27 / 34
第9話 『先から後へ』 act.1
しおりを挟む
「このバケモンが!!!」
一人の狩猟家がレイオストルンに対して大斧を振り下ろす。しかし、斧は空を切る。瞬間、鋭い五枚歯の爪が狩猟家の体を四枚に引き裂き、体中から内臓と血液を飛び散らせる。
「いやーーーー!!」
それを見たリリゼは、恐怖で足がおぼつかず、邪の森のツルに足をつまずかせ、地に伏せる。そんなか弱い少女を見下ろす白毛の獣。牙を唸らせ、涎を垂らしながら、リリゼに接近する。
『ご馳走さん…』
リリゼを前に伝わってきたレイオストルンの意思を読み取ったユリアスは、後ろのフードに隠れていた相棒に指示を出す。
「ベニ!!!!動きを止めろ!!」
ピギャァァァァァァ!!!!
『ぐっ…?!』
レイオストルンの一瞬の硬直。大型モンスターの毛嫌いする高音の周波がレイオストルンの聴覚を破壊する。そして動きが鈍ったところで、ユリアスは直立をする獣の股下にスライディングを決め、リリゼの前に滑り込む。
「?!…ユリアスさん…」
しかし、ベニが相手の動きを止められるのもゼロコンマ数秒の一瞬だけ。レイオストルンは体制を立て直し、すぐ様牙をリリゼへと向けるが、その鼻っ柱にユリアスは双剣の二撃を喰らわせる。
クォォォォオン!!!
レイオストルンは鼻を抑えながら後退する。
ベニの能力と合わせた奇襲は見事に成功し、誰もが恐れ慄く獣に一矢報いたのである。
「無事なやつは、すぐさまテントまで後退して状況を伝えてくれ!!!」
ユリアスの指示で再び走り出す一団。ユリアスもリリゼの腕を引きテントを目指す。そこにミカエルとルカナも合流する。
「やるじゃないか、ラプラス。一時はどうなるかと思ったが、」
「一瞬の時間稼ぎですよ」
「ユリアス…良かったよ本当に!お前が無事で何よりだ」
「ミカエル…。悪いな無茶ばかりして」
ミカエルは拳をユリアスの肩に当て、泣き崩れながらも安堵の表情を浮かべる。
「ホントだよ…まったく」
生きてまたこの茶番に付き合えたことにユリアスもまた安堵の表情を浮かべる。しかし、状況は良くなるわけでない。ユリアスは一瞬で表情を切り替え、状況を冷静に分析する。
「でも森の中じゃ、機動力のあるあっちに武があります!外で増援と包囲攻めにしましょう!」
「良い案だ!ん?…女、お前は弓使いか?」
ルカナはリリゼの装備を見て声をかける。
「は、はい!」
「使い切ってしまった。矢を数本分けてくれ。」
「分かりました!!」
リリゼは自分にできることがあればと、自分の矢筒から五本ほどを握りしめ、ルカナに手渡す。
「レイオストルンは二足歩行で跳躍を得意とする生物だ!こういう場合に機動力を削ぐなら前脚ではなく後ろ脚だ!分かるな?」
「は、はい!!」
ルカナとリリゼは邪の森の外に設置された仮設テントを目指しつつも、全体をより安全に逃すために、後ろを振り返り、瞬時に片足をついて体の軸を安定させる。
「距離は四十メートルほどか…いつもより二センチ上を狙うイメージだ」
「はい!」
ルカナは、リリゼの弓の腕など知らない。それでも未探家として、前線で戦う経験者として、弓使いのプロとして、的確に指示を出す。
「一番はももでもスネでもなく、膝。関節部位に当てられれば儲け物だ」
足首を曲げる動作を抑制し、跳躍を抑制させる有効部位。
ーー膝…関節部位…。
リリゼは深呼吸をし、その一点に集中力の全てを注ぎ込む。
レイオストルンが体勢を立て直すまでの十数秒。その時間内に矢を安定させて射る。目の前で多くの仲間を失い、自分の一矢でこの先の展開が大きく変わる。生半可な集中力では果たせない任務。さらに催促の掛け声。
「撃て!!!」
ーー行きます!!
スパンッ!!!
スパンッ!!!
ルカナとリリゼ。同時に放たれた二撃は、右の膝をドンピシャで貫く。
ハッ?!……
「当たった……」
リリゼの一矢はレイオストルンの膝を突き刺さり、一同を驚かせる。
「上出来だ!プロ狩猟家」
「は、はい!!」
凄腕の未探家に褒められたリリゼは、思わず顔を赤らめ、興奮した表情で駆け出す。
ーー私にもできた。大型モンスターの狩猟に貢献できたんだ!
「良い仲間を持ったな、ラプラス」
「みたいですね…ルカナさん」
「ユリアスさん!ユリアスさん、私!」
「はい…リリゼさんのおかげで、だいぶ距離が開きました。ありがとうございます」
「ヘヘヘッ、そうでもないですよ~」
ーーにしてもこの娘、私が右膝を狙うと理解した上で右を狙ったのか?
未熟なハンターなら左右の足を狙って機動力を封じれば良いと判断するような場面で、片足だけに集約した一矢。片方が外す場合のリスクや皮膚が分厚かった場合のリスクを想定した片足に限定した集中砲火を、あの十数秒の合間に理解してやったと…。
「ヘヘヘッそうでもないですよ~」
ユリアスに感謝されたことで頬を緩ませ喜ぶリリゼのニタリ顔を横目に考察するルカナ。
ーーそんなはずもないか…。たまたま右を狙い、それが当たっただけ…だろうな。
一人の狩猟家がレイオストルンに対して大斧を振り下ろす。しかし、斧は空を切る。瞬間、鋭い五枚歯の爪が狩猟家の体を四枚に引き裂き、体中から内臓と血液を飛び散らせる。
「いやーーーー!!」
それを見たリリゼは、恐怖で足がおぼつかず、邪の森のツルに足をつまずかせ、地に伏せる。そんなか弱い少女を見下ろす白毛の獣。牙を唸らせ、涎を垂らしながら、リリゼに接近する。
『ご馳走さん…』
リリゼを前に伝わってきたレイオストルンの意思を読み取ったユリアスは、後ろのフードに隠れていた相棒に指示を出す。
「ベニ!!!!動きを止めろ!!」
ピギャァァァァァァ!!!!
『ぐっ…?!』
レイオストルンの一瞬の硬直。大型モンスターの毛嫌いする高音の周波がレイオストルンの聴覚を破壊する。そして動きが鈍ったところで、ユリアスは直立をする獣の股下にスライディングを決め、リリゼの前に滑り込む。
「?!…ユリアスさん…」
しかし、ベニが相手の動きを止められるのもゼロコンマ数秒の一瞬だけ。レイオストルンは体制を立て直し、すぐ様牙をリリゼへと向けるが、その鼻っ柱にユリアスは双剣の二撃を喰らわせる。
クォォォォオン!!!
レイオストルンは鼻を抑えながら後退する。
ベニの能力と合わせた奇襲は見事に成功し、誰もが恐れ慄く獣に一矢報いたのである。
「無事なやつは、すぐさまテントまで後退して状況を伝えてくれ!!!」
ユリアスの指示で再び走り出す一団。ユリアスもリリゼの腕を引きテントを目指す。そこにミカエルとルカナも合流する。
「やるじゃないか、ラプラス。一時はどうなるかと思ったが、」
「一瞬の時間稼ぎですよ」
「ユリアス…良かったよ本当に!お前が無事で何よりだ」
「ミカエル…。悪いな無茶ばかりして」
ミカエルは拳をユリアスの肩に当て、泣き崩れながらも安堵の表情を浮かべる。
「ホントだよ…まったく」
生きてまたこの茶番に付き合えたことにユリアスもまた安堵の表情を浮かべる。しかし、状況は良くなるわけでない。ユリアスは一瞬で表情を切り替え、状況を冷静に分析する。
「でも森の中じゃ、機動力のあるあっちに武があります!外で増援と包囲攻めにしましょう!」
「良い案だ!ん?…女、お前は弓使いか?」
ルカナはリリゼの装備を見て声をかける。
「は、はい!」
「使い切ってしまった。矢を数本分けてくれ。」
「分かりました!!」
リリゼは自分にできることがあればと、自分の矢筒から五本ほどを握りしめ、ルカナに手渡す。
「レイオストルンは二足歩行で跳躍を得意とする生物だ!こういう場合に機動力を削ぐなら前脚ではなく後ろ脚だ!分かるな?」
「は、はい!!」
ルカナとリリゼは邪の森の外に設置された仮設テントを目指しつつも、全体をより安全に逃すために、後ろを振り返り、瞬時に片足をついて体の軸を安定させる。
「距離は四十メートルほどか…いつもより二センチ上を狙うイメージだ」
「はい!」
ルカナは、リリゼの弓の腕など知らない。それでも未探家として、前線で戦う経験者として、弓使いのプロとして、的確に指示を出す。
「一番はももでもスネでもなく、膝。関節部位に当てられれば儲け物だ」
足首を曲げる動作を抑制し、跳躍を抑制させる有効部位。
ーー膝…関節部位…。
リリゼは深呼吸をし、その一点に集中力の全てを注ぎ込む。
レイオストルンが体勢を立て直すまでの十数秒。その時間内に矢を安定させて射る。目の前で多くの仲間を失い、自分の一矢でこの先の展開が大きく変わる。生半可な集中力では果たせない任務。さらに催促の掛け声。
「撃て!!!」
ーー行きます!!
スパンッ!!!
スパンッ!!!
ルカナとリリゼ。同時に放たれた二撃は、右の膝をドンピシャで貫く。
ハッ?!……
「当たった……」
リリゼの一矢はレイオストルンの膝を突き刺さり、一同を驚かせる。
「上出来だ!プロ狩猟家」
「は、はい!!」
凄腕の未探家に褒められたリリゼは、思わず顔を赤らめ、興奮した表情で駆け出す。
ーー私にもできた。大型モンスターの狩猟に貢献できたんだ!
「良い仲間を持ったな、ラプラス」
「みたいですね…ルカナさん」
「ユリアスさん!ユリアスさん、私!」
「はい…リリゼさんのおかげで、だいぶ距離が開きました。ありがとうございます」
「ヘヘヘッ、そうでもないですよ~」
ーーにしてもこの娘、私が右膝を狙うと理解した上で右を狙ったのか?
未熟なハンターなら左右の足を狙って機動力を封じれば良いと判断するような場面で、片足だけに集約した一矢。片方が外す場合のリスクや皮膚が分厚かった場合のリスクを想定した片足に限定した集中砲火を、あの十数秒の合間に理解してやったと…。
「ヘヘヘッそうでもないですよ~」
ユリアスに感謝されたことで頬を緩ませ喜ぶリリゼのニタリ顔を横目に考察するルカナ。
ーーそんなはずもないか…。たまたま右を狙い、それが当たっただけ…だろうな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる