青春〜或る少年たちの物語〜

Takaya

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第三章 始まる闘い

第十二話 5月28日

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 5月28日、貴哉は少々ウキウキしている。いつもは家を出てそのまま学校に行くのだが、この日は伯亜の家に寄った。チャイムを鳴らすと伯亜が出てくる。

「あ、貴哉くん!」

 伯亜が嬉しそうな顔をする。

「珍しいじゃん!どうしたの?」
「....いや、ちょっと、気分次第。」

 貴哉はなんだか顔がニヤニヤしている。

「ふーん。鞄取ってくるからちょっと待ってね。」

 伯亜が特に興味を示さず、そう言って部屋に戻る。

「....なんだよ、あいつ。」

 貴哉は少々ふて腐れている。しばらくして、伯亜が戻ってきた。

「貴哉くーん、お待たせー!」
「....」

 貴哉は捻くれオーラ全開である。

「なんでそんな顔してるのさ?さっきまで楽しそうだったのに。」
「....別に。」

 取り敢えず学校に向かう。教室には明良がいた。

「お、貴哉!」

 貴哉が若干ニヤリとする。

「なぁ、明良。」
「なんだよ?」
「お前は分かってるよな?」
「何のこと?」

 明良が首を傾げる。

「ほら、あれだよあれ。今日はほら、あれの日だろ?」
「んー、あ!」

 明良が何かを思い出す。

「木曜劇場の日だ!」
「違うだろ!」

 貴哉が思わず突っ込む。

「え、だって今日木曜日じゃ....」
「....ふんっ。」

 貴哉は1人で機嫌が悪そうに椅子に座る。

「変なの!」

 明良は貴哉を無視して伯亜と喋りはじめた。しばらくして、恵弥たちがやって来る。

「おーい、恭典!」
「お、貴哉。」
「今日が何があるか分かるよな?」
「え、知らね。避難訓練?」

 貴哉が椅子から立ち上がる。

「アホ!」

 そう言って教室から出ていってしまった。

「....なぁ、お前ら。あいつどうかしたのか?」

 恭典は伯亜と明良に尋ねる。しかし、2人はなんだか笑っている。

「あ、そうだ!恭典くんたちも協力してよ!」

 伯亜が何やら提案してきた。

「実はね....」

 伯亜の話に恭典たちは3人とも大笑いし、提案を受け入れることにした。

 一方、貴哉は隣の2組に来た。

「ひーろーやーくーん。」
「どうしたの貴哉?」

 裕也は何やらニコニコしている貴哉を警戒しているような顔だ。

「今日、何の日か分かるよな?」
「んーと、とりの日?」
「へ?」

 貴哉がキョトンとする。

「え、ケンタッキーが毎月28日にやってるじゃん?あれでしょ?」
「....一生チキンだけ食ってろハゲ!」

 そう言って貴哉は教室を出た。祐也は込み上げてくる笑いを押さえきれない。

(やっぱり伯亜の言うとおりじゃん!)

 実は祐也は、というより伯亜も明良も、貴哉が何を求めているのか本当は分かっているが、敢えて分からない振りをしているのだ。

 貴哉が教室を出ようとすると、和人がやって来た。

「お、和人!」
「貴哉か、珍しいな。」
「問題です。今日は何の日でしょうか?」

 貴哉は今度こそと言わんばかりに問いかける。

「え、知らね。とりの日?」
「....そんなにみんなチキンが好きかあああ!」
「は?」

 貴哉はそのままどこかへ行った。和人は何がなんだか分からない様子だ。裕也が笑いながら話しかける。

「和人は本当に分からないの?」
「おう。」
「え、だって、ほら、今日あれだよ。」

 裕也が真相を告げると和人はようやく思い出したようだ。

 貴哉はその後、3組に来たが双子はまだ学校に来ていなかったのでトボトボ教室に戻ってきた。休み時間に双子を捕まえて聞いてみたが、「29日だから肉の日!」と自信満々に言われた。色々と間違っている。

(んー、こうなったら真理亜の所でも行ってみるかなぁ....)

 そう思ったが、2年生の教室に行けば十中八九女バレに絡まれる。鈴美なら大歓迎だが、あの真咲とかいううるさい女は極力避けたいので、真理亜は諦めた。

(んー、桃子の所にでも行ってみようかなー。)

 そう思ったが、3年生の教室に行けばあの忌々しい野球部、もとい不良グループに絡まれることは避けられないだろう。

(よりによってこんな日にあのアホどもに絡まれるのは嫌だなぁ。)

 そして、桃子も諦めた。

 結局、貴哉はその日ずっと不機嫌なままですごした。帰りのホームルームの後、伯亜が話しかけてきた。

「たーかーやーくーん。」
「なんだよ?」
「どうしてそんな顔してるの?」
「けっ....」

 すっかりいじけているようだ。

「ちょっとついて来てよ。」

 そう言われて、貴哉は理科室まで連れてこられた。

「おいおい、何する気だよ?」
「んー、まだ秘密!」

 伯亜はニヤニヤ笑っている。

「お前、また彫刻刀とか出すんじゃないだろうな?」
「ピンポーン!正解!」

 貴哉の顔が強張る。

「なーんてね!冗談だよ!」
「....いや、笑えねーよ!」
「ふふっ。もうちょっと待っててね!」

 そう言って、伯亜は教室から出て行った。

(何する気だよあいつ。)

 貴哉は不安げに1人で待っている。しばらくして、恵也たち野球部メンバーが理科室に入ってきた。勢揃いだ。

「お、貴哉。早いじゃねぇか。」

 恵也がニヤニヤしながら話しかける。

「何笑ってんだよ?」

 貴哉が素っ気なく返事を返すと、音也が急に笑い出した。

「お前も素直に言ってくれりゃあいいのによ!まさにツンドラってやつだな!」
「それを言うならツンデレ、だろ?」

 春樹も笑いながら訂正する。すると、恵也が2人の頭を笑いながら軽く叩いた。

「おいおい、勘づかれたらどうすんだよ?」
「大丈夫だよ、こいつは昔からどんくさいのでお馴染みだからよ。」

 恭典が突っ込むと和人もそれに同調する。

「本当だよ!こいつ、昔から何しても気づくの遅いもんな!」

 貴哉が少々苛立つ。

「だからお前ら!一体何考えてんだよ!」
「落ち着けって!もうすぐネタばらしするからよ!」

 恵也が宥めると同時に、理科室に裕也、尚也、優也が入ってきた。手に大量の袋を抱えている。

「お待たせー。」
「おいおい、お前らまで一体何する気だよ?」

 貴哉が問いかけるも、

「んー、お楽しみ!」

 裕也は袋を机の上に置きながら、ぼかして答えた。双子もニヤニヤしている。すると、今度は明良と伯亜が入ってきた。2人とも手に何かを持っている。

「みんなー!お待たせ!」

 2人が同時に手を前に出すと、その正体が分かった。クラッカーだ。

「せーのっ!」

 明良の掛け声で、思いっきりクラッカーを引いた。

「「「お誕生日!おめでとう!」」」

 理科室に大きな声が響き渡る。そう、今日は貴哉の誕生日なのだ。

「え、お、お前ら....」
「びっくりした?僕たちが貴哉くんの誕生日、忘れる訳ないじゃん!」

 貴哉はポカンとしている。

「ま、和人は忘れてたみたいだけどな!」
「うるせぇ!お前だって忘れてたじゃねぇか!」

 和人が恭典に突っかかる。それを見て全員が笑う。しかし、貴哉は違うようだ。

「うっ....うっ....ありがとう....」
「え、貴哉くん、泣いてんの!?」

 まさかの展開に伯亜が焦っているが、他のみんなは更に笑っている。すると、明良が机の袋から何かを取り出して思いっきり貴哉の頭に被せた。貴哉がクリームで真っ白になる。物体の正体はパイだった。

「お前に涙は似合わねぇよ!」

 そう言って、明良は豪快に笑った。すると、貴哉が自分に被せられたパイを掴み、明良に向かって投げつけた。

「うるさいこのオカマ!」
「だ、誰がオカマだこの野郎!」
「まあまあ、落ち着いて!」

 伯亜は宥めるのかと思いきや、2人にパイを投げつけた。

「せっかくの誕生日なのに、喧嘩しないでよ!貴哉くん、約束したでしょ!」

 至って真剣な台詞に見えるが、伯亜の顔は笑っている。即ち、そういうことだ。

「こんにゃろう!」

 貴哉と明良も負けじと投げ返す。そして、

「俺たちもいれろよ!」

 と、恵也たちと裕也たちも入ってきた。この馬鹿騒ぎは通報を受けた先生たちがやってくるまで続くのだが、その頃には全員クリームまみれになっていた。

つづく
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