上 下
13 / 51

13.お友達って素敵です。

しおりを挟む
 ラインハートとイーサンがやってきたのは、それから3日後だった。

 今回は事前にきちんと連絡があったため、クロエのお化粧もばっちりだ。
 とはいえ、前日も前々日もお見合いという名の「財産に群がる輩、迎え撃ち会」が開催されていたため、連続の厚化粧ではある。

「その顔も、だんだん見慣れてきちゃった」
 フィンはそう言って笑うので、少しだけ不安になった。
「不美人って3日で慣れる、っていうけれど……お二人に会うの2回目なのよね」
 ブスに慣れちゃったら、作戦としては陳腐化してしまう。
 あんまりまめに会わない方がいいかしら、と見つめていた手鏡をフィンに取り上げられた。

「大丈夫! 慣れたところでブスはブスだよ」
「ありがとう。いえ、ありがとうもおかしいような」
「ほらほら、二人とも待ってるよ!」
 ぐいぐい押されて自室から出る。フィンはいつもの愛らしい笑顔でクロエを送り出し、そのままクロエの自室に残った。このまま昼寝でもするのだろう。



 今日は天気がいい、ということで庭園にある四阿あずまやに。
 ラインハートとイーサンは並んで立ち上がり、クロエににこやかに会釈した。
「お邪魔してます、クロエ」
「……」
 じっとこちらを見つめるラインハートとは対照的に、イーサンは落ち着かなげにあたりを見渡していた。
 もしかして、綺麗なクロエを探しているのかしら。と汚いクロエは察したけれど、特にそれに触れることはしないで丁寧に礼をした。
「ようこそ、わが家へ」
 嬉しそうな笑顔を浮かべているラインハートの着ているモスグリーンのジャケットには見覚えがあった。兄が無事にラインハートに返してくれたらしい。
 ただ、あれを掛けてもらったのは「クロエではない」ので、そこには何も触れないことにする。

 それはそうと。
「イーサン様、先日いただいたお手紙の件ですが、」
「え!?」
 イーサンよりも先に、ラインハートが大きな声を出して友人を振り返った。
「イーサン、クロエに手紙出したの!?」
「お、おう、」
 その勢いに気圧されたように頷くイーサン。
 少し不貞腐れたような表情でクロエを見つめるラインハートに、思わず笑みが漏れた。

「お誘いなどではございませんでしたよ?」
「そう?」
「イーサン様、すでにお返事させていただいておりますが、わたくしには姉妹はおりません」
 こくこくと数回頷いて、イーサンはニコッと笑った。
「うん、返事ありがとう。そうだよな、分かってはいた!」
「どういうこと? 僕、イーサンと義兄弟にはなりたくないんだけど」
「何の話しだよ」
「親戚付き合いまでしたいとは思わないんだけど」
「何か怒ってるのか?」

 仲良く揉め始めた二人を微笑ましく眺めていると、少し羨ましくもある。
 クロエには兄と弟、従兄もいるが、同性の友人と呼べる人がいない。もしそんな友人がいたとしたら、今こんな状況ではなかったかもしれない。
 厚化粧でお見合いゲームなんかせずに、友人と遊びに出かけた先で見つけた男性に思いを寄せて、みたいなアナスタシア先生の描く恋物語が自分にもあったのかも。

「――ね、クロエ?」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

再び、この地に ~龍を宿した英雄たちの罪~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:24

逆ハーENDは封じられました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:183

忘れてよ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

妄想上手の田中くん

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:5

俺の日常

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

アルンの日々の占いや駄文【4】

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

日本経済再建のみち

経済・企業 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

思い出の場所~伝える言葉~

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

黒い狼と赤い赤ずきん

rei
恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:8

アルゲートオンライン~侍が参る異世界道中~

SF / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:3,843

処理中です...