34 / 34
act.4
しおりを挟む
ミカエルの好奇心に満ちた瞳を凝視し、ユリアスは話を聞く。
「なんだよ、大事な案件って」
「先生からの推薦状だ」
ミカエルが先生と呼ぶ人物。それはユリアスとミカエルの師匠のことであり、ユリアスをW種の研究をさせるためアトレイオへ派遣した張本人でもある。
「今度はどこの国だ?」
「聞いて驚け~、未登大陸だ!」
?!
「エクス…テラ…」
未だ誰も踏破したことのない未知の領域。
そこには金銀財宝、高価な水晶石や貴重な鉱石――それだけではない。
新種の動植物に、未だ見ぬ文化や文明の痕跡が眠っているかもしれない。
そんな夢物語のような場所が、また一つ発見されたという。
「そうだ。未探家なら誰もが夢見る場所だ。一緒に行こう!ユリアス!」
「皆さんも同行されるんですか?」
ユリアスはそこに同席していた他の未探家、ルカナやバルダンディーにも話を聞く。
「ああ。今回の件とは別にミカエルからスカウトされていた。」
ルカナは腕を組みながら淡々と答える。
「俺はあんま乗り気じゃないがな。俺の専門は異文化の研究だからな。未登大陸とは路線が違う」
バルダンディーはジョッキを軽く揺らしながら、渋い顔をする。
未登大陸は未踏の地であり、何があるのかは未知数だ。そこに文化的な価値があるかどうかも、現段階では不透明だった。
「未登大陸ってそんな凄いところなんですか?」
狩猟家であり、主にモンスターの狩猟報酬で生計を立てるリリゼたちに乗っては、あまり聞き馴染みのに単語が飛び交い、思わず尋ねてみた。
「そりゃあ、すごいなんてもんじゃないさ」
ミカエルが得意げに言う。
「そもそも未探家ってのは専門職だ。狩猟に明け暮れるやつもいないこともないが、基本的には研究が好きなオタクの集まりでね。ルカナさんは――」
「私は『幻獣ハンター』だ。この世の希少で、滅多にお目にかかれない幻獣の生態を研究している」
ルカナが短く説明する。
「で、バルダンディーはさっきも言ってた『異文化』の研究。人文学とか、そういうのだな。で、リリゼちゃんも知っての通り、ユリアスは『ポイズンハンター』だ」
ミカエルが指を一本ずつ折って説明していく。そして、最後に自分の胸をドンと叩いた。
「で、狂ったように狩猟ばかりしているアホが、この水色髪のキチガイってわけだ」
「辛辣だな~ルカナさん…はははッ」
ミカエルは笑いながら、豪快にパインソーダをあおった。
「で、どうかな~ユリアス?きっと未登大陸には、ユリアスも知らない毒性を持つ生物だってわんさか居るさ。ユリアスの研究の促進に繋がる」
「それはそうだね…。」
ユリアスはグラスを軽く揺らしながら考える。
彼はこれまでポイズンハンターとして、あらゆる毒性を研究してきた。それは、かつて彼自身が《天の王》と呼ばれるモンスターの毒を受けたことに端を発している。
単純な解毒方法を探し続け、それが見つからなければ、せめて毒の進行を抑える手段を――そうして彼は「マルチポイズン」という薬品を生み出した。それでも、天の王の呪いに完全に抗う術には至っていない。
だが、未登大陸――誰も知らない新たな世界には、もしかすれば完治へと繋がる突破口があるかもしれない。
未登とは、すなわち可能性の塊だ。
ユリアスはグラスの中の琥珀色の液体を見つめながら、静かに思案を巡らせていた。
「嬉しい話だけど……今回は遠慮しておくよ」
「なッ?! 正気か? こんなチャンス滅多にないんだぞ?」
ミカエルが驚愕の表情を浮かべる。未登大陸への推薦状は、未探家にとってこれ以上ないほどの名誉であり、貴重な機会だ。それをユリアスが断るなど、到底信じられない。
「行きたいよ。心の底からそう思う」
「それなら!」
「でももう、俺は一人じゃないんだ。。」
ユリアスは静かに言葉を続ける。
「自分のエゴで、一人の人生を狂わせてしまった。その罪を償わなくてはならない」
その言葉に、場が一瞬静まり返る。
「それって……」
リリゼはユリアスを見つめながら、そっと口を開く。
「私の事ですか?ユリアスさん」
彼女の問いかけに、ユリアスは目を伏せる。
リリゼはもともと普通の狩猟家だった。だが、ユリアスと関わったことで、未探家の世界に足を踏み入れ、W種と呼ばれる危険なモンスターとの戦いに巻き込まれ、その果てに彼女は死の淵を彷徨うことになった。
ユリアスは、自分がリリゼを巻き込んでしまったことを深く悔いていた。もし、自分と関わらなければ、彼女は今も普通の狩猟家として、平穏な日々を送っていたかもしれない。
未登大陸は魅力的な挑戦だった。しかし、彼はもう、自分の好奇心だけで動くわけにはいかない。
リリゼはユリアスの言葉の真意を理解しながらも、何か言いたげに唇を噛んでいた。
「君は、マルチポイズンがなければ、呪いに侵され死んでしまう。それどころか……あの時、死んでおけばと悔いるほどの苦痛が待っているんだ」
ユリアスは静かに、しかし確かな意志を込めて言葉を発した。
天の王の呪い。それは、ただの毒ではない。体を内側から蝕み、絶え間ない痛みを与え続ける。マルチポイズンという薬で症状を抑えられるとはいえ、完治する保証はない。
そして、その呪いを負わせたのは――自分自身だった。
「もう何度も聞きました」
リリゼはため息混じりに返す。
「ですから……」
「私のせいで、ユリアスさんの選択肢が狭まるのは違います!」
その言葉に、ユリアスは息を呑んだ。
「違くないです!」
彼の声が強く響く。
「君を生かしたことは、僕の大罪です。君がこれから先、天の王の呪いを背負いながら、それでも苦しまずに生きていけるよう尽くすのが、僕の犯してしまった罪への償いなんです……」
リリゼはじっとユリアスを見つめていた。その目には怒りでも悲しみでもなく、ただ真っ直ぐな意志が宿っていた。
「勝手に決めないでください」
彼女は、まるで呆れたように微笑んだ。
「私は私の道を、ユリアスさんはユリアスさんの道を、自由に進んでください」
「……リリゼさん……」
「それでも私のこのちっぽけな命に対して価値を見出してくれるのなら、私も覚悟を決めます!」
「え?」
「私が未登大陸に行きます!!!」
宣言するように声を上げるリリゼに、ユリアスは呆然とする。
「ので、ユリアスは助手としてついてきてください!!!」
「……は?」
思わぬ展開に、ユリアスは完全に固まった。
「リリゼさんが、未登大陸に?!」
ユリアスは驚きのあまり、思わず聞き返した。
未登大陸。それは、未だ誰も踏破したことのない未知の領域だ。どんな生物がいるのか、どんな環境なのか、何一つはっきりとは分かっていない。そんな場所に、リリゼが行くと言うのか?
「そうすれば全て解決するんですよね?」
リリゼは真っ直ぐにユリアスを見つめる。
「ユリアスさんも行きたい!毒の研究もできる!私の隣で。何も間違ってません!」
彼女の言葉は力強く、揺るぎないものだった。
「大間違いです」
ユリアスはすぐさま否定する。
「リリゼさんは未登大陸の危険性を何も理解していません」
未知の環境には、未知の脅威が潜んでいる。毒どころか、一撃で命を奪うような捕食者がいても不思議ではない。病気、食料問題、予測不能の天候――危険は枚挙にいとまがない。
だが、リリゼは気負いなく言い返した。
「危険なことなんて、これまでも死ぬほど経験してきました」
彼女は指を折りながら、これまでの戦いを挙げていく。
「テデナリアも、ショートウルフも、カルガモンも、マントライキも、レイオストルンも――でもこうして生きてます!」
彼女は拳を握りしめ、堂々と胸を張る。
「大丈夫です、私!」
ユリアスは絶句した。
たしかにリリゼは、数々の死線をくぐり抜けてきた。だが、それと未登大陸が同じとは限らない。
果たして、彼女の覚悟は本物なのか――?
「花嫁にここまで言わせておいて、当人は怖気づいているわけじゃないだろうな?」
不意にかけられた言葉に、ユリアスは思わず息をのむ。
ルカナはにやりと笑いながら、ユリアスの肩に腕を回し、生ジョッキをぐいっと押しつけた。
「ほら、飲め飲め」
「花ッ……茶化さないでください」
ユリアスは慌ててジョッキを押し返すが、ルカナは意に介さず、楽しげに喉を鳴らして飲み干す。
「茶化しちゃいないさ。事実だろ?」
ルカナは酒の勢いも手伝ってか、ずいっと顔を寄せてくる。
「ここまで真っ直ぐにぶつかってくる相手、そうそういないぞ? それとも何か? 未登大陸より、隣にいるお嬢さんの覚悟のほうが怖いってか?」
「そ、そんなことは……」
「なら決まりだな!」
ルカナはドンとユリアスの背中を叩くと、ジョッキを高く掲げた。
「おい、皆! 乾杯だ!」
「おー!」
フィリップやバルダンディー、ミカエルまでもが笑いながら杯を掲げる。
ユリアスは深いため息をつき、ジョッキを手に取った。
「……ったく、あんたらは」
静かに呟き、苦笑しながら酒を口にする。
まだ迷いはある。それでも――少しだけ、未登大陸への道が開けた気がした。
「で、リリゼは未探家資格持ってるのか?」
「へ?!……」
リリゼは思わず小首を傾げる。頭の上には、目に見えるほどのハテナが浮かんでいた。
「持ってませんよ?」
「じゃあ無理じゃないか」
「……え?」
ルカナのあまりにもあっさりとした言葉に、場の空気が一瞬固まる。
え……無理……?
そんな単純な理由で覚悟がこんなにもあっさり否定されるなんて…
「ええええええええええ?!??!?!」
リリゼの絶叫が、酒場の天井を突き抜けた。
リリゼ=ストレイナ、未登大陸断念の巻。
「なんだよ、大事な案件って」
「先生からの推薦状だ」
ミカエルが先生と呼ぶ人物。それはユリアスとミカエルの師匠のことであり、ユリアスをW種の研究をさせるためアトレイオへ派遣した張本人でもある。
「今度はどこの国だ?」
「聞いて驚け~、未登大陸だ!」
?!
「エクス…テラ…」
未だ誰も踏破したことのない未知の領域。
そこには金銀財宝、高価な水晶石や貴重な鉱石――それだけではない。
新種の動植物に、未だ見ぬ文化や文明の痕跡が眠っているかもしれない。
そんな夢物語のような場所が、また一つ発見されたという。
「そうだ。未探家なら誰もが夢見る場所だ。一緒に行こう!ユリアス!」
「皆さんも同行されるんですか?」
ユリアスはそこに同席していた他の未探家、ルカナやバルダンディーにも話を聞く。
「ああ。今回の件とは別にミカエルからスカウトされていた。」
ルカナは腕を組みながら淡々と答える。
「俺はあんま乗り気じゃないがな。俺の専門は異文化の研究だからな。未登大陸とは路線が違う」
バルダンディーはジョッキを軽く揺らしながら、渋い顔をする。
未登大陸は未踏の地であり、何があるのかは未知数だ。そこに文化的な価値があるかどうかも、現段階では不透明だった。
「未登大陸ってそんな凄いところなんですか?」
狩猟家であり、主にモンスターの狩猟報酬で生計を立てるリリゼたちに乗っては、あまり聞き馴染みのに単語が飛び交い、思わず尋ねてみた。
「そりゃあ、すごいなんてもんじゃないさ」
ミカエルが得意げに言う。
「そもそも未探家ってのは専門職だ。狩猟に明け暮れるやつもいないこともないが、基本的には研究が好きなオタクの集まりでね。ルカナさんは――」
「私は『幻獣ハンター』だ。この世の希少で、滅多にお目にかかれない幻獣の生態を研究している」
ルカナが短く説明する。
「で、バルダンディーはさっきも言ってた『異文化』の研究。人文学とか、そういうのだな。で、リリゼちゃんも知っての通り、ユリアスは『ポイズンハンター』だ」
ミカエルが指を一本ずつ折って説明していく。そして、最後に自分の胸をドンと叩いた。
「で、狂ったように狩猟ばかりしているアホが、この水色髪のキチガイってわけだ」
「辛辣だな~ルカナさん…はははッ」
ミカエルは笑いながら、豪快にパインソーダをあおった。
「で、どうかな~ユリアス?きっと未登大陸には、ユリアスも知らない毒性を持つ生物だってわんさか居るさ。ユリアスの研究の促進に繋がる」
「それはそうだね…。」
ユリアスはグラスを軽く揺らしながら考える。
彼はこれまでポイズンハンターとして、あらゆる毒性を研究してきた。それは、かつて彼自身が《天の王》と呼ばれるモンスターの毒を受けたことに端を発している。
単純な解毒方法を探し続け、それが見つからなければ、せめて毒の進行を抑える手段を――そうして彼は「マルチポイズン」という薬品を生み出した。それでも、天の王の呪いに完全に抗う術には至っていない。
だが、未登大陸――誰も知らない新たな世界には、もしかすれば完治へと繋がる突破口があるかもしれない。
未登とは、すなわち可能性の塊だ。
ユリアスはグラスの中の琥珀色の液体を見つめながら、静かに思案を巡らせていた。
「嬉しい話だけど……今回は遠慮しておくよ」
「なッ?! 正気か? こんなチャンス滅多にないんだぞ?」
ミカエルが驚愕の表情を浮かべる。未登大陸への推薦状は、未探家にとってこれ以上ないほどの名誉であり、貴重な機会だ。それをユリアスが断るなど、到底信じられない。
「行きたいよ。心の底からそう思う」
「それなら!」
「でももう、俺は一人じゃないんだ。。」
ユリアスは静かに言葉を続ける。
「自分のエゴで、一人の人生を狂わせてしまった。その罪を償わなくてはならない」
その言葉に、場が一瞬静まり返る。
「それって……」
リリゼはユリアスを見つめながら、そっと口を開く。
「私の事ですか?ユリアスさん」
彼女の問いかけに、ユリアスは目を伏せる。
リリゼはもともと普通の狩猟家だった。だが、ユリアスと関わったことで、未探家の世界に足を踏み入れ、W種と呼ばれる危険なモンスターとの戦いに巻き込まれ、その果てに彼女は死の淵を彷徨うことになった。
ユリアスは、自分がリリゼを巻き込んでしまったことを深く悔いていた。もし、自分と関わらなければ、彼女は今も普通の狩猟家として、平穏な日々を送っていたかもしれない。
未登大陸は魅力的な挑戦だった。しかし、彼はもう、自分の好奇心だけで動くわけにはいかない。
リリゼはユリアスの言葉の真意を理解しながらも、何か言いたげに唇を噛んでいた。
「君は、マルチポイズンがなければ、呪いに侵され死んでしまう。それどころか……あの時、死んでおけばと悔いるほどの苦痛が待っているんだ」
ユリアスは静かに、しかし確かな意志を込めて言葉を発した。
天の王の呪い。それは、ただの毒ではない。体を内側から蝕み、絶え間ない痛みを与え続ける。マルチポイズンという薬で症状を抑えられるとはいえ、完治する保証はない。
そして、その呪いを負わせたのは――自分自身だった。
「もう何度も聞きました」
リリゼはため息混じりに返す。
「ですから……」
「私のせいで、ユリアスさんの選択肢が狭まるのは違います!」
その言葉に、ユリアスは息を呑んだ。
「違くないです!」
彼の声が強く響く。
「君を生かしたことは、僕の大罪です。君がこれから先、天の王の呪いを背負いながら、それでも苦しまずに生きていけるよう尽くすのが、僕の犯してしまった罪への償いなんです……」
リリゼはじっとユリアスを見つめていた。その目には怒りでも悲しみでもなく、ただ真っ直ぐな意志が宿っていた。
「勝手に決めないでください」
彼女は、まるで呆れたように微笑んだ。
「私は私の道を、ユリアスさんはユリアスさんの道を、自由に進んでください」
「……リリゼさん……」
「それでも私のこのちっぽけな命に対して価値を見出してくれるのなら、私も覚悟を決めます!」
「え?」
「私が未登大陸に行きます!!!」
宣言するように声を上げるリリゼに、ユリアスは呆然とする。
「ので、ユリアスは助手としてついてきてください!!!」
「……は?」
思わぬ展開に、ユリアスは完全に固まった。
「リリゼさんが、未登大陸に?!」
ユリアスは驚きのあまり、思わず聞き返した。
未登大陸。それは、未だ誰も踏破したことのない未知の領域だ。どんな生物がいるのか、どんな環境なのか、何一つはっきりとは分かっていない。そんな場所に、リリゼが行くと言うのか?
「そうすれば全て解決するんですよね?」
リリゼは真っ直ぐにユリアスを見つめる。
「ユリアスさんも行きたい!毒の研究もできる!私の隣で。何も間違ってません!」
彼女の言葉は力強く、揺るぎないものだった。
「大間違いです」
ユリアスはすぐさま否定する。
「リリゼさんは未登大陸の危険性を何も理解していません」
未知の環境には、未知の脅威が潜んでいる。毒どころか、一撃で命を奪うような捕食者がいても不思議ではない。病気、食料問題、予測不能の天候――危険は枚挙にいとまがない。
だが、リリゼは気負いなく言い返した。
「危険なことなんて、これまでも死ぬほど経験してきました」
彼女は指を折りながら、これまでの戦いを挙げていく。
「テデナリアも、ショートウルフも、カルガモンも、マントライキも、レイオストルンも――でもこうして生きてます!」
彼女は拳を握りしめ、堂々と胸を張る。
「大丈夫です、私!」
ユリアスは絶句した。
たしかにリリゼは、数々の死線をくぐり抜けてきた。だが、それと未登大陸が同じとは限らない。
果たして、彼女の覚悟は本物なのか――?
「花嫁にここまで言わせておいて、当人は怖気づいているわけじゃないだろうな?」
不意にかけられた言葉に、ユリアスは思わず息をのむ。
ルカナはにやりと笑いながら、ユリアスの肩に腕を回し、生ジョッキをぐいっと押しつけた。
「ほら、飲め飲め」
「花ッ……茶化さないでください」
ユリアスは慌ててジョッキを押し返すが、ルカナは意に介さず、楽しげに喉を鳴らして飲み干す。
「茶化しちゃいないさ。事実だろ?」
ルカナは酒の勢いも手伝ってか、ずいっと顔を寄せてくる。
「ここまで真っ直ぐにぶつかってくる相手、そうそういないぞ? それとも何か? 未登大陸より、隣にいるお嬢さんの覚悟のほうが怖いってか?」
「そ、そんなことは……」
「なら決まりだな!」
ルカナはドンとユリアスの背中を叩くと、ジョッキを高く掲げた。
「おい、皆! 乾杯だ!」
「おー!」
フィリップやバルダンディー、ミカエルまでもが笑いながら杯を掲げる。
ユリアスは深いため息をつき、ジョッキを手に取った。
「……ったく、あんたらは」
静かに呟き、苦笑しながら酒を口にする。
まだ迷いはある。それでも――少しだけ、未登大陸への道が開けた気がした。
「で、リリゼは未探家資格持ってるのか?」
「へ?!……」
リリゼは思わず小首を傾げる。頭の上には、目に見えるほどのハテナが浮かんでいた。
「持ってませんよ?」
「じゃあ無理じゃないか」
「……え?」
ルカナのあまりにもあっさりとした言葉に、場の空気が一瞬固まる。
え……無理……?
そんな単純な理由で覚悟がこんなにもあっさり否定されるなんて…
「ええええええええええ?!??!?!」
リリゼの絶叫が、酒場の天井を突き抜けた。
リリゼ=ストレイナ、未登大陸断念の巻。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる