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第1話 『ポイズンハンター』 act.1
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アルルカ大陸
南部諸国【アトレイオ】
アトレイオ唯一の大型ハンターズギルド。
白髪の青年は、包帯でぐるぐる巻きにされた右手でスプーンを握り、コンソメスープの入った皿の中から輪切りにされたソーセージを掬い取る。懐に潜り込んできたショウガラゴが、赤い手を伸ばすと、青年は無言でそれを差し出した。
ショウガラゴはソーセージ片をしっかりと掴み、勢いよく頬張る。美味そうに天を仰ぐ小さな獣を一瞥しながら、青年は器用に左手でペンを走らせ、黙々と紙に何かを書き込んでいた。
そのまま青年はスプーンを再び皿に沈め、二杯目を掬い取る。ショウガラゴの前に差し出すと、小さな獣は太ももの上でくるりと一回転し、青年の瞳を覗き込んだ。
「あぁ、ごめんね。ブロッコリーだったね」
青年は苦笑しながらスプーンを引っ込めると、代わりにそれを自分の口へ運ぶ。淡々と咀嚼する音だけが、周囲の喧騒に紛れて消えていった。
好き嫌いのはっきりしたショウガラゴは、ソーセージにだけ手を伸ばし、野菜がくると小さく合図を送る。青年はそれを察しながら、黙々とスプーンを運び、そうして二人でスープを平らげた。
食事が終わるや否や、ショウガラゴは唐突に木の机の上へ飛び乗り、首を左右に振りながらキョロキョロと辺りを見回した。
「どうした、ベニ?」
青年に名を呼ばれたショウガラゴは、ぴくりと耳を動かし、何かを見定めたように机の上を駆け出す。勢いよく縁から跳び上がると、ふわりと滑空し、そのままギルドの外へ飛び出した。
道の真ん中に降り立つと、再び辺りをキョロキョロと見回す。しかし、期待していたものが見つからなかったのか、先ほどまでの勢いは消え、肩を落とすようにしょんぼりとした様子で駆けつけた青年の手元へ戻っていった。
「今日はまだまだ用事が残ってるんだ。疲れてるなら先に宿へ行っててもいいけど……大丈夫か?」
ショウガラゴはふるふると頭を振り、青年を見つめ返す。
青年は小さく息をつきながら、ショウガラゴを優しく抱え上げると、着ていたコートのフード部分へそっと入れる。ベニは心地よさそうに丸まり、じっと青年の様子をうかがっていた。
そのまま青年はギルドの受付へ向かう。背負っていた茶色いバッグを開き、中から一通の封筒を取り出した。封筒の表には『重要』の文字。無言で受付の職員に手渡すと、職員は手際よく封を切り、中身を確認する。
中には、一通の推薦状――。どうやら、この白髪の青年・ユリアス=ラプラス(16)にとある調査を依頼する ための正式な書状のようだった。
「ありがとうございます。推薦状、確認いたしました。こちらが現段階での調査報告書です」
「頂戴します」
ユリアスは受付嬢から調査報告書を受け取った。それは、環境の異常変化や謎の痕跡について記された書類だった。
・…白毛…
・…毒素検知…
・…似た習性…
ページをめくる指を止め、ユリアスは受付嬢に視線を向ける。
「現地に未探家は?」
「未探家は一人も……ただ、」
「ただ?」
「つい数十分ほど前に、狩猟家の三人編成がクエストに向かいました」
「なんてことだ……すぐに現地に向かいます!」
ユリアスは焦りを滲ませながら、調査報告書を素早くカバンに詰め込み、ギルドを飛び出した。
狩猟家の三人編成。どの程度の実力があるかは分からないが、今、現地に向かうのはあまりにも危険すぎる。
調査報告書に記されたターゲットが、ユリアスや推薦状をよこした者の予想通りの存在であれば—— 狩猟家が何人束になろうと相手にならない。それどころか、命の危険すら避けられないだろう。
どうか間に合ってくれ…そう願うばかりだった。
南部諸国【アトレイオ】
アトレイオ唯一の大型ハンターズギルド。
白髪の青年は、包帯でぐるぐる巻きにされた右手でスプーンを握り、コンソメスープの入った皿の中から輪切りにされたソーセージを掬い取る。懐に潜り込んできたショウガラゴが、赤い手を伸ばすと、青年は無言でそれを差し出した。
ショウガラゴはソーセージ片をしっかりと掴み、勢いよく頬張る。美味そうに天を仰ぐ小さな獣を一瞥しながら、青年は器用に左手でペンを走らせ、黙々と紙に何かを書き込んでいた。
そのまま青年はスプーンを再び皿に沈め、二杯目を掬い取る。ショウガラゴの前に差し出すと、小さな獣は太ももの上でくるりと一回転し、青年の瞳を覗き込んだ。
「あぁ、ごめんね。ブロッコリーだったね」
青年は苦笑しながらスプーンを引っ込めると、代わりにそれを自分の口へ運ぶ。淡々と咀嚼する音だけが、周囲の喧騒に紛れて消えていった。
好き嫌いのはっきりしたショウガラゴは、ソーセージにだけ手を伸ばし、野菜がくると小さく合図を送る。青年はそれを察しながら、黙々とスプーンを運び、そうして二人でスープを平らげた。
食事が終わるや否や、ショウガラゴは唐突に木の机の上へ飛び乗り、首を左右に振りながらキョロキョロと辺りを見回した。
「どうした、ベニ?」
青年に名を呼ばれたショウガラゴは、ぴくりと耳を動かし、何かを見定めたように机の上を駆け出す。勢いよく縁から跳び上がると、ふわりと滑空し、そのままギルドの外へ飛び出した。
道の真ん中に降り立つと、再び辺りをキョロキョロと見回す。しかし、期待していたものが見つからなかったのか、先ほどまでの勢いは消え、肩を落とすようにしょんぼりとした様子で駆けつけた青年の手元へ戻っていった。
「今日はまだまだ用事が残ってるんだ。疲れてるなら先に宿へ行っててもいいけど……大丈夫か?」
ショウガラゴはふるふると頭を振り、青年を見つめ返す。
青年は小さく息をつきながら、ショウガラゴを優しく抱え上げると、着ていたコートのフード部分へそっと入れる。ベニは心地よさそうに丸まり、じっと青年の様子をうかがっていた。
そのまま青年はギルドの受付へ向かう。背負っていた茶色いバッグを開き、中から一通の封筒を取り出した。封筒の表には『重要』の文字。無言で受付の職員に手渡すと、職員は手際よく封を切り、中身を確認する。
中には、一通の推薦状――。どうやら、この白髪の青年・ユリアス=ラプラス(16)にとある調査を依頼する ための正式な書状のようだった。
「ありがとうございます。推薦状、確認いたしました。こちらが現段階での調査報告書です」
「頂戴します」
ユリアスは受付嬢から調査報告書を受け取った。それは、環境の異常変化や謎の痕跡について記された書類だった。
・…白毛…
・…毒素検知…
・…似た習性…
ページをめくる指を止め、ユリアスは受付嬢に視線を向ける。
「現地に未探家は?」
「未探家は一人も……ただ、」
「ただ?」
「つい数十分ほど前に、狩猟家の三人編成がクエストに向かいました」
「なんてことだ……すぐに現地に向かいます!」
ユリアスは焦りを滲ませながら、調査報告書を素早くカバンに詰め込み、ギルドを飛び出した。
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調査報告書に記されたターゲットが、ユリアスや推薦状をよこした者の予想通りの存在であれば—— 狩猟家が何人束になろうと相手にならない。それどころか、命の危険すら避けられないだろう。
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