青春〜或る少年たちの物語〜

Takaya

文字の大きさ
38 / 47
第三章 始まる闘い

第七話 決裂

しおりを挟む
 ゴールデンウィークが明けた次の日の部活終わり、ボクシング部の部室、もとい桃子の練習小屋に貴哉と伯亜、そして香織が呼び出された。輪になって座っている。

「香織、まずあんたから。」

 桃子が促すと香織が立ち上がる。

「....その、こないだは、いきなり怒鳴ったり、叩いたりして、ごめんなさい....」
「別にいいよ、もう終わったことじゃん。ねぇ、貴哉くん?」
「....まぁな。」

 貴哉と伯亜はその謝罪を受け入れた。

「よかったわね、香織。」
「....はい。」

 すると、貴哉と伯亜が立ち上がる。

「じゃあ、僕たちはもう帰るね。」
「待ちなさい。」

 桃子が止めた。

「あれ、お姉ちゃんまだ何かあるの?」
「伯亜はともかく、貴哉、あんたはまだ帰さないわよ?」
「....なんでだよ?」
「まぁ、すぐ終わると思うけど、伯亜、あんたは先に帰る?」
「んー、待ってる!」
「じゃあ、2人とも座りな。」

 こうしてまた椅子に座らされる。

「貴哉、あんたも香織に言うことあるでしょ?」
「いや、特に。」
「特に、ってあんたね....」

 桃子が呆れたように言う。

「あんた、香織に椅子投げたんでしょ。」
「....まぁな。」
「香織も謝ったんだから、あんたも謝んなさい。」
「....嫌だよ。」
「はぁ?」
「こいつの自業自得だろ?」
 
 桃子が立ち上がる。

「あんたね、自分が何言ってるか分かってるの?」
「分かってるけど?」
「....!?どうしてそんなことが言えるの!?」

 しばらく言い合いが続く。不穏な雰囲気だ。そして、貴哉が香織に矛先を向ける。

「おい、香織!お前があの時絡んでこなけりゃおでこぶつけることも××××怪我することもなかったろ?」
「....」
「俺にあたるなよ、フラーばか。」

 香織が立ち上がる。香織の中で何かが壊れたようだ。

「うっさいわね、このチビ!あんたにフラーばかなんて言われる筋合いはないわよ!」
「香織!やめなさい!」
「桃子先輩....私....」
「香織、今なんかしたらただの逆ギレよ?そんなことのために私はこの場を設けたわけじゃないの!分かるでしょ?」

 すると貴哉が立ち上がる。

「桃子、いいよ。どけよ。そいつがその気なら叩きのめす。」
「貴哉!何言ってるの!?」
「桃子、同じバレー部だかなんだか知らねぇがそんなやつの肩なんか持つなよ。」
「貴哉....」
「お前も随分、身勝手な女だな。」
「は?」

 貴哉が構わず続ける。

「俺、知ってるんだよ。お前が1年の頃、先輩たちに酷い目に遭わされて泣いてたこと。性格の悪ぃ奴らばっかり重宝されて、悔しいって泣いてたの、俺、知ってるんだよ。」
「....」
「それが3年になった途端、麻耶に何したよ?」
「あれは麻耶が....」
「知ってるよ!でもお前がやったのは、お前が嫌ってた先輩たちと同じことじゃねぇか!」
「....」

 桃子は何も言えなくなる。自覚してる分、尚更だ。

「でも俺が何も文句言わなかったのはあれは麻耶が悪いからだ。それは分かるな?」
「....」
「それがなんだ?自分の可愛い後輩が麻耶と似たようなことしたら肩なんか持ちあがって!ぶざけんなよ?」
「貴哉....」

 貴哉は懐から煙草を取り出して吸いはじめる。

「昨日だってよ、伯亜が煙草吸ったぐらいで泣くまで怒鳴りやがって....」
「....」
「お前知ってるか?お前が煙草吸うようになった頃、伯亜泣いてたんだぞ?」
「え?」
「あんな風になったのが悲しいって、それでもお姉ちゃん大好きだから受け入れるしかないって、でもやっぱり辛いって、泣いてたんだぞ?」

 桃子はそんなこと全く知らなかった。親とは喧嘩したが、伯亜には何も言われなかったからだ。

「桃子、取り敢えず今のお前はただの情けない女だ。分かったらどけ。」
「嫌よ!」
「あ?」

 それでも桃子は拒否する。

「あんたが言ってることは全部正しいわ。私何も言い返せない。」
「だったらどけ!」
「でも私は!それでもここであんたと香織を喧嘩させる訳には行かないのよ!」
「あ?」
「私にはね、自分がどれだけ笑われても、守っていかなきゃいけないものがあるの!」
「桃子先輩....」

 香織はただ立ちすくんでいる。

「意味分かんねぇな....」
「あんたもいつか分かるようになるわ。どうしても香織と喧嘩したいなら、私、あんた相手でも容赦しないわよ?」

 桃子の目付きが変わる。

「そうか、だったら....」

 貴哉は煙草を投げ捨てる。

ヤーカラ、サチニクルサイヤーお前から先に殺してやるよ。」

 その瞬間、貴哉の顔に桃子の右ストレートが飛んできた。貴哉は後ろに倒れる。

「あんた、私がボクシングやってるの知ってるでしょ?馬鹿な真似はやめなよ。」

 桃子が貴哉に近づく。すると、

ヤガマサン!うるせぇ

 桃子に向かって落ちていたグローブを思いっきり投げつける。桃子が怯んだ隙に貴哉が飛び掛かり、馬乗りになる。

「さっき容赦しねぇつったな?俺もだよ!」

 貴哉は桃子の顔を殴りつける。何度も何度も殴りつける。

「やめて!」

 香織が貴哉に背中から飛び掛かり、引き剥がす。しかし、貴哉は香織の右足を思いっきり踏みつけた。堪らず、香織はうずくまる。

「はぁ....はぁ....次はお前の番だ。」

 貴哉が息を切らしながら近づく。するとその時、練習小屋の扉が開いた。麻耶と真理亜、そして伯亜だ。

「貴哉!やめなさい!」

 麻耶と真理亜が2人ががりで貴哉に飛び掛かり地面に押さえつけた。

「離せこら!」
「大人しくしなさい!」

 実は伯亜、不穏な雰囲気の中で小屋から逃げ去り、助けを求めていた。そして、たまたまバレー部の部室で煙草を吸っていた2人を見つけたのだ。

「お姉ちゃん!大丈夫!?」

 伯亜は桃子に駆け寄る。

「貴哉くん....これ、貴哉くんがやったの....?」
「....だったらなんだよ?」
「馬鹿!どうして....どうしてこんなことができるの....」

 伯亜が泣き出した。桃子が倒れた状態で伯亜の頭を撫でる。

「伯亜....ごめんね....お姉ちゃんが悪いの....」

 真理亜が貴哉を押さえつけたまま語りかける。

「貴哉、何があったか知らないけど、あんた、自分が何したか分かってるの?」

 麻耶もそれに続く。

「あんた、こんなに馬鹿なことするとは思ってなかったわよ。」
「お前に言われたかねぇよ。」

 貴哉が口答えをする。

「やめなさい!」

 桃子がフラフラと立ち上がりながら言う。

「貴哉、今回は私が悪かったわ。」
「....」
「香織、ごめんね。こんなことになって。今日はもう帰りな。」
「....はい。」

 ずっと狼狽えていた香織が小屋から出た。しばらくして、

「伯亜、もう泣かないで。さ、お姉ちゃんと帰ろ?」
「....うん。」
「あ、麻耶と真理亜。来てくれてありがとね。そんでさ、あんまり貴哉のこと責めないであげて。」
「えっ?」

 桃子が伯亜を左手で抱きながら小屋から出た。その後、麻耶と真理亜が貴哉を押さえつけていた手を離す。

「貴哉、これだけは言っておくわ。私たちがここに来た時、あんた、見たことないぐらい恐ろしい顔してたわよ?」

 麻耶も言う。

「あんた、何があった知らないけど、あの伯亜の顔見て何も思わなかった?ちゃんとと頭冷やしなさいよ。」

 こうして麻耶と真理亜も小屋から出ていき、貴哉は1人、小屋に残された。

つづく

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...