エクスハンター 〜天と地の王〜

夢見 鯛

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第9話 『先から後へ』 act.1

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「このバケモンが!!!」

 一人の狩猟家がレイオストルンに対して大斧を振り下ろす。しかし、斧は空を切る。瞬間、鋭い五枚歯の爪が狩猟家の体を四枚に引き裂き、体中から内臓と血液を飛び散らせる。

「いやーーーー!!」

 それを見たリリゼは、恐怖で足がおぼつかず、邪の森のツルに足をつまずかせ、地に伏せる。そんなか弱い少女を見下ろす白毛の獣。牙を唸らせ、涎を垂らしながら、リリゼに接近する。

『ご馳走さん…』

 リリゼを前に伝わってきたレイオストルンの意思を読み取ったユリアスは、後ろのフードに隠れていた相棒に指示を出す。

「ベニ!!!!動きを止めろ!!」

 ピギャァァァァァァ!!!!

『ぐっ…?!』

 レイオストルンの一瞬の硬直。大型モンスターの毛嫌いする高音の周波がレイオストルンの聴覚を破壊する。そして動きが鈍ったところで、ユリアスは直立をする獣の股下にスライディングを決め、リリゼの前に滑り込む。

「?!…ユリアスさん…」

 しかし、ベニが相手の動きを止められるのもゼロコンマ数秒の一瞬だけ。レイオストルンは体制を立て直し、すぐ様牙をリリゼへと向けるが、その鼻っ柱にユリアスは双剣の二撃を喰らわせる。

 クォォォォオン!!!

 レイオストルンは鼻を抑えながら後退する。

 ベニの能力と合わせた奇襲は見事に成功し、誰もが恐れ慄く獣に一矢報いたのである。

「無事なやつは、すぐさまテントまで後退して状況を伝えてくれ!!!」

 ユリアスの指示で再び走り出す一団。ユリアスもリリゼの腕を引きテントを目指す。そこにミカエルとルカナも合流する。

「やるじゃないか、ラプラス。一時はどうなるかと思ったが、」
「一瞬の時間稼ぎですよ」
「ユリアス…良かったよ本当に!お前が無事で何よりだ」
「ミカエル…。悪いな無茶ばかりして」

 ミカエルは拳をユリアスの肩に当て、泣き崩れながらも安堵の表情を浮かべる。

「ホントだよ…まったく」

 生きてまたこの茶番に付き合えたことにユリアスもまた安堵の表情を浮かべる。しかし、状況は良くなるわけでない。ユリアスは一瞬で表情を切り替え、状況を冷静に分析する。

「でも森の中じゃ、機動力のあるあっちに武があります!外で増援と包囲攻めにしましょう!」
「良い案だ!ん?…女、お前は弓使いか?」

 ルカナはリリゼの装備を見て声をかける。

「は、はい!」
「使い切ってしまった。矢を数本分けてくれ。」
「分かりました!!」

 リリゼは自分にできることがあればと、自分の矢筒から五本ほどを握りしめ、ルカナに手渡す。

「レイオストルンは二足歩行で跳躍を得意とする生物だ!こういう場合に機動力を削ぐなら前脚ではなく後ろ脚だ!分かるな?」
「は、はい!!」

 ルカナとリリゼは邪の森の外に設置された仮設テントを目指しつつも、全体をより安全に逃すために、後ろを振り返り、瞬時に片足をついて体の軸を安定させる。

「距離は四十メートルほどか…いつもより二センチ上を狙うイメージだ」
「はい!」

 ルカナは、リリゼの弓の腕など知らない。それでも未探家として、前線で戦う経験者として、弓使いのプロとして、的確に指示を出す。

「一番はももでもスネでもなく、膝。関節部位に当てられれば儲け物だ」

 足首を曲げる動作を抑制し、跳躍を抑制させる有効部位。

ーー膝…関節部位…。

 リリゼは深呼吸をし、その一点に集中力の全てを注ぎ込む。

 レイオストルンが体勢を立て直すまでの十数秒。その時間内に矢を安定させて射る。目の前で多くの仲間を失い、自分の一矢でこの先の展開が大きく変わる。生半可な集中力では果たせない任務。さらに催促の掛け声。

「撃て!!!」

ーー行きます!!

 スパンッ!!!
 スパンッ!!!

 ルカナとリリゼ。同時に放たれた二撃は、右の膝をドンピシャで貫く。

 ハッ?!……
「当たった……」

 リリゼの一矢はレイオストルンの膝を突き刺さり、一同を驚かせる。

「上出来だ!プロ狩猟家リノハンター
「は、はい!!」

 凄腕の未探家に褒められたリリゼは、思わず顔を赤らめ、興奮した表情で駆け出す。

ーー私にもできた。大型モンスターの狩猟に貢献できたんだ!

「良い仲間を持ったな、ラプラス」
「みたいですね…ルカナさん」
「ユリアスさん!ユリアスさん、私!」
「はい…リリゼさんのおかげで、だいぶ距離が開きました。ありがとうございます」
「ヘヘヘッ、そうでもないですよ~」

ーーにしてもこの娘、私が右膝を狙うと理解した上で右を狙ったのか?
 未熟なハンターなら左右の足を狙って機動力を封じれば良いと判断するような場面で、片足だけに集約した一矢。片方が外す場合のリスクや皮膚が分厚かった場合のリスクを想定した片足に限定した集中砲火を、あの十数秒の合間に理解してやったと…。

「ヘヘヘッそうでもないですよ~」

 ユリアスに感謝されたことで頬を緩ませ喜ぶリリゼのニタリ顔を横目に考察するルカナ。
 
ーーそんなはずもないか…。たまたま右を狙い、それが当たっただけ…だろうな。
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