ、怒るつもりだったけどもう、面白すぎだよ!」

 結局、3人揃って笑い出して有耶無耶のまま終わった。伯亜は羞恥心と罪悪感の中で溺れている。授業も全然、頭に入ってこない。

(うぅ....恥ずかしいよぉ....でも、でも、でもぉ....)

 今、伯亜の頭の中を駆け巡っていることがある。それは、

(....もう1回煙草吸ってみたい....いや、でも、恥ずかしいよぉ....)

 未成年の飲酒喫煙は法律で固く禁止されている。

つづく

 
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